焦がすほどの陽光が眩しい季節7
眠気に耐えられなくなりそうなタイミングで朔からの着信があって助かった。
急いで部屋の扉を開けに向かう。オートロックシステムも、あの学園といい、めんどくさいものだ。
昔なんて家に鍵すらなかったのに。
そもそも昔の田舎と比べたら、治安も全然違うし、ダメなのか…
扉を開けると、今日は海に合わせてなのか、ブルーと白を基調としたフリフリで爽やかなイメージの服装をした朔がすぐ目に入る。
というか、避けようがない。
「ヤマさん、こんにちは!さくちゃんと愉快な仲間です。」
朔とは反対に背後にいる大希は、英字のロゴが入ったTシャツにジーンズという、一般的な中学生という感じの格好をしてしている。
「…愉快な仲間じゃないけど、こんにちは。」
「こんにちは、朔ちゃんに大希くん。白夜くん、眠っているから静かにね。」
小さな声で「はーい。」と、いい返事をして、中へ入った2人は、この部屋を特にどうとも思っていないようだ。
驚いたりしないのか?
もしや、遺伝家系では、こんな所に泊まったりするのが当たり前のことなのか!?
所詮、自分とは住む世界が違うのか…
「ビーチが見えて素敵なお部屋ですね。」
「……ホテルの周りも、私服の柊の従者がうじゃうじゃいた。やっぱりすごい家だな。」
「柊の家は格が違いますからね。」
「……本当に。いつの時代も、上に立つような家だからな。」
ビーチが見えるあの大きな窓の前に立って、2人だけの会話をしているから、こっそり聞いていたら
「ヤマさん!さくちゃんたちに特に構わなくていいので、びゃくちゃんに付いていて下さい?」
朔には、すぐ気付かれていたようだ。
これは自分が入ってはいけない領域の会話なのか…。
「そう?」
「適当にくつろいでます、ねっ?」
大希は朔ではなく、こちらを向いて頷いた。
「じゃあ、白夜くんのところにいるね?」
白夜の元に戻ると、まだ深い眠りの中にいて、起きる気配は微塵もなかった。
そのまま部屋を行ったり来たり。
陽が傾き始めた頃、家政婦さんとボディーガード数名を引き連れた美羽と星夜が戻って来て、一気に部屋が賑やかになった。
やっぱり、このくらい広い部屋は大人数でいる方がしっくりくる。
朔も大希も家では末っ子らしいから、弟という存在の星夜が可愛くて仕方ないようだ。
星夜も遊んでもらえるのが嬉しいようで、テンションが高い。肝心な花火の時間に眠くならなければいいけれど。
「ヤマさん、ずっと白夜に付いていてくれてありがとう。少し休んで来ていいわよ?ここの階なら他の部屋も自由に使っていいわ。貸し切ってるのだから遠慮しないで。」
歩み寄って来て美羽は、こちらを見上げる。
「ぼくなら、大丈夫です、お構いなく。」
「……うちはブラック企業じゃないのよ?
藤崎といえば、柊家の家政婦の長のような人で、普段白夜の世話をしている自分より少しだけ年齢が下の女性だ。
テキパキと指示を出して、自らも止まることなく動き回ってる忙しい人だなぁという印象しか残っていない。
今も、この部屋に備え付けられた小さいながらしっかりオシャレなアイランドキッチンで、なにかをせっせと作っている。
藤崎は元々は柊家の分家の人間で元能力だと、白夜に内緒話で聞いたっけ。
「起きたらすぐ、連絡するから。」
「……じゃあ、少しだけ…。」
最後の一押しでそう言われ、休憩に出る事にした。
休憩して1人になるより、賑やかなみんなを眺めてる方が楽しかった…なんて、言えるわけはない。
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