第173話「ここまで万全を期すのは、ルーキーの俺とフェルナンさんが居るからだ」

どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!

どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!

どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!


ローラン様の指示とともに、大量の風弾が、オーガどもへ向け、放たれた。


オーガどもは、防護壁から、約800m離れた位置に居る。


何度も何度も攻撃を受け、奴らも学習した。

ここまで離れれば、守備隊の攻撃魔法の射程外。

絶対に届かない事を。


だが甘い。

砂糖よりも凄く甘い。


俺たちグランシャリオの攻撃魔法は、1㎞先の標的にもほぼ正確に、

命中させる事が可能なのだ。


オーガの群れの中へ、どかん、どかんと、放たれた風弾が次々と着弾。


重い大気の塊に身体を貫かれ、ばったんと倒れるオーガども。

結構距離があるから、悲鳴をあげるのは聞こえないが、

オーガどもが慌てふためいているのが、見て取れる。

勘働きスキルでも、驚き、怯えの波動が伝わって来た。


オーガどもが大混乱に陥るのを確かめてから、

ローラン様より「GO!」が出た。


同士打ちを避ける為、風弾を撃つのは一旦、中断。


ローラン様、バスチアンさん、フェルナンさん、俺は、

魔導昇降機へ乗り込み、下降を始める。


「ローラン様! バスチアンさん! フェルナンさん! エル君! 気を付けてええ!!」


というシャルロットの叫ぶ声が追いかけて来た。


俺は、ぱっと手を挙げ、シャルロットへ「任せろ」と応えた。


降下する魔導昇降機内では、ローラン様から指示が出る。


「エルヴェ、着地点の安全確保と、オーガどもへの牽制の為、お前の従士を召喚してくれないか」


「了解です。ケルベロス、グリフォンを召喚します」


「うむ、2体召喚か、助かる!」


「はい! 問題ありません! 着地点へケルベロス、上空へグリフォン、計2体を召喚します」


俺はそう言うと、心の中でケルベロス、グリフォンを思い浮かべ、

召喚!と念じた。


すると、召喚魔法は、即座に発動。


ぐおおおお!!!


きええええ!!!


独特の咆哮が轟き、着地点にはケルベロス、俺たちが降下を続ける上空には、

グリフォンが現れた。


それを見たバスチアンさん、ふっ、と笑う。


「おいおい! やるじゃね~か、新人1号! さすがだぜ!」


フェルナンさん、無言でうんうんと頷いている。


ローラン様も満足そうに頷き、


「うむ、本当に見事な手並みだぞ、エルヴェ」


……そうこうしているうちに、魔導昇降機は着地点へ。


乗り込んだ逆の順、俺、フェルナンさん、バスチアンさん、

最後にローラン様の順番で地上に降り立った。


その様子を見て、降下地点に現れていたケルベロスが「うおん!」とひと吠え。


同時に念話で『あるじ、何なりと!』と告げて来た。


きええええ!!!


と、頭上高く飛ぶグリフォンも、思念で同じ意向を伝えて来る。


これで準備OK!

戦闘態勢スタンバイだ。


後は、ローラン様の指示を待つのみ。


ここでローラン様、指間を閉じた手を思い切り突き挙げた。


一旦、撃ち方やめ!をしていた風弾を、撃ち方始め!にするサインだ。


すると、


どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!

どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!

どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!どしゅ!


ローラン様の指示とともに、大量の風弾が、

再びオーガどもへ向け、放たれたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


高さ20mの防護壁から眺めるより、様子はあまり分からないが……


風弾を撃ち込まれているオーガどもが、更に混乱しているのは分かる。

やはりというか、勘働きスキルでも、驚き、怯えの波動が伝わって来た。


その気配をローラン様、バスチアンさん、両名とも感じたらしい。


今度はローラン様、指間を開いた手をぱっと挙、左右に打ち振る。


これは、撃ち方やめ!の合図だ。


しばしの間を置き、放たれていた風弾がやんだ。


さあ! 突撃だ!


相手は強敵のオーガとはいえ、完全に浮足立っている。


油断さえしなければ、いけるはずだ。


「エルヴェ! ケルベロスとグリフォンを先行させろ! オーガどもを地と空から更に攪乱かくらんするんだ!」


成る程。

大混乱のオーガどもに、ケルベロスとグリフォンを接近させたら、

完全に逃げ腰となる。


ここまで万全を期すのは、ルーキーの俺とフェルナンさんが居るからだ。


「私、バスチアン、エルヴェ、フェルナンは突撃の上、各個撃破! 囲まれないよう注意し、少しでも負傷したら、すぐ魔導昇降機まで退避!」


ローラン様はてきぱきと指示を出す。


そして、ケルベロスとグリフォンが接近、

大混乱どころか、逃げ惑い始めたオーガどもをじっと見つめ、


「突撃!!!」


と、大きな声で、号令をかけたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る