第2話-3
『グギャアアアアアウ!!』
魔物の
『ギャオオオオ!』
「ひるむなー! 聖女様の護符があるおれたちは無敵だ!」
「おうっ!」
騎士たちはだいたい五人ひと組のチームになって、三名が弓で、二名が剣や槍で応戦するという形を取っていた。
リオネルだけは単騎で飛び込み、魔物の急所を刺してその辺に転がしておく。手が空いた弓兵が痛みでもんどり打つ魔物にとどめを刺していた。
(わたくしも加わりたいけど……)
たまに騎士たちの目を逃れた魔物が進軍してくるので、それを阻むのに精一杯だ。魔物はみな民家ほどの大きさをしていて、勢いよく体当たりをくり返されると、さしもの結界もビリビリと震えて維持が難しくなる。
「くっ……!」
魔物の一匹が叫び声を上げながら結界を殴ってくる。殴られるたびガラスが割れるような音とともに結界が薄くなるので、ミーティアは集中して薄くなった部分を補強していった。
補強する端から壊される上に、他の魔物もやってきて体当たりをかましていくから始末が悪い。
「いいかげんに……しなさいよっ!」
防戦一方で焦れたミーティアは、結界を大きく動かし、魔物たちをはじき返した。
『ギャアアアアウ!』
結界が壁のように自分たちを打ち据えたので、跳ね飛ばされた魔物たちはよりいきり立って結界を壊そうとしてきた。
そこへ、宙高く飛び出したリオネルが、剣を構えながらやってくる。
「おまえらの相手はこっちだ!」
高く飛び上がった勢いそのまま、矢のように落下してきたリオネルは、ミーティアに迫ろうとしていた魔物の喉笛を一気に掻き切った。
『グェエエアアッ!』
魔物が紫色の血しぶきを上げながら地面を転がる。着地したリオネルはもう一度その喉を切りつけ、新たにミーティアに迫ろうとしていた魔物に向けて強く跳んだ。
「うらぁ!」
リオネルはその魔物の喉も的確に切り裂き、残りの魔物もあっという間に倒してしまった。
そうしてまた前線に戻り、新たにやってきた魔物も切り伏せていく。
他の騎士たちも善戦していて、五人ひと組のチームを保ったまま、次から次へやってくる魔物を倒していった。
「――倒していくのはいいが、キリがないな!」
「聖女様、結界を徐々に外に向けて動かすことはできますか!?」
一番近くにいた騎士たちが指示をしてくる。ミーティアは「やってみる!」と答えて、自身が国境へ歩いて行くのに合わせて、巨大な結界の壁をじりじりと動かしていった。
「【
新たにやってきた四つ足の魔物を、高く跳び上がったリオネルは
頭から胴まで一気に切り裂かれた魔物は、縦真っ二つに割れて、ドウッと紫の血をまき散らして倒れていった。
「――魔物の
「はい!」
指示を受けた騎士たちがすかさず動く。二人がミーティアを左右から担いで走り、三人が彼女の前と左右に護衛のように付き従った。
「ちょ、ちょっと、わたくし一人で歩けるわよ……!」
「おまえは結界を張ることに集中! いいからおとなしく運ばれとけ!」
前を走るリオネルが指示する。
偉そうな言い方は会ったときから変わらないんだからと思いつつ、今ばかりは聞いたほうがいいとばかりに、ミーティアは杖を掲げ結界の維持に神経を注いだ。
「このまま突っ走れ――!!」
「おおお――ッ!!」
剣を前方へ掲げるリオネルに、騎士たちも力強く応じて全速力で走る。だが足腰を強化しているリオネルが早すぎて、だいたいの騎士はそれに遅れてついていく感じだ。
そしていち早く国境にたどり着いたリオネルは、新たに集まってきた魔物を片っ端から切り捨てていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます