奇跡の日々が続いていく季節3

 結局は、泣いたのもあって白夜は疲れに抗えず眠りに落ちていった。

その間に、別室で浜野ともう1人別の医師を加えて、いつも忙しさから、来てもすぐ帰る美羽を「大事な話しがあるから!」と、やや強引に捕まえて少し長い話しをした。

浜野が信頼を寄せる、その天堂てんどう医師は専門が精神科の女医だ。

そして、元能力者というわけではないが、能力者の事を熟知して、支えている一族の出だとか。

そういえば、昔からそんな存在があったな。

代表的なのは桜家の影武者的な霧桜家。

あの一族は能力者がいても未満力やC能力程度で、能力がない者も多く存在している。

表向きには、ただの親戚と、あの人が言っていたっけ。

膝丈の短めなスカートに、明るい茶髪のポニーテールで、若めな印象だけれど、話しの内容は浜野と合うようで、見た目だけでは年齢不詳な天堂は、歳上なのか歳下なのか…?

だからと言って女性にわざわざ年齢を聞くのは失礼だし、黙っているのが1番だろう。

それにしても、少し白夜の様子を相談しただけで、すぐ専門医を呼べる浜野は本当に凄い。他の医師では絶対に真似なんかできない。


 話しが終わってすぐに、天堂が白夜と話しをするからと、先に部屋を出て、続くように浜野も出て行った。


「……美羽さん……あの……」


自分だけでは力になれなかった事を謝ろうとすると、美羽は察して


「私には絶対に弱音吐いてこないもの。一生本音を知らないままだったかもしれないわ。ヤマさんが居てくれて本当にありがたいわ。」


そう言ってくれた。

そして


「白夜のこと最期までよろしくお願いします。」


と、続けた。

静かに首を横に振る。

まだまだ、その時は来ないんだ、来るべきじゃないんだと、自分自身に言い聞かせて納得するしかなかった。


「……学園祭までに頑張って、少しでもまた学校に行けるようにしてあげましょう?」


「……そうね。ごめんなさい。」


謝らないといけないのは、こっちの方なのに。


美羽は「時間だから。」と、逃げるように部屋を急ぎ足で去って行ってしまった。


それだけではなさそうだ。

美羽も諦めたくない想いと現実に挟まれて苦しいのだろう。自分の気持ちのように手に取るようにわかる。


取り残されて、ため息が出る。


いや、また、ここで諦めてしまっていいわけがない。

あんな自分の為にならない能力に、黙って負けて終わりなんて許せるはずがない。


確かに避けられない事だろう。


だけど延ばすことは、きっと、まだまだできる。


今までも、今だって、そうやって、抗ってここにいるんだから。


せっかく、あの舞台を降りて、この舞台を選んでここにいるのだから。



邪魔になるかもしれないと思いつつも、足は勝手に白夜の病室に向かっていた。







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