第5話 防人の話⑤
一人ダイニングに残された私はずっと薄ら怖かったあの家に思いを馳せた。あの家の場所は古代から防人が集められた土地。昔の国語の授業で聞いた防人の事を思い出した。年老いた親や小さな子供を置いて集められ、任務を終えても故郷に帰れる保証は全く無い防人。どれだけ切なく辛かっただろう。残された家族もどれだけ辛く悲しい日々を過ごしただろう。それに防人が集められなくなった後もいにしえの人々の暮らしが楽だったとは思えない。それ故、長い年月、成仏できなかった無念の魂がいてもおかしくはないように思う。
それにしても、いいものばかりではなかったとはいえ、心やさしい人たちに大切な息子を護ってもらっていたとは。当時、孤軍奮闘の育児で、育児を親に助けてもらってる人達を羨んだり妬んだこともあったけど、実は私も助けてもらっていたんだ。
ありがとうございます。
誰もいないダイニングで私は一人、胸の前で手を合わせた。
防人の話 @ajtgjm159
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