第4話 防人の話④

「あのときはあの人らの服は変だなとしか思わなかったけど、今から考えたらいろんな時代の服装だった。そんな人達。」

一人じゃなかったのか?

しかも最近ではなくいろんな時代の昔の人?

私は心底驚いた。

「何人も居たの?」

息子は当たり前のようにうなずいた。

「大人や子供、男も女も居たよ。お年寄りも。いろんな人がいた。」

話を聞くと古代の服装をした人も居たようだ。彼らは心を痛めた小さな息子に優しく接してくれていたらしい。


「みんな悪い人じゃなかったんだね。」

「でも、辛くて死にたいって言ったら、一緒にアッチに行こうって引っ張って行こうとする奴も居た。」

私は息子の言葉に思わず目をむいた。私が驚いて言葉に詰まったのを見て息子は苦笑した。

「あ、大丈夫だったよ。行っちゃダメだって止めてくれる人が沢山いたから。自分は生きたかったけど生きられなかった。だから生きなさい、自分から死んじゃダメって。必死で止めてくれた。」

はあ。

私は大きく息を吐いた。止めてくれたんだ。本当にありがたい。私のホッとしたのを見て、息子は続けた。

「でもさ、自分はこうやって殺されたんだって見せてくれんの。一生懸命止めてくれてるのはわかるけど、刺し殺されたり、首はねられたりを映像で見せられんのって子供にはキツいわ。」

カレーを食べ終え、食器を流しに置くと息子はダイニングを出ていった。

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