焦がすほどの陽光が眩しい季節10
診察をしている間に、白夜本人の了承を得て、学校にいる時など、隣に居る時に少しでも知識があるのと、ないのでは違うと思って、朔に簡単に今の状態を教えた。
朔は怖がったりせずに、真剣にその話しを聞いてくれたし、自ら、さらなる知識を欲しがったりもした。
勿論、本人と身内にしか教えられないことも多々あるんだけど。
白夜も頼れる人が増えるのは心強いと思う。
特にそれが朔だと、なおさらだろう。
突然、ドンドン、と、窓の外から大きな音がする。どうやら、花火大会が始まったようだが、思ったよりも近くて、窓を一切開けていなくても、大きな音が身体に響いた。
「白夜くん、大丈夫!?」
「びゃくちゃん?」
窓の外を、じっと目を見開いて見つめたままかたまってしまっている。
朔と2人で顔を覗くが瞬きもしない。
「……あれが、本物の花火…!」
続けて次々と打ち上がる花火に口まで、ぽっかり開いている。
色とりどりの大輪の花が夜の空に咲く。
高い所から見下ろす花火も、また違った味わいがあって見応えがある。
「びゃくちゃん、とぉっても綺麗ねっ!」
朔は嬉しそうに、白夜に笑いかける。
「……さく、手を貸してくれ!もっと近くで見たい!」
嫌な予感はしたけれど、やっぱりそんなお願いをするのか…。
窓にぺたりと張り付いたところで、距離的にはそんなに変わらないのに、面白いものだ。
「ダメダメ、具合悪くなったら最後まで楽しめないよ。それより隣に移動して、みんなと見よう?2人きりの方がいいのかもしれないけど…せっかく、みんないるんだからね。」
「「はーい」」
2人揃っていい返事をしてくれた。
本当は危ないから、あまり任せたくはないけれど、いずれ舞台に2人で立つなら、なんでも教えておこうと思った。
「じゃあ、朔ちゃん手を貸して。」
「はい、はい!」
ベッドから車椅子に移るのだって白夜にとっては、結構な負担になるが、手の貸方次第では、それを少しでも軽くしてやれる。
メインルームに移ると、既に大翔と大希が仲良さそうに隣同士座って話しをしていて、星夜は、ソファーに腰掛けた美羽のすぐ横で、花火の音をものともせずに、すやすや眠っている。やっぱり肝心な時にエネルギー切れのようだ。
「白夜、花火、楽しめてる?」
「……ありがとう。」
白夜はそう言って微笑む。
朔もそれを見て、頬にえくぼを浮かべる。
「別にお礼を言われるような事じゃないわ。ヤマさんも楽しめてる?」
「えっ、あ!もちろん楽しいですよ。」
まさか、こっちにも、そんな事を、聞いてくるなんて…。
「そう、よかった。」
朔は大翔の存在を見つけて
「びゃくちゃんの所にいる間に、1人増えてますね?あの方は、美羽さんのお知り合いですかぁ?」
それを早速、美羽に尋ねている。
「いいえ、ヤマさんの息子さんよ。」
間違いではないけれど、ストレートに答えてしまう美羽も、美羽だ。
じっと『説明しろ』と言わんばかりに、朔に睨まれる。
「え、あ、まぁ…。」
白夜には話した事があったから気にしていない?
というか、それよりも今は花火の方が気になるようで、視線はずっと窓の外を向いている。
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