第2話-1

 ドガァアアン! とものすごい音がして、分厚い門が文字通りバキバキに破壊されて四方に飛び散る。その破壊力たるや、先ほどのリオネル以上のものだ。


『ポポ――ウ!』


 門を突き破った魔鳩マバトはすぐに右へと飛び去り、突風を巻き起こしながらまた神殿へと舵を切る。


 あらかじめ門を内側から破ると行っていたので、門の破壊に巻き込まれた騎士はいなかったようだが、突風で何人かが吹っ飛ばされているのは見えた。申し訳ないが、そこは大目に見てもらおう。


「あとで全員わたくしが癒やすから。――さ、魔鳩ちゃん、この調子で神殿の建物もどんどん破壊していくわ!」

『ポッ!?』


 マジで!? とまたしても驚く魔鳩に対し、ミーティアはどこかわくわくしながらうなずいた。


「天井がなくなったほうが誰かを探すにもやりやすいわ。地下に通じる道がある部屋も限られているし。とにかく全部壊して回るの!」

『ポォ――ッ!?』

「いいの、いいの。神殿のどこに誰がいるかも把握したいし、【神樹しんじゅ】を傷つけるやからがいる場所なんて破壊し尽くしたほうが平和になるわ!」

『……』


 もはや魔鳩はなにも言わなくなった。言っても無駄だと思ったのだろうか。

 だがミーティアに協力する気は満々のようで『クルッポー!』と大きく鳴くと、【神樹】を囲むように連なる神殿の屋根すれすれを滑空しはじめる。


 ミーティアが結界を展開すると、待っていたとばかりに、ありとあらゆる屋根を壊しながら突き進んでいった。




 ドゴォオン! と門のほうから尋常じんじょうならざる轟音ごうおんが響いて、さしものリオネルも「なんだぁ!?」と叫んでしまった。


「誰かが門をぶっ壊したか!? ヨークとロイジャかな……? まぁいいや、壊れたと判断して探索続行」


 リオネルは脚力を活かし、とにかく建物内を走り回った。


「ったく、どこもかしこもだだっ広い部屋ばっかりなのに、聖女の一人もいないのは本当になんなんだ……!?」


 一般人が入れるのは礼拝用の広間と治癒用の広間くらいで、その奥を見る機会はなかなかない。

 強化人間の術をかけてもらうときと、剣にめる宝石をもらったときに、神樹に少し近いところに行ったことがあるものの、そこへの道のりもよく覚えていない。


「一回外に出るか……って、うおおおお!?」


 また別の広間に出た途端、高い天井がドガアアアアンと音を立てて崩れ去って、リオネルはあわてて壁際へ避けた。


「なんだぁ!?」


 あわてて外に出てみれば、魔鳩が神殿の屋根をドガガガガっとひたすら突き破っているではないか!


「あんなことしたら怪我するだろ!? って、乗っているのはミーティアか?」


 動きが速くてよく見えないが、あのひらひらとなびく金髪は間違いない。

 どうやら彼女が結界を展開しつつ、魔鳩に天井をぶち破らせているようだ。


「……。あいつ、時々振り切った行動に出るよな」


 首席聖女時代は神殿の奥に閉じ込められていたというから、案外その腹いせも兼ねて建物を破壊して回っているのかもしれないが。


「あとで恨まれても知らないぞ」


 とは言いつつも、上手い手だ。天井をぎ取ってしまえば、上空から聖職者や聖女を探し出すのも楽になる。


 リオネルはひょいっと破壊された天井の名残部分に飛び乗り、あちこちを飛び回りながら一つ一の部屋や広間を確認していった。

 と、そのうちの一つが目に留まる。

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