暑い熱い舞台の上の季節5
悩んだものの、なにより親友が…いや、好きな人がそばに来てくれるのは心強いだろう。
美羽や家政婦さんに、どんな顔をされるかは、行ってみないとわからないが、他の能力者よりも親しみのある美羽だから、もしかしたら、も、あるかもしれない。
病院の売店で、朔に好きなお昼ご飯を買ってあげて、噴水のある中庭がよく見える売店横の飲食スペースでお昼を共にした。
朔は体の大きさに対して、かなり小食でビックリした。もしかしたら、遠慮していたのかもしれないけれど…。
夏野菜のサラダとおにぎり1個で「お腹いっぱいになりました、ご馳走様でした。」と、いつも通り礼儀正しく食事を終えていた。
大翔の作ってくれたおにぎりに興味があったようで「さくちゃんもお料理してみたいです。」と、何度も言っていたのが印象的だった。
やっぱり朔は、どこから、どう見たって女の子だよなぁ…。
「さくちゃん、最後に、具合は本当に大丈夫なの?」
「……あんなの、日常茶飯なので、気にしないで下さい。」
「いやいや、気になるよ!?」
プイッと顔を背けて、それ以上は何を聞いても誤魔化されて、結局は、なにも聞き出せなかった。
かつての親友と同じ苦しみを背負っているのなら、そんな苦しみを1人で抱えないでほしいのに…。どうして、高能力者の一族は、そうも秘密を持ちたがるのか…。
打ち明けて少しでも、楽になるなら、そうしてほしいのに。できないのは、やはり、この能力が、秘密のものだからなのか?
夕方になって、柊の家に向かっている車の後部座席で、朔はずっと優しいうたを口ずさんでいた。運転しながら、それを聞いて、これから、どうやって言い訳をして、朔を家の中に入れてもらうか考えるのを、忘れてしまうくらいに、とても心地よかった。
玄関でまさかの美羽本人と鉢合わせて、思い出し慌てて、とりあえず前に立って、朔を隠そうとしたが、そもそも自分よりも大きい朔を隠せるわけがなかった。
「こんばんは、美羽さん。」
堂々と前に出て挨拶をする朔に、美羽はニコっと含みのある笑みを返す。
「こんばんは、ヤマさんに、さくちゃん。」
「美羽さん、こんばんは…あの、これは…」
いつものことだが、咄嗟に言葉は出てこない。
「わかっているわよ、白夜の為よね。でもね、本来は……。仕方ない、特別よ。
「はい、美羽さん、とってもありがとうございます!!」
自分からも「ありがとうございます。」と、美羽に言って中へ進む。
白夜の父であり、美羽の夫でもある、柊湊は、業界から消えて生死不明とされているが、美羽のさっきの話しぶりから、どこかで生きているのだろうか?
舞台の上で生き生きと輝いている姿を、過去に見たことがある。
あの人の舞台は、引き込まれて現実を、その瞬間、忘れるようなものだったから、強く印象に残っているんだ。
「白夜、入るわよ?」
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