焦がすほどの陽光が眩しい季節2
見られてまずいものでもないし岡崎の隣でディスクワークをしてもいいのだが、なんだか場所がちょっと違うだけで落ち着かなくて、結局は眠る白夜の横で静かに作業している。
それにこの方が、ずっと様子を見ていられて安心もできる。
悲しい事に、確実にどんどんと身体は弱っている。
どんなに安静に過ごして沢山薬を用いても、もはや、ほとんど変わらない。
やっぱり運命には抗えないのか…?
いいや、絶対に抗ってみせないと。
しばらくすると、再び岡崎が気にして声をかけてくれる。
そこら辺は完全に放任してくれる河村とは違って、少し息苦しい感じもするが、あと2日の辛抱だと自分に言い聞かせる。
「…ヤマさんも、そろそろ水分補給しません?」
「……そうですね。」
ちょうど喉も乾いていたし、断って面倒な事になっても嫌だったので、誘いを引き受けて、岡崎とお茶をすることにした。
なんとも平和な時間だ。
ただ、話しを自分からするのは得意じゃないから相変わらず会話にならなくて、沈黙のままで、やっぱり気まずくなる。
診察で今の症状は?どこが痛い?辛い?それはいつから?とか、そういうのなら進んで聞けるんだけど。
我ながら困ったものだ。
「……柊くん、やっぱり他の子とは全然違いますね?」
「……えっ、あ…まあ、見ての通り他の子と同じようには過ごせないですが……。」
誤魔化すようにそう言ったものの、岡崎も、やはり白夜の持つ力の存在を確実に感じているのだろう。
元能力者ならなおさらだし、もしかして…もしかしなくても知っているのか?
「ヤマさんも、ここの卒業生なんですよねぇ?」
「はい、一応。」
「私もなんですよぉ〜。」
「そうだったんですね。」
ということはやはり知っている方か…?
生徒は、そんなに来ないだろうし、話し相手が欲しかったのだろう。
話しが弾みに弾んで、休み時間を知らせる鐘が鳴るまで、ほとんど聞き手で、岡崎の話し相手をつとめた。
おかげで眠くはならなかったが…、いつもとは違う疲れが溜まった気がする。
次の授業時間には、朔と担任の先生、それにクラスメイトたちがテレビ電話を繋いでくれたから、無理に起こすのは本当は嫌だったが、本人が絶対起こしてほしいと事前に言っていたので、希望通りそうして、岡崎と共に陰から見守る事にした。
最初は眠そうにしていたものの、一面のマリンブルーのキラッキラに輝く海と、どこまでもひろがる雲ひとつない空の映像に、楽しそうな朔やクラスメイトの姿も合わさって、どんどん引き込まれていき、自分もそこにいるかのように、とても楽しんでいた。
あっちはもうすぐ夕方かな…。
通信を切ろうとすると、名残惜しそうな朔の声が聞こえて、相変わらずだなぁと、思った。
「ヤマさん!ヤマさん!」
呼ばれてベッドの横まで歩み寄ると、もうすっかり眠気は吹っ飛んだ様子の白夜がニコニコしている。
何か、嫌な予感もするが……
「どうしたー?」
「ヤマさん!俺も海に行きたい。」
ほら、やっぱり……
「校内なら、なんとか寄り道できるけど、校外はさすがに、ぼく1人の判断で連れて行けないよ。それに海は……」
「そこを、なんとか!一生のお願い!」
手を合わせて、もはや何回目かわからない一生のお願いをされてしまった。
「うーん。」
もちろん、できたら叶えてあげたいけれど…
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