第10話 鬼人②

身の毛もよだつ殺気を感じ、後ろを振り向いた。


そこには、先ほど見た鬼人が立っていた、薄い青色の体でタトゥー全身に入っていて、身長2メートルほどの体格はがっしりとした筋肉質でどう見ても勝ち目はないと思った。

出口と思われるドアまで後、50メートルほどの距離で俺の50メートル走は現役時代で6秒だが、今となれば中肉中背でおそらくそんな早く走れないだろう・・・。

でも相手の鬼人は50メートルの距離なんで1秒もかからないぐらいの速さで追いかけて来そうな雰囲気だった。そんな事を考えていると

鬼人は腰に巻いている日本刀を抜き、臨戦態勢に入っていた。


俺も学生時代は、剣道で県3位と活躍した人間だ。「やるしかない」と覚悟を決め、先ほどゴブリンが使っていた鉄の剣を構えた。


1秒が何十分と立ったように感じながら、唾をのむような緊張と死を感じながら向き合っている。この時は、死を覚悟した。


「オ、マエ…。ナニモノダ…。」

鬼人が片言の日本語で話しかけてきた。

「え…。」鬼人が話しかけてきたことにあまりにも驚きを隠さなかった。

「オレタチ…ハ、ココニ…スンデイル。オマエハ…ナゼココニ…イル。」

おそらく人間がここにいる事に鬼人は驚いている。

「ここの建物に住んでいる。」

この言葉に鬼人は怒りを感じ、烈火のごとく襲い掛かってきた。


すさまじいほどの剣技に防戦一方で結構な時間耐えている。

気を抜いた瞬間に鬼人に切りつけられて死ぬことになる。昔、剣道である程度の実力はあったが、ここまで耐えられることに正直驚いている。


攻防に疲れたのか鬼人は、一度遠のき、深呼吸をして、次の攻撃に備えている。

この時にため息まじりにダンジョンに籠った事に後悔していると、鬼人は襲い掛かってきた。


炎射矢ファイアアロー」と、後ろから女性の声が聞こえてきた。その声と同時にすごい速度で鬼人目掛けて火の矢が飛んで行った。

流石の鬼人も、火の矢をよける事ができなく当たってしまった。

鬼人は、何事もなかったように後ろに下がって、攻撃体勢を整えた。

まさに達人の領域の雰囲気を感じた。


「黒木さん!!」と後ろから白野さんの声が聞こえてきた。

白野さんがここにいる事に驚いていたが、戦闘中ということもあり後で聞く事にし、白野さんと臨戦態勢に入った。


白野さんは、魔法師なだけあって防戦一方の戦闘が互角になったが切羽詰まった戦闘でも魔法を生でみてしまうと目が行ってしまう為、たまに危ない時があるが…。

戦闘が数分続くと、鬼人が後ろに下がった。


「コレガ…。マホウカ…。オンナ…マホウハ…ニンゲン…ミナ…ツカエルノ……カ?」

鬼人が話しかけてきた。


「お前にいう事はない」

白野さんは、余裕のない様な雰囲気で話した。


「ワカ…タ」

何かを悟ったかのように鬼人は来た道の方向に帰っていった。


二人は、気が抜けてその場に座り込んでしまった。

少ししてから、二人はマンションの1階のフロアのソファで休むことにした。


白野さんに今回の件を聞かれ、白野さんに今まで起きた出来事(ダンジョンマスターになった)事を説明した。

その会話の中で白野さん曰く、おそらくA級のボスレベルと言っていて、

その上のランクもいると言われていると聞いた時に驚きを隠せなかった。


白野さんの生い立ちや学校の事も話してくれて、たわいもない話をしていた時に

遠くから聞こえてくる多くのパトカーが鳴らすサイレンがマンションに近づいてくる。


ここから、俺の人生がまた劇的に変化することになるとは、今は思いもしなかった。

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