暑い熱い舞台の上の季節9
何が生かされている意味だ!?
何が大事な仕事だ!?
口から溢れそうな言葉を呑み込む。
とにかく、今は、医師として必要な処置を優先しなければ、手遅れになってしまったら…
それだけは…それだけは。
「美羽さん、人を呼んで下さい。まずは部屋に連れて行きます。それと今回は意地でも病院に連れて行きます。」
「…そうね、わかったわ。」
流石の美羽でも今の状態の白夜には困惑しているのか珍しく素直に従ってくれた。
なんとか力を借りて部屋のベッドまで運んだ。
手を貸してくれた屋敷の人たち、それに美羽にも、お礼をして、しっかり車の手配を頼んでから、診察をするからと、白夜と2人だけにしてもらった。
視診だけで辛くなる。
こんな状態になるまで…
力だけが生きている理由なんかじゃないのに。
立ち止まっていてはいけない。
どうして、ステージを降りて医療従事者の道に進んだのかを思い出せ!
自分自身に何度も何度も言い聞かせる。
声をかけながら、いつも通りの診察を始め、血が滲んでいた素人が巻いた包帯を綺麗に処置して、反対側の腕で新しい点滴を再開する。
なにより呼吸の状態が悪過ぎるし、電子カルテを何度睨んだって、ヒーラーのような魔法が使えるわけでもない。
悔しくて悔しくて、悔しい。
「……ヤ…マさ…ん…」
力を振り絞った声で呼ばれて自然と白夜へと目線を移す。
「……白夜くん、元気になって朔ちゃんとステージに立とう!そして、また2学期には学校に行くんだよ。だから、今は……」
こくりと小さく頷いてくれたように見えた。
だけど、病院へ着いてからは深い深い眠りの中へと落ちて、ついには昏睡状態となってしまった。
身体は確実に限界を超えていた。
何度も自分を責める美羽を宥めたり、訪ねて来て、しつこく会いたいと粘る朔を、根負けしそうになりながらも、なんとか追い返したり、静かにやって来て、会えないと知って、持参した本を自分の所に預けて行く大希に「起きたらすぐ渡すね。」と告げたりした。
確証もないのに、だけど信じたいんだ。
明日からは数日間のお盆休みで、終われば、すぐにステージに立つ日がついにやって来る。
今更、日程は変えられないと言っていたけれど、どう考えても無理だろう。
朔は絶対に白夜とステージに立つんだと、何度も何度も言って、変わらず練習を続けているようだ。
僕だって、諦めたくない。
諦めたくはないけれど……
「白夜くん、今日も朔ちゃん来ていたよ。」
返事がない一方的な会話をしながら、診察をする日々が続いて虚しくなる。
また、笑ってほしい。
能力を奪って消してしまうことができるならすぐにでもそうしたかった。
「ねぇ、ヤマさん。」
美羽は、相変わらず忙しいはずなのに、あれから毎日ここに来てくれる。
さっき診察の結果を伝えたのだが、聞いても無駄だというような返答だったな…。
「美羽さん、どうしました?あ、ダメですよ、お仕事は…。引き続き家族以外、面会謝絶です。もう1人のS能力者の子とは違って、白夜くんは、目を覚ます可能性がまだまだありますから!」
半分くらい願望かもしれないけれど…
諦めてはいない。
「……何回も聞いてるんだから、わかってるわよ。私だって、そんな事したくない。それに、白夜は、もう十分過ぎるくらい人の為に働いたもの。」
美羽は、こちらに何かを差し出して、早く受け取れと言わんばかりに、どんどんそれをこちらの顔に近付けてくる。
慌てて受け取って目をやると…
「……CDですか?」
「CDだけど!」
「……柊
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