焦がすほどの陽光が眩しい季節15
部屋に戻る頃には、涙は吹っ飛んでいた。
吹っ飛ばないといけない状況だったが、正解ではあるけれど。
人前で泣くなんて、何十年ぶりだろう…
親友を亡くした、あの日以来だったかもしれない。
…かなり恥ずかしかった。
美羽にどう思われたか…
自分自身の過ちに酷く後悔している。
確かに白夜は、数十分は楽しく過ごせたかもしれない。だけど、いっときの楽しさを求めて命を危険に晒すのはやっぱり違う。
どうして、そんな簡単な事に気付かなかったんだろうか。
自分が絶対に止めなければいけない立場だったのに。
大丈夫だと、何度も何度も本人は言ってはいたけれど…
抱き上げてすぐに頻脈に気付いたし、明らかに酸欠の症状があったから、ここは専属看護師というか医者として、診察、適切な処置を経て、ベッドでの安静を命じて、すぐに叱りたかっただろう美羽と、かなり心配そうで不安な顔していた朔と大希、なにか手伝うと言ってくれた家政婦さんたちでさえも断固として部屋に入れなかった。
「……あの、ヤマさん…。」
「まだ苦しいよね、喋らないで。」
こんなのまるで、八つ当たりじゃないか。
自分の判断でこうなったようなものなのに、最低だ。
毛布を掛け直しているとそれを引っ張って、もぞもぞと潜ってしまった。
顔を見たくなければ、それでもいい。
ふらふらとベッドの横の椅子に腰掛けると、ズボンのポケットに入れていたプライベート用のスマートフォンがブルブル震える。
普段ほとんど鳴る事がないから、持ったままにしていたのに、こんな時に…
こっそりメッセージを覗くと、送信元はすぐそばにいる白夜だった。
(ヤマさん、ありがとう。ごめんなさい。)
そのあとには、朔と大希は悪くない、全部自分自身が招いた事なんだ。という文が続いていた。なんとも白夜らしい。
言葉で話しかけたら早いのだろうけど…
話すのはどうやっても苦手だし
ここはあえて、こちらも想いを文にした。
(能力者としてではなく、白夜くんとして
とても大切で、失いたくない存在なんだ。
前もそんな事を言ったよね?
だからこそ、何かしたい事があったら
頼ってほしい、頼りないのかもしれないけれど、絶対力になってあげたい
これから先もずっとずっと。)
頭の中から捻り出した文書だったのに
(海も空もとても綺麗だった。)
と、さっき撮ったであろう綺麗な青色の写真が添付された返信が来て、思わず苦笑いしてしまった。
眩しい陽光はさらに激しく燃えて
やがて、暑い熱い季節が訪れる。
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