第9話「偶然の出会い」
(ふふふ、昨日も団吉さんとRINEでお話しちゃった~、嬉しいなー)
学校の昼休みに、私、
というのも、ある男の子とRINEで話すことが増えて嬉しかったのだ。その男の子の名は
団吉さんとの出会いは偶然だった。私が大事に持ち歩いているお母さんの写真とお守りを落としてしまって、それをたまたま通りかかった団吉さんが拾ってくれたのだ。それからRINEの交換をして、RINEで話すようになった。
団吉さんは優しかった。もしかしたら誰にでも優しいのかもしれないが、私は特別感があって嬉しかった。お会いした時に顔も見たが、優しそうな可愛い顔をしていた。私は胸がドキドキした。
これは恋心なのだろうかと自分に問いかけるが、まだよく分からなかった。でも、お話をするたびに団吉さんの優しい性格が見えて、私はやっぱりドキドキしていた。
(うーん、これは恋なのかな……団吉さんは好きな人とかいるのかなぁ、今度そっと訊いてみようかなぁ)
ボーっと団吉さんのことを考えていたその時だった。
「――と、東城さん、ペン落としてるよ」
ふと声をかけられたので見ると、クラスメイトの
「え、あ、いつの間にか落としちゃったのか、ありがとう!」
天野くんからペンを受け取る。天野くんとちょっと手が当たってしまって、「ご、ごめん!」と天野くんがなぜか慌てていた。
「えへへ、私、なんだか落とし物をしやすいのかなぁ、気をつけないとなぁ」
「そっか、気をつけてね……って、なんか落とし物でもしたの?」
「あ、うん、それがね……」
私は駅前での出来事を天野くんに話した。
「え!? そ、そんな大事なものを落としたの!?」
「うん、うっかりしてたよー、でも拾ってもらえてよかったなぁって」
「そ、そっか……って、あれ? 今なんか知らない人の名前が出てきたような……」
「ん? ああ、団吉さんのことかな? 拾ってくれた人だよ、ほんとよかったー」
「だ、団吉さん……!? ど、どどど、どこの人!? お、男だよね!? 同じクラス!? い、いや、そんな名前の人はいないな……ブツブツ」
「あ、天野くん? 団吉さんは年上の高校生だよ、青桜高校に通ってるって言ってたなぁ」
「と、年上!? 高校生!? な、ななな、何者なの……!?」
天野くんがなぜか慌てている。どうしたのだろうか。
「天野くん、どうしたの? うーん、何者かって言われると難しいんだけど、優しくて可愛い人かな!」
「や、や、優しくて可愛い……!? そ、それは、ほんとに男の人!?」
「うん、男の人だよ、昨日もRINEで話したんだ。『勉強大変だろうけど、頑張ってね』って優しい言葉かけてくれたなぁ」
「え、え!? RINEで話してる……!? それ騙されてない!? 高価な壺を買ってくれとか、怪しい宗教に入ってくれとか言われてない!?」
「あ、天野くん? 大丈夫だよ、そんなこと言われてないよ。それに、私からRINE教えてくれませんかってお話したからね!」
「え!? と、東城さんから訊いたの……!? ああ、なんか驚きすぎて頭が混乱してきた……僕、何かが見えた気がする……」
天野くんがフラフラしている。さっきから様子がおかしいが、本当にどうしたのだろうか。
「あ、天野くん、大丈夫? 隣空いてるから座って。あ、分かった、お昼食べ過ぎて苦しいんでしょ?」
「い、いや、そうじゃないけど……あ、そういえば東城さん、青桜高校受けようかなって言ってたけど、も、もしかしてその、団吉とかいう人がいるから……!?」
「あ、いや、そうじゃないよ、青桜高校受けようと思ってたのはずっと前からだし、たまたま団吉さんが通ってるってだけだよ」
「そ、そっか……それなら安心……いや、ということはその団吉という人と会うことがあるということか……こ、これは僕も青桜高校に行って、どんな人か見てみないと……ブツブツ」
天野くんが何かブツブツ言っていたが、声が小さくてよく聞こえなかった。
「おーい麻里奈、駅前の近くに新しいカフェがオープンするんだって、今度一緒に行ってみない?」
その時、友達の女の子が私に話しかけてきた。
「え、そうなんだね! うん、行く行く! カフェかぁー、何食べようかなー!」
「あはは、麻里奈はほんと甘い物が大好きだよねぇ……って、あんたの隣で天野くんがブツブツと何か言ってるけど、あんたまた天野くんいじめたね?」
「え、そ、そんなことしてないよ! 天野くん、天野くん?」
私の呼びかけにも答えることなく、天野くんはブツブツと何か言いながら自分の席へと戻って行った。ほんとにどうしたんだろうか、そっとしておいた方がいいのかな。
それにしても、新しいカフェか。やっぱりケーキかな、あ、パフェもいいな。美味しいものがたくさんあるといいな。
(……そして、いいところだったら、団吉さんをそっとお誘いしてみようかなぁ……って、や、やだ私ったら、そんなことしていいのかなぁ)
ちょっと恥ずかしくなって顔が熱くなっていると、友達が「あんたまた何か考えてるね……」と言った。な、なぜバレたのだろうか、顔に出ているのかな。
楽しいことがたくさんありすぎて、ちょっと浮かれている私だった。
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