第2話-3
「でも、わたしたちもできる限りの力を使って、運ばれてくる騎士様たちを癒やしていました! むしろ必死に働いていたのに、
聖女の声に涙がにじむ。悔しげなその表情を見る限り、不当に閉じ込められたと見たほうがいいだろう。
「わたしたちだけではなく、同じように言いがかりをつけられてどこかに連れて行かれた聖女は、ほかにもいっぱいいました」
「おかげで人出がどんどんなくなって、騎士たちの治療も追いつかなくなって……」
「それなのにサボっていると言われるなんて、あり得ないわ。おまけにこんなところに閉じ込めるなんて……うっ……」
緊張の糸が切れたのだろう。二人の聖女は手に手を取り合ってすすり泣きはじめてしまった。
「つらかったな。話してくれてありがとう」
「本当に、いったいどうなってしまっているの? それに……どうして天井が壊れているの?」
ふと上を向いた聖女たちが仰天した様子で寄り添い合う。
リオネルは「あー……」となんとも言えない声を出した。まさかあの天井を吹き飛ばしたのが、元首席聖女のミーティアとはとても言えない。
「すまない、ちょっと事情があって。とにかく三人は避難してくれ。もし似たような牢がある場所がわかるなら教えてほしいんだが」
そのとき、部屋の向こうから「隊長おおおお!」と叫ぶ声が聞こえてきた。
「お、ヨークの声だ。こっちにいるぞー!」
リオネルが大声を出すと、扉が開いて「本当に隊長がいた!」とヨークが顔を出した。うしろには南門にたむろしていた王国騎士も続いている。
「ちょうどよかった。おまえたち、部屋をめぐって聖女たちを助けてやってくれ。この聖女たちの保護も頼む。さっきまで明かり一つない地下牢に閉じ込められていたんだ」
「はぁっ!? 聖女が閉じ込められてって……なんでですか!?」
「おれが聞きてぇよ。どうやら言いがかりをつけられて閉じ込められていたって感じだ。同じような聖女が大勢いそうな感じだし、手分けして探して保護してやってくれ」
「わかりました!」
敬礼したヨークに続き、難しい顔をして入ってきた王国騎士も得心がいった様子でうなずいていた。
「ここへくるまでもいろいろ探していますが、聖女も聖職者も姿が見えないことを不審に思っていました。閉じ込められているなら納得ですよ」
彼らも神殿の異様さに気づいたようで「すぐに囚われている聖女たちを助けるんだ!」と動きはじめた。
「しかし、天井がめちゃくちゃになっていますね。
「神殿に思うところがありすぎて、いろいろ溜まっていたんだろ。発散できるならそのほうがいいさ」
「まぁ、それは確かにっすね」
すると、騎士に連れられ外に出ようとしていた聖女の一人がハッとこちらを振り返った。
「今ミーティア様とおっしゃいましたか? ミーティア様がきているのですか!?」
「あ、ああ。聖職者から帰還要請があって……」
「よかった! ミーティア様なら、ボランゾン様にお話できるかもしれないわ」
聖女の言葉に、リオネルは「どういうことだ?」と眉をひそめた。
「ボランゾンっていうのは筆頭聖職者の名前だよな?」
「ええ。でも……」
涙で汚れた目元をゴシゴシとこすってから、まだ年若い聖女ははっきり言った。
「ミーティア様がこちらを出て行ってから、ボランゾン様のご様子は明らかにおかしくなっていったから。仕事量が増えて、いらだっているのかと思っていたけれど、それくらいじゃ説明できない。なんというか、すっかりひとが変わってしまわれたのです」
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