煌めく雫が大地を潤す季節

 あの日のネットのニュースの事を、白夜に聞けないままギクシャクと何日も過ぎた。

白夜本人も、それに関して何も言っては来ない。このまま聞かない方が、もしかしたら、いいのかもしれない?

美羽には、この頃は冷たくあしらわれているのがあからさまだ。その分、柊家直属の家政婦並びにボディーガードの人たちの白夜に対する監視がキツくなった。

本人もそれに気付いて、溜息ばかりついている。朔とのメッセージのやり取りまで全て確認されているようで、プライバシーが全然ないと、よく溢していた。

さすがに、やり過ぎだと思うが口を出せるような立場でもない。


それでも無事に、体育祭を終えた。

もちろん時間いっぱいの参加は出来なかったけれど、担任の粋な計らいで、見学をしている間は、クラスの写真撮影を任され、喜んで引き受けていた。


体育祭が終わると、すぐに中間テストがあって、その後はだんだんと雨模様の日が多くなった。まだ、梅雨入りの発表はしていないけれど、毎日湿度が高くて不快になる。


「殆ど椿の写真ばっかりじゃないか…。」


印刷してもらった写真を机に広げた大希が、困ったように笑う。


「大希くん、本当に?」


「嘘言ってどうするんだよ。こんなので、ちゃんとクラス新聞作れると思ってたのか?」


白夜と共に保健室でクラス新聞を作成するように言われ2つ返事で了解した大希だったが、渡された写真に困り果てた様子だ。

肝心の白夜は、雨が続くと不調なようで、1時間目と2時間目半分だけクラスに行って、その後は、「頭が痛い、でも絶対に帰りたくない!お願いだから…!」と言って、ずっと保健室のベッドで眠っている。

帰りたくない気持ちはわからなくもない。

学校にいる間しか自由がないのだから。


起きたら、どんなに駄々をこねられても帰そうとは思っているが、それまでに外の雨が少しでも弱まってくれないと濡れないように移動するのが大変だ。


クラスリレーで1位のメダルをかけてもらってカメラ目線で笑う朔の写真を手にとる。


「それにしても、朔ちゃん、速かったよね。」


「……アイツ、何やらせても完璧過ぎてムカつくんだよな。」


大希はあれから、だいぶ変わって、こうやって、たわいもない話しもできるし、白夜と一緒であれば時々クラスにも行ったりしている。

うたうのが好きという気持ちは変わらないようだけど、やはりクラスの子達と打ち解けるのは容易ではないようだ。


「大希くんだって、中間テスト学年4位だったじゃん!」


「あそこで、ほとんど寝てるくせに、1位のヤツはどうなんだよ…。」


「……あはは。」


そういえば、白夜が勉強に困っているのを見た事がない。

ほとんど学習できてないと思うのだけど…

これはSの能力とは全く関係ないし、白夜の元々の才で実力ということか…?


「……他人と比べたって仕方ない…。」


小声で呟いて、担任が撮影した写真も一気に机に広げる。


「……そうだね。」


河村は、楽しそうに話しを聴きつつも、もはや安心して、ディスクワークに勤しんでいる。










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