第30話 リザードマンの過去
第30話 美味しい食べ方
「落ち着きましたー?」
「そりゃあ落ち着きましたよ。私だけ泣きじゃくって腹の中を全部みせたんだから嫌でも落ち着きますよ」
落ち着いたと言っているものの、顔はなぜかむくれ上がりどう見ても不機嫌そのものであった。
「じゃあ、何で不貞腐れてるんですか?」
「そりゃあ、不貞腐れもしますよ!?私だけ勝手に暴露して色々知られちゃったのに、リンさんは別に何も知られて無いじゃないですか!?なんか全てを見通されたって感じで癪なんです」
「それを言うなら私だって、知られましたよ〜」
お酒を自分とシイナのお猪口に表面張力が働くほどギリギリまで入れながら程よく酔いながら話を進める。
「弱み握った感ないんですけど...」
「えー!だって、感情がない事バレちゃったし普段のポワポワキャラも作ってるってバレちゃったんだからおあいこ」
「いや、感情がないのは初耳ですけど普段のキャラを作ってるってのは誰でもわかる事だと思います...」
「嘘〜」
などと驚いたふりをしているのだが、それもやはり上辺だけにしか感じられなかった。
「まぁ、大体は見通しましたけど一つだけ分からない事がありますかね?」
「ん?それは何ですか?」
「ここにくる前、蛇に食べさせてた餌のお三方はどうなったのかな?って思ったんですよね。知り合いみたいだったのに、本当に蛇の餌にしたんですか?」
「ちょっと待って下さい!?何でその事を知っているんですか!?」
「さぁ?何でですかね?伊達に長い時間を生きていませんから、大抵のことは知ってますよ〜」
「ちょっと!理由になってませんよ。砂漠での私生活のどこまでを知ってるんですか!?」
「先に私の疑問に答えて頂けるので有れば答えるかも知れませんし、そうではないかも知れません〜」
おばあちゃんかと言うぐらい眉間に皺を寄せ、うーんと考える。首を左右に何回も振り漸く答えが出たようだ。
「あの三人は別に蛇に食べさせてた訳じゃ無いですよ。ちゃんと生きてます」
「そうなんですかー?では、一体あの御三方をどうしたんですか?まぁ、いくらSとは言え、助けたのに自分が使役している霊獣でわざわざいたぶって殺すなんてしないと分かってはいましたけどね」
「そこまで分かっているなら聞かなくて良いじゃ無いですか!?その先も推理してください!」
「えー。その先が分からなくて聞いたのに〜」
「はい!じゃあ、次は私の質問!私に一体何をしたのか教えて下さい!魔力分解剤を飲んでも剥がれなかった鱗が魔力を失って剥がれてきてる。でも、リンさんは同じお湯に浸かっているのに何とも無い。何でか説明して下さい!」
「仕方ない。種明かしをしようかな〜。シイナさんは料理ってできます?」
「料理?多少は....」
「それと同じです。お湯に魔力分解剤を入れてシイナさんの体から身体に溜まりすぎた魔力をお湯に出しました。それを魔力がなくなりかけた私が吸収したんです!」
着物を脱いだ雛野が現れ湯船につかる。
その言葉を聞き、シイナが上がろうとする。そして、それを2人が止めた。
「離してください!お湯に魔力分解剤を入れたってどう言う事ですか!?魔力を失い続けるとどうなっちゃうのか知ってるんですか!?」
「勿論ですよ〜。有魔族ら魔力を全て出し切ってしまうと廃人になってしまう...のは良い方で実際は肉体を持たないゴーストの様な意識体になってしまうって言いますよねー」
「何ですかそれ!?思考することもできない廃人になる以上の事があるんですか!?ゴーストになるなんて初耳ですよ!?」
「大丈夫!それを知っている二人が居るんですから、ゴーストなんかにさせませんよ。少し清められた聖水をかけられただけで消えちゃいますからね」
「ちょっとそれを知っている二人に今風呂から出るのを止められちゃってるんですけど!しかも、菊野さんの中では最悪のケースのゴースト化しちゃってるんですか?」
そう指摘された途端に顔を逸らす。その隙に腕を振り解いて抜け出そうとするのだが、ガッチリと掴まれていて中々解けない。
「そうなるのは嫌ですよね?ゴーストに遊び半分で聖水をかけてくる教会育ちの子供なんて一番タチが悪いですからね」
「そんなに弱い存在になっちゃうんですか?じゃあ、尚更離してくださいよ」
「何言ってるんですか?別に離しても良いですけどあっという間にゴースト化しますよ」
そう呟いて雛野が手を離し、次いでリンも手を離した。
多少ずっこけながらも湯船から上がりおぼつかない脚で立とうとした瞬間、視界が歪みどっちが上か下なのか分からなくなり地に伏せる。
「なん...で?湯船か..ら出たの...に?」
パチン!
リンが指を鳴らすと湯船の湯気が羊の形になる。羊達が協力して道を作りその上にシイナを乗せて湯船に戻した。
「ハァハァハァハァハァハァ。何で?何で魔力が分解されてる所から出たのに!?」
「答えは簡単ですよー。このお湯はシイナさんの魔力を分解してます。さぁ、分解された魔力はどこに行ったでしょうか?」
「え?分解されたら無くなっちゃうんじゃ無いですか?」
「レギオンの割に意外とお馬鹿さんなんですね。元盗賊さん。答えはこれです」
丁寧ながらも辛辣な言葉を吐き指をくるんと回して温泉の近くから生え、根っこの一部が温泉に浸かっている気を指さした。
さっき迄は無かった柚子が湯船へと落ちていきそれがあっという間に羊になっていく。
器用に温泉を泳ぎシイナの元へと人懐っこくやってきた。
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