暑い熱い舞台の上の季節13
朝になって、早速、
仕方なく本人のスマートフォンに、メッセージを送ってみたが、やっぱり思った通り返事はなかった。
ここで、溜息を吐いて暗くなっていたら、せっかく楽しんでいる大翔に申し訳ないし、そっと心の奥に隠して、今は浜野の言う通り黙って休むことに専念した。
それに、今日は大翔とあの場所に行く約束もしているんだ。
叔母に、お礼とともに「また来るから。元気で。」と、告げて、「そっちも元気でね。またね。」と、笑顔に見送られ、タクシーで駅まで行って、すぐに駆け足で電車に乗って揺られる。
ひとつ乗り遅れたら1時間以上も待たされるのは田舎のあるあるだから乗り遅れのないようにと余裕を持って行動した。
でも、時間帯に関係なく満員電車になることがほとんどないので、だいたいは座って乗れるのは利点だろう。
「父さん、なんかいい事あった?」
急にそんな風に聞かれて、顔がニヤニヤしていないか心配になった。
すぐ顔に出ると言われた事があったからだ。
「大翔とずっと一緒にいれるからかな。」
「本当に?」
「本当に、本当に。」
大翔には白夜の話しは特にしていない。
でも勘がいいから察してはいるようだけど。
あの時確かに縁はできたけれど、うたの能力者のあれこれに大翔は巻き込むわけにいかないし、巻き込みたくないんだ。
普段住んでいる所に比べたら、建物は全然少ないけれど、山奥よりはちょっとだけ街らしい並びが見えたところで電車を降りる。
ここから複雑な道をバスに乗ったり歩いたり、時々迷って何度か引き返したりもした。
たった1度しか来ていない場所に地図アプリだけを頼りにして尋ねるのは、なかなか難易度が高かった。
ゲームみたいで面白いといえば、面白いが、体力オバケとあちこちから言われた自分とは違い大翔が大変そうだ。
約束していた、知人の1人で今は音楽プロデューサーをしている
自分よりも5つ歳上で、大学生の頃にバイトでうたっていた自分を全くの素人だと思って声をかけて来たのがきっかけだった。
元々は父親のスタジオだったが、今は引き継いでいる。
入り口で出迎えてくれた、彼は、若い頃からちっとも変わっていない。
昔から上から下までスタイルのいい所謂イケメンで女の子が黙っていない存在だったな。
今は強いて言うなら、それに少し貫禄が出たくらいだろうか?
外観はヨーロッパ調の大きな洋館で、内観もそれに合わせて家具なんかが置かれている。
地下のスタジオスペースには楽器がたくさんあって、機材も揃っていて、大翔は目を輝かせてあっちこっちをキョロキョロ見ていた。
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