焦がすほどの陽光が眩しい季節11
御馳走を囲みながら、みんなとあれこれ話しを交えて綺麗な花火を大きな窓から眺める楽しいひと時。
家政婦さんたちも美羽の計らいで、これに混じって楽しんでいる。
朔も、もちろんだけど、みんなに大翔の事を、なんとか言葉を繋いで話した。
というか、大翔が自分から話して、合いの手を入れていたようなものだ。
ついでに大翔の弟の
途中で星夜が起きると一層賑やかになった。
大翔も白夜も、朔も大希も、みんなみんな楽しそうで、ただ純粋に今を同じように生きている。
こんな風だったら。
親友ともこんな風に過ごせたら…
彼も、もっともっと幸せだったのかな。
「ヤマさん、バルコニーに出たい!」
もうすぐ花火大会も終わりという頃に、とんでもない頼み事をされてしまった。
このまま、何事もなく終わるなんて、そんなわけなかったか。
「…いや、でも……」
バルコニーに行くには歩いて足で乗り越えるなら2段しかないが、車椅子のままではちょっと出れそうにないし。
それに、夜の海風は寒いだろうし、花火の音もまともに響いたら、さすがに身体に障りそうな…
深く考え込み過ぎなのだろうか…
後のことより、今を?
「さくちゃんからもお願いします。最後だけは外で見たいですっ、ねっ!」
今しかないのかもしれないんだ。
「……仕方ないなぁ、じゃあ、みんな手を貸してね。」
「ありがとう、ヤマさん!」
「ちょっとでも異変を感じたら、必ず言うんだよ、約束だよ?」
「うん!」
どうにかこうにか、バルコニーに出ると、目の前で花火が上がる。
流石に大きな音にビックリしたようで、朔が、さりげなく背中を撫でていた。
あれくらいなら、と、気付かないふりをすることにした。
フィナーレに連続で打ち上げられた花火は、これから始まる、暑い熱い夏を知らせるような情熱的なものだった。
終わって部屋に戻ると、やっぱり無理があったのか咳が出る。
止まらないほど出るわけではないが、辛そうなのは変わらない。
藤崎に白湯を貰って薬を与え、すぐにベッドルームに連れて行こうと思ったのだが、本人が「ここに居たい。」と、必死だったからソファーで横になって休んでもらった。
美羽はそんな様子の白夜にもお構いなしに突進していきそうな星夜を、ひょいっと捕まえて抱っこしたまま「ヤマさん任せるわ、ごめんなさい。」と、言い残して部屋を出て行った。それが美羽なりの白夜への優しさであることは知っているし、別に構わない。
薬がすぐに効いてくれたお陰で、朔と大希の会話を聞いて、もう穏やかな顔をしている。苦しそうな顔をしていないだけで、とても安堵する。
「……父さん。オレ、そろそろ帰るよ。」
「送って行くから、みんなと居ていいよ?」
「……父さんって、ちゃんと仕事してるんだな。必要とされてるんだから、独占したらダメだったんだ。」
「えっ、どういうこと?」
大翔の言っている意味がわからない。
そんなの家族を捨ててもいい理由には、絶対にならないのに。
「母さんもオレたちも、我儘だったんだ。」
「我儘なんかじゃないよ。ぼくが、ちゃんとしていなかっただけで…きっと仕事よりも家族を優先にするものなんだよ、普通なら。」
朔が徐に立ち上がってインテリアとして置かれていたピアノの蓋を開けて、一音、人差し指で鍵盤を押すと、しっかりと音が出る。
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