第4話「高校生の日常」
(はぁ……百四十八位か、高校生って大変だな……)
高校に入って初めての定期テストがあった。私、
私は学年で百四十八位だったらしい。一年生は三百二十人いるので、なんとか半分よりは上になることができたが、まだまだ頑張らないといけないなと思った。
そういえばお兄ちゃん、あ、
「日向ちゃん、テストどうだった?」
「日向、なんか深刻そうな顔してない?」
ふと声をかけられたので見ると、
「……あ、い、いや、実は百四十八位で、もっと頑張らないとなと思っていたところで……真菜ちゃんと健斗くんはどうだった?」
「私は六十四位だったよ、数学が難しくて足引っ張っちゃった」
「わっ、沢井さんすごいな、僕は八十二位だったよ。たしかに数学難しかったよね……」
二人の順位を聞いて、私はさらにどんよりとしてしまった。たしかに以前から二人は私よりも勉強ができるが、こんなに差があるとは思わなかった。うう、穴があったら入りたい……。
「そっか……二人ともすごいね、私なんて全然ダメで……」
「そんなことないよ、日向ちゃんも赤点はなかったんだよね、大丈夫だよ、まだ始まったばかりなんだし、これから頑張ればいいんだよ」
「そ、そうだよ、そんなに落ち込まなくていいよ。日向に元気がないと僕も元気がなくなってしまう」
二人が優しい言葉をかけてくれた。二人とも昔から優しかった。だからこそ自分が置いていかれそうな気がして、ちょっともどかしい気持ちもあった。
「……うん、ごめんね、元気出す。そういえばお兄ちゃんは一年生の時このテストで七位だったって言ってたなぁ。すごすぎてびっくりだよ」
「まあまあ、さすがお兄様! 七位ってすごすぎるね!」
「お、お兄さんすごい……! どうやったらそんな順位になれるんだろう……」
「うーん、兄妹でこんなに差があるとちょっと悲しいんだけど、私も自分なりに頑張ろうかな!」
「うんうん、そうだね、目指せお兄様! だね」
「さ、さすがにお兄ちゃんみたいになるのは無理かもしれないけど……まぁ目標を持つのは大事だよね。あ、部活行かないとね」
「そうだね、早く行かないと
気を取り直して、部活に行くことにした。うん、落ち込んでばかりもいられない。またお兄ちゃんに勉強教えてもらおうかなと思った。
* * *
部活が終わり、片づけをしていると、
「日向、終わった? 一緒に帰らない?」
と、健斗くんが話しかけてきた。
「うん、終わったよ。帰ろっか」
私は鞄を取りに行って、健斗くんと一緒に帰ることにした。校門を出て、そっと健斗くんの左手を握った。お兄ちゃんと同じくらいの背の健斗くんの手は大きかった。
「日向、テストのこと、あまり気にしないようにね。ま、まぁ、お兄さんというすごい人が近くにいるから、どうしても気になってしまうかもしれないけど……」
健斗くんがぽつりぽつりと話してくれた。
「うん、ありがとう。真菜ちゃんも言ってたけど、まだ始まったばかりだもんね。これから頑張るよー」
「うん、やっぱり日向に元気がないと、僕もしょんぼりしてしまうというか……日向は元気な方が、か、可愛いから……」
健斗くんがちょっと顔を赤くして言った。恥ずかしいのだろうか、そんな健斗くんも可愛かった。
「あ、ありがとう……わ、私は元気じゃないとね! あーでもお兄ちゃんに順位のこと言ったら呆れられそうだなぁ」
「あはは、そんなことないんじゃないかな、お兄さん優しいから」
「うーん、勉強のことになると途端に厳しくなるんだよね……ううーまた勉強しろって言われそう……」
「そっか、でもお兄さんが近くにいるっていいな、何でも教えてくれそうで」
「うん、あ、またうちで一緒に勉強しない? お兄ちゃんがいたらまた教えてもらおうよ」
「そうだね、僕も教えてもらいたいな。そ、それと……」
健斗くんがちょっと言葉に詰まったような感じだった。何かあったのだろうか?
「ん? どうかした?」
「あ、そ、その、今度の休みの日、一緒に出かけない? 観たい映画があって、どうかなって思って」
「あ、ああ、うん、大丈夫だよ。ひ、久しぶりにデートだね」
「う、うん。最近部活ばかりでデートもできなかったから、ちょっと寂しくて……楽しみにしてるね」
恥ずかしそうに言う健斗くんが可愛くて、私は健斗くんの左腕に抱きついた。健斗くんは「わ、わわっ」と慌てていたが、嬉しそうな顔をした。
「お、お兄さんを超えるのは難しすぎるけど、ぼ、僕も頑張るから……」
「あはは、たしかにお兄ちゃんはすごいけど、健斗くんは健斗くんらしくしてればいいんだよ。あまり気にしないでね」
「あ、ありがとう、なんか逆に励まされた気分だな……」
健斗くんがそう言うので、私はクスクスと笑ってしまった。
高校生活もまだまだこれからだ。みんなで一緒に頑張っていこうと思った。
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