第2話-8
「力の強い聖女がどう過ごしてきたかも知りたくて、古い
それだけに、自分が『神託』を受けたことは、周囲に話すことができなかった。
どういう反応をされるかわからなかったし、『神託』を勝手に解釈された挙げ句、聖職者たちにいいように使われてしまうかもしれない。監視されたり、行動がさらに制限されることも充分に考えられて、口にするのはあまりにリスキーだと思ったのだ。
「わたくし自身が『神託』を受けた聖女として、より奇異な目で見られるのもいやだったの。ただでさえ力が大きすぎて、同じ年頃の聖女たちから遠巻きにされていたし……。だから、わたくしは天才で、みんなを助けるためにここにいるのだと、ずっと自分自身に言い聞かせてきたところもあるわ」
同時にひたすら猫を被って、誰にも優しく、理想的な聖女を演じることを意識した。
物腰柔らかく丁寧に話ながらも、堂々と胸を張って、自信に満ちた面持ちで過ごすことも心がけた。
そうすると不思議なもので、『力が強くて恐ろしいし近寄りがたい……』と思われていたのが、『あんなに堂々としたすばらしい聖女なのだから、力が強いのも当然ね』という形で受け入れられるようになってきたのだ。
「つまり、全員おまえの演技に騙されていたってことだな。聖女より女優を目指したほうが大成しそうだ」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
「とはいえ、並みの精神力じゃそんなこともできないしな。やっぱりおまえは天才というより、超がつくほどの努力家というわけだ」
「……まぁね。寝る間も惜しんでやってきた自負はあるわ」
否定してもしかたないので、ミーティアはゆっくりうなずいた。
「女神様が命じた『助けよ』が【
しかしリオネルはわずかに眉をひそめ、首を小さく振った。
「状況的にそう受け取れるけど、実は助ける対象は人間でも【神樹】でもないかもしれないぞ? なにせ、なにを助けるかは指定されていないわけだし」
「まさか。それ以外になにを助けろというの?」
「それはおまえが決めていいぞ、ってことなんじゃないか?」
リオネルはあっさり言った。
「与えられた力を振るうのは、結局おまえ自身だ。なにに対してその力を使っていくかは、おまえが決めればいいと思う」
「そんなことを言われても……」
「いいじゃないか。『神託』なんて厄介なもんを押しつけられたんだ。そのくらいの我は押し通してもいいだろう」
リオネルはにやりと笑う。ミーティアは思わずため息をついた。
「あきれた。罰当たりもいいところだわ」
「おまえは真面目すぎるんだよ、ミーティア。なんでも気楽に考えないと責任感に押しつぶされるぞ」
足を大きく振った反動で立ち上がったリオネルは、夜空を見上げる。空にはたくさんの星がまたたいていた。
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