第2話-6

「デュランディクスなんて。わたくしが中央にいた頃には、年に一度連絡を取り合うかどうかくらいの関係だったのに。ここ最近で頻繁ひんぱんにやりとりをするようになったということ?」

「おれにはさっぱり……」

「わたくしも、中央神殿にいた頃にもそういう話を聞いたことはなかったです」


 全員がどういうことだろうと首をかしげてしまう。


「その荷物がどういうものかわかっていたなら、いろいろ考えることもできるけど」

「ですね。確認できればよかったんですが」

「ちなみに魔鳩マバトはどれくらいの頻度ひんどで見かけるのですか?」


 ミーティアの問いに、チューリは「確か……」と記憶をたどるように天を仰いだ。


「十日に一度くらいね。たまに三匹くらいまとめて飛んで行くこともあるの。魔鳩は魔物たちより高く飛ぶから襲撃の心配はないと思うけど、集団でいると、やっぱり狙われやしないかとハラハラしちゃって」

「魔鳩が集団で飛ぶなんて、国内じゃまず見られない光景だな」


 リオネルがかなり険しい顔になって腕組みした。


「【くい】は不可解にぶっ壊れるわ、魔鳩は国外へ飛んでいくわ……言っちゃあなんだが、あんまりいい予感がいっさいしない異常事態だな」


 リオネルの言葉に、ミーティアも思わずうなずいた。


「奇遇ね、わたくしも同じように感じていたわ」

「わたしもよ。でも……」


 チューリはどこかほっとした様子で口元を緩めた。


「第四神殿には聖女はわたししかいなくて、残りは日和見ひよりみのおじいちゃん聖職者が三人ばかりだから、若い方々と建設的なお話ができただけで救われた思いだわ」


 心底そう思ったのだろう。チューリは胸元に手を当て、女神に対し感謝の言葉をつぶやいていた。


「チューリ様も本当に大変な日々を過ごされておいでだったのですね」

「魔物と戦っていらしたあなた方ほどではないでしょうけど……そうね、確かに、心細い日々だったわ。特に【杭】が壊されているのを見つけた半年前からは、ね」


 そのときのことを思い出したのか、チューリはひたいに手を当てて緩く首を横に振った。彼女からすれば寿命が縮む思いであっただろう。


「そういえば、魔鳩が飛んで行くのを見るようになったのはいつ頃からですか?」


 ふと口にしたリオネルに対し、チューリは「うーん」と考える仕草をした。


「気になりはじめたのは三ヶ月くらい前からかしら。もっと前から飛んでいたのかもしれないけれど、とにかく【杭】の応急処置でてんやわんやだったから」


 ミーティアも口元に手を添え、考え込む。


「【杭】が壊れていると確認できたのが半年前、魔鳩の飛行が頻繁になったのは三ヶ月前……リオネルが国境に詰め始めたのも半年前くらいだったかしら」

「ああ。そして二ヶ月半前に支援は途切れた。前回を抜かせばな」

「わたくしが首席聖女になったのは三ヶ月前……いえ、追放されてもう一ヶ月経つから、四ヶ月前ね。なんだかこの半年くらいのあいだに、おのおのいろいろあったという感じね」

「だな。そういえばミーティアは、どういう経緯で首席聖女になったんだ?」


 興味を持った様子でリオネルが尋ねてきた。

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