焦がすほどの陽光が眩しい季節

 梅雨が明けるまで、白夜の体調は連日あまり良くなかったが、学校に行けた日は大希と朔、それに沢山のクラスメイトに囲まれて楽しく過ごしていた。

なにしろ、何度も可哀想に思うが、学校だけが唯一の自由な時間なのだから。

美羽には悪いが、学校から車に乗るまでの距離で、体調を見ながらではあるが、主に音楽室に寄り道をしたり、コソコソと少しづつ内緒話しのように、自分の家族の事を打ち明けたりした。

白夜もまた産みの親の事や、政治家とのつまらない会合のことまでヒソヒソ教えてくれた。本来ならたぶん外部に言ってはいけない、能力者家系特有の仕事のことなんだろう。さすがに、それは聞かなかった事にしておかないと。

たわいもない話しも沢山した。

好きな物、嫌いな物、最近気になってるアレコレ…話題のアニメの話しなんかも。


確実に深い仲になって、白夜も信頼しきって頼ってくれている。

ぼくも、また、日々の疲れを白夜の力に癒され、その力に、きっと頼っている。


大翔とは毎日のようにメールはするものの、あれ以来会ってはいない。

でも、夏休みには会いたいと思っている。

夢も応援してあげたいけれど…


期末テストが終わってすぐ、通常クラスと合同での3泊5日の海外への修学旅行だったが、白夜が参加できるはずもなく…

それに関しては本人も行けると思っていなかったようだから、駄々を捏ねたりはしなかったが、朔にやや強引に大希も連れて行かれたのが少し不満ではあったようだ。


 河村も修学旅行に同伴しているから、特進クラス側は今は2年生だけだ。

1年生は普通クラスしかないが、だいたい昔から特進に進む子と、普通クラスに進む子、自然とそれぞれでグループを作っているのが当たり前のようだったな。

それは今も同じのようだ。

普通クラス、特進クラス共に芸能界に関与、所属している子が多いから、護桜学園の制服を着ているだけで、人だかりができる、これも昔からだ。

利用する施設は貸し切っていても、道中では避け切れない。

報道陣が待ち構えている場合もあるくらいだ。

先生たちも慣れていて、あしらうのは見ていて気持ちいいくらいに上手いものだ。


 河村がいない間は、いつもの保健室が使えないから普通クラスの保健室を間借りして、修学旅行にリモートで参加したり、自習をして、まったり過ごす。

もう1人、仕事の関係で修学旅行に行っていない生徒がいるようだが、その子とは、既に3日目なのに今のところ一度も顔を合わせてはいない。

そもそも修学旅行には必ず行けるようにスケジュールを、しっかり調整するはずなのに、なぜ?


 疲れて眠りに落ちてしまった白夜の診察を終えて、毛布を肩までしっかりと掛け直していると、普通クラスの養護教諭である岡崎おかざきが、チラリと、カーテンの隙間からこちらを覗いて、そぉっと声をかけてくる。


「……あの、えっと、柊くん寒くないでしょうか?エアコンの温度大丈夫ですぅ?」


「大丈夫ですよ。お邪魔している立場なのに、毎日お気遣いありがとうございます。」


「いえいえ、ごゆっくり〜。」


河村と同じくらいの年代で、同じように、物腰が柔らかく、ふわふわとした雰囲気の岡崎だが、驚く事に、彼女の方が元能力者らしい。

こちらでは能力の事は、一言だって喋る事は許されていないから本人に聞くことはできないけれど、河村が、そう教えてくれたから事実なんだろう。


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