焦がすほどの陽光が眩しい季節9
「そうだ、父さん。仕事が大丈夫なら一緒に花火、見ない?……ずっと、ずっとそうしたかった……小さい時は友達が羨ましかったんだ…。」
寂しい思いをさせてばかりだった?
それは、自分がいない方が幸せなんだと思い込む事で、自分自身の罪を軽くしていた。
結局はいつも自分の都合。
顔を合わせられなくなる。
「いや、ごめん、大翔。ぼくは仕事に戻る……」
言いかけた所で、目の前にパッと現れた
「いいじゃない!一緒に見ましょうよ!人数はいくらでも多い方が楽しいもの!」
顔を一切隠していない美羽の登場に、それそれは焦って驚きを隠せない。
「み、美羽さん!?いつから……」
美羽は大翔の手を握って、にこっと笑い、こちらを見下ろす。
「ヤマさん、後で隠し事は全部教えるのよ?」
「…は、は、は、はい…。」
この人には敵わない、絶対敵わない。
逆らうなんてあり得ない、そんな怖さが、どこかに潜んでいる顔。
周辺が美羽に気付いて騒がしくなるが、一緒に着いて来たボディーガードに護られて、エレベーターに無事に乗る事ができた。
エレベーターの中では終始無言だったが、最上階に着いて、ようやく現実を飲み込んだのか、大翔が興奮気味に口を開く。
「あっ、あの!ホンモノの…あの美羽さんですよね?歌手で女優で!…えっと、父と…どういう関係で??」
小さく頷いて、テレビで魅せるような輝かしい笑みを大翔にはつくってみせる。
「……雇い主と、いったところかしら?ねっ?」
とりあえず話しを合わせておこうか…。
事実で嘘はない。
「あ、まあ…そんな感じかな。」
「すごい!すごいよ、父さん!」
「あはは……」
あの部屋に到着するまで主に大翔の質問に答えながらアレコレ話して、到着すると星夜が1番先にビュンと飛んで来る。
受け止めて嬉しそうな顔をする美羽は紛れもなく母親だ。
自分よりも、しっかり親をしている。
キョロキョロしている大翔をどうしたらいいのか…なんと声を掛けるべきか…
誰でもいいから助けてほしいくらいだ。
自分も部屋をぐるぐる見回して、大希を見つける。
「あれ?大希くん、朔ちゃんは?」
「白夜が起きたから……。」
大翔を不思議そうに見上げる大希に自分の口から話して教えるべきなんだろうけど…どうしても白夜を優先にしたい自分がいる。
「ヤマさん、白夜の事をお願い。大翔くん、だったかしら?私に任せておいて。」
結局は美羽の言葉に押される。
「大翔、失礼のないようにね。」
そして、やっぱり、こんな事しか喋れない。
ベッドルームの扉をノックして開けると、白夜と朔の楽しそうな笑い声がすぐに耳に入る。
「ヤマさん、おかえりなさいませ。さくちゃんが、しっかり看てました!」
ベッドの横の小さな椅子に腰掛けていた朔が、わざわざ立ち上がって丁寧な挨拶で出迎えてくれる。この子はいつも出来過ぎているくらいだ。
「おかげで、この通り完全復活だ!」
ベッドの上で起き上がって、スッキリ目覚めて、見た目だけは問題なさそうな白夜が、元気にガッツポーズしてみせる。
「簡単に診察してもいいかな?」
それでも油断は絶対にできないんだ…。
「うん。あ、朔はいてくれて構わないから。……むしろ、いてほしい。」
そんな事を言い出すなんて思ってもいなかったが、それくらい朔は白夜にとって大切な存在なんだろう。
知っていたはずなのに、言葉で聞かされるとドキドキしてしまう。
多様性の時代なんだから、あり得ない話しでもないのかもしれないし、受け入れてあげるべきだろう。
「早くしないと花火始まっちゃいますから、さくちゃんは、邪魔にならないようにしていますね?」
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