6話 私は……

「だからさ、僕の能力で見たわけさ、そしたら君の魔力が

 面白いことになっていたって言うこと。」と言って指をさした方には____










 ______________日宇だった。

「君はそうだな。簡単に言えば、勇者の才がある。」と言われて驚愕を通り越して無を感じた日宇が言った言葉は一言である。





「え」 


 これに尽きたのだった。日宇の反応は驚愕を通り越して、

 逆にドン引きした上、体が震え、良い意味で声もまともに出せないと言ったところ。きっと口に出したいのは本心たてまえ

 こういう言葉だろう。「新手の詐欺ですか??」と表情からでも分かる。


 そりゃそうだ、

 咲玖勇者よ!!わしの姫がさらわれてしまいました!!

 どうか世界を支配する魔王を倒し、囚われの姫をお救いください!!とゲームの序盤で出てきてリスポーンしたときに現れる王様が言ったとしても、日宇は困惑するしかない。彼女は突然の出来事や物事は正確な判断を出来ないことが多いからだ……って本題がずれてしまった。


「咲玖、まじどうしよう……」と助けてと泣きそうに懇願しても私は何をやれば良いのやら、語彙力が無くなってしまった日宇に変わって、私は彼に問う。

「ハジメさん、急に勇者の素質があるとか言われても本人は困惑しかしていません。

 なにがどうして勇者の素質があるのかちゃんとした根拠…。…片鱗とかそういうのだととかなんかありますかね??」と言うと彼は思い悩んだ。悩んだと思ったら、そうだと言って外へ日宇と引っ張り出し、訓練所のような場所に着いた。


 訓練所では色々な冒険者がモンスターを討伐するための道具が、

 色々と準備されてある。試し切りや大型モンスターに向けた作戦での練習。そんなすごい設備の中、訓練場所の端っこでハジメは切り株に薪を置いてそれに足をかけた。

「それじゃ、薪を当ててみよう!!」…………どうやって!?!?!?

「へーきヘーき!!手にある程度気持ちを込めて、

 それを対象物に当てればいいだけだから。やればできる!!だよ。」

 精神論じゃねーか。と心のなかでそうツッコむ。

 これには日宇も……と振り返ると普通に気を溜めたかのような出来ていた。

 その気を薪に割ることで咲玖は自分には本当に勇者の質がある。

 なんで!?!?そう驚いた私はその出来事に処理できない頭を抱えながらも……

 日宇に出来るのだから私も…と思い、手をかざそうとすると

「あ!!ちょっとまって!!君は後だから!!」と止められた。

 ふと、一瞬の焦りの表情が見えたが、立て直すようにすぐに日宇のところに行った。


 その数日間、日宇の能力の練習に一日中勤しんだ。気を手の中で操ること。

 気を操ることによって身体能力を向上すること。

 天気の良い今日はサンドイッチを食べたこと。

 そんな修行が毎日続いた。

「お師匠様!!次は何をやれば良いのでしょうか!!」といつの間にか、

 師匠呼びになっているし、前までは詐欺師を見るかのような目をしていたのに…

 とヤキモチを焼いた。私も次があるだろう、こっそり練習しようと訓練所に行っても「まだ後で!!」の一点張りだ。待っても一向に自分の出番がなかった。


 ただ単に、何が楽しいのだろうか、

 異世界に来てから暇で死ぬ人間は私だけだろう。というかいるのだろうか??

 食事を食べては外の景色やギルドにあるクエスト受注の紙を見ては妄想に浸りこむ、そんな毎日が永遠に続くそう思っていると眠れない夜が来たのだった。

 たとえ眠れなかったとしてもベッドに入るしか手段がないのだ。

 気持ちよくスヤスヤと眠れたら良かったのに、少しだけ疲労感があれば、

 眠れただろうにと思いながら、私は木製廊下特有の軋む音を気にしながら、部屋に出ることにした。


 夜は少し涼しさを感じ、鳥や虫の音色が聞こえてくる。

 そんな中で私は訓練場の中で手をかざしてみる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る