煌めく雫が大地を潤す季節5

 白夜が病院に入院して8日目。

熱が、再び上がらないか様子を見て、長めに入院させていたが、明後日には、家に戻れると浜野が言っていた。

それを祝うかのように、ずっと雨だったのが、嘘のように爽やかに晴れた。

休日というのもあって、朔が1番早い面会時間に合わせて朝早くからお見舞いにやって来ていた。


一緒に大希も…


まさか、大希が来るとは思っていなかった。

朔が無理矢理、一緒に連れて来た、というのが真相のようだが、それでも嬉しかった。


「ヤマさん、びゃくちゃんのお部屋まだです?」


「もう、ちょっとだよ。」


病室まで案内して廊下を歩いている間、朔は大希の服の裾を離さない。

迷惑そうにしていながら、大希はそれを無理に振り解いたりはしない。

それにしても、2人の格好の温度差がすごい。朔は全身ピンクのフリフリで、相変わらずいつも通りだが、大希の私服は全身真っ黒のシンプルな服装だ。

部屋の前でノックをするが、返事がない。

……眠っているのか…?


「白夜くん、入るよ〜?」


扉を静かに開けると、窓際に寄り掛かって立ちすくんでいる白夜を見つける。


「びゃくちゃん!?」


「さくっ!?」


朔の姿を見つけて勢いよく振り返ると、ふらふらしてしまう。


「あ、危ない!!」


急いで転ばないように支えようと動くが、間に合いそうにない。

でも、パッと動いた大希と朔が白夜の身体を上手く捕まえた。自分より遥かに若いんだから反射神経が2人の方が断然いいに決まっている。

笑い合っている3人がキラキラ輝いているように見える。やっぱり友達っていいなぁ。

って、眺めている場合じゃないって。


白夜をベッドに戻した所で軽く事情聴取。

もちろん、朔と大希にも公開で。

どうしても外を見たかったと言われても、そんなの、『安静に過ごす』という約束を守らない理由にはならない。


「せっかく元気になったのに、ぶり返して家に帰れなくなったらどうするの?」


「……。」


白夜の返事はなく、ただ下を向いている。


「ヤマさん、もういいじゃないですか!びゃくちゃんは反省しています!」


「……外くらい見せてやってもいいじゃないか。」


2人がいると完全に3対1で、どんなに正しい事を言っても勝ち目がないか…


「……家に帰りたくないなぁ…。」


「……確かに美羽さん、とぉっても厳しいですもんね。さくちゃんと、びゃくちゃんは、ただ仲良く音楽をやりたいだけなのにね。」


「そうだ!ヤマさんの家に住ませて下さいよ!」


「冗談言わないでよ。」


笑い合って本当に楽しそうだ。

そして自分も、とても楽しい事に気がつく。

みんなの輪の中にいて、幸せな気持ちになっている。

こんな気持ちはいつ以来だろうか…。

それも、能力のせいなのか?


「さく、それにしても、どうやって大希と?」


「さくちゃんの情報網を駆使しました!ねっ、柏くん!」


「……ひなたと知り合いだったから、だろ。」


久しぶりで話しが、かなり弾んでいるようだが、負担にならないように、時々言葉を挟んで、軽くブレーキを掛けつつ、見守る事に専念していた。




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