第11話「読書オタク」
ある日の昼休み、僕、
一緒に戻ってきた
絵菜を見送って、さてもう少し時間もあるし、僕は本でも読むかと思って、鞄から本を取り出した。僕は本や小説を読むのが趣味だ。読書オタクと言ってもいい。いつからなのかなと思い出してみると、幼稚園の時にはいつも絵本を読んでいたことを思い出した。まぁ、友達も少なかったから一人で本を読む時間が多かったんだけどね……うう、悲しくなってきた。
その時、鞄に友達の
あれ? そういえば木下くんは女の子と話すのがちょっと苦手なところがあったが、克服できたのだろうか。まぁ、木下くんにも
僕は木下くんに借りた本を持って、二人のところへ行く。
「木下くん、借りてた本持って来たよ、ありがとう。面白かったよ」
「あ、ひ、日車くん、いえいえ、面白かったならよかったよ」
「やっぱり異世界ファンタジーは鉄板だよね……って、富岡さんと二人で楽しそうに話してたね、ごめんお邪魔だったかな」
僕がそう言うと、富岡さんがブンブンと首を振った。
「いえいえ、お邪魔ってことはないですよ……! 木下さんが本を読まれていたので、気になって私が話しかけてみたところで……!」
なるほど、本の話をしていたのか。この二人も読書オタクと言っていいくらい、本や小説が好きだった。三年生になって一緒のクラスになって、また本の話ができるなと僕も嬉しかった。
「そうなんだね、木下くんは今何を読んでるの?」
「あ、ぼ、僕は今これを読んでるよ」
木下くんがブックカバーを外して、表紙を見せてくれた。有名な作家のミステリー小説だ。
「おお、木下くんはこういう作品も読むんだね」
「う、うん、いつもファンタジーとかラブコメとかが多いから、た、たまには違うものをと思って」
「木下さん、すごいです……! その作品は面白いですか……?」
「はひ!? う、うん、ちょっとホラーめいたところもあるんだけど、な、謎が少しずつ解けていく展開が面白いなーと思っているよ」
あ、どうやら木下くんは、まだ女の子に慣れていないところがあるみたいだ。まぁ彼女がいるからといってすぐに慣れるわけでもないしな。こんなことを言っている僕も以前は女の子と話すのが少し苦手だった。僕には妹がいるけど、他の女の子というのはまた違うものだ。
「うんうん、ミステリーもいいよね。僕もその作家さんの別の作品を読んだことあるけど、面白かったよ」
「日車さんも……! すごいです……! そっかミステリーか……もしお二人が登場人物になったら、謎を解き明かしていくうちにだんだんと意気投合して……はっ!? わ、私何考えてたんだろう」
「……?」
「あ、き、木下くん、気にしなくて大丈夫……富岡さん落ち着いて……」
「はわっ!? す、すみません……BL作品の読み過ぎですかね……」
富岡さんがあわあわと慌てて顔を手で覆った。そう、富岡さんはBL(ボーイズラブ)作品が好きだった。たまに妄想……かどうかは分からないが、軽くトリップしそうになることがあった。き、気にしないでおこう……。
「おっ、みんな集まって何してんだー?」
その時、大きな声が聞こえてきた。見ると杉崎さんがニコニコしながらやって来た。
「ああ、三人で本の話してたところだよ」
「おー、本の話かー、みんな好きだなー、あ、そういえばあたしも大悟から借りたラブコメ小説にすっかりハマっちゃってさー、続きが早く出ないかなーって思ってるよー」
「あ、そうなんだね、杉崎さんも本が読めるようになってきたんだね」
「ああ、あたしバカだからさー、今まで本なんて読んだことなかったけど、いいもんだなー。なー大悟!」
杉崎さんが笑顔で木下くんにくっついた。木下くんは「え!? あ、そ、そうだね……」と、ちょっと恥ずかしそうだった。
「杉崎さんも……! すごいです……! こうして本好きが増えてくれると嬉しいです……!」
「あははっ、まーわりと悪くないみたいな? あ、そういえばさー、富岡っていつも髪を三つ編みにしてるけどさ、下ろしたらさらに可愛いんじゃね? ちょっと下ろしてみてよー」
「……ええ!? い、いや、そんなことな――ああっ!」
富岡さんがそんなことないと言う前に、杉崎さんが富岡さんの三つ編みを触ってどんどん下ろしていった。ギャルの行動力は半端なかった。
「こうしてこうしてさー、おお、三つ編みもいいけど、こっちも可愛いじゃん! なー日車も大悟もそう思うだろー?」
「ほんとだ、雰囲気変わるね、か、可愛い感じがする……」
「ほ、ほんとだね、い、今の方が好きかも……」
「……ん? 大悟、今好きって言った? 浮気は許さないからね」
「ああ!! い、いや、そういう意味じゃなくて、な、なんと言えばいいのか……その、あの……」
「……は、は、恥ずかしいです……あの、元に戻してもいいですか……?」
富岡さんが顔を赤くしてあわあわと慌てている。それもなんだか可愛らしい感じがした。
「だーめ、せっかくだから今日はそのままでいてよー、可愛いんだから大丈夫だよー」
「……ええ!? い、いや、あの、その……」
「富岡さん、大丈夫だよ、似合ってるよ。下ろしてるのもいいかもしれないね」
「ひ、日車さんまで……! そ、そんなこと言われると……あ、熱くなってきました……」
恥ずかしそうに手で顔を覆う富岡さんに、杉崎さんは「だいじょーぶ!」と言いながら頭をなでなでしていた。
ま、まぁ、そんなこともあったが、友達と趣味の話ができるのが僕は嬉しかった。
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