第2話 防人の話②

 小さな子供は大人に見えないものが見えるという話を思い出した。息子が怖がってはいないので、そう悪いものではないのだろう。でも気持ちのいいものではない。

「なにそれ?誰が居たの?」

「女の子。一緒にあそんでたし、怖いものじゃなかったよ。」

驚いて目を丸くする私に対し、息子はモグモグと変わらず口を動かしている。そして何やら思い出したように顔を上げた。



 「そういや、あの家は気持ち悪い家だったよね。チャイムが鳴って、モニター見たらお父さんが映ってたのにドアを開けたら、誰も居なかったって事あったじゃん。」

「ええ?そんなことあったっけ?」

「なんで忘れたの?もう物忘れ?一緒に玄関に迎えに行ったのに。」

頼りない私の記憶に息子は呆れた。

そういえばいつも夜遅くに帰宅する夫が昼過ぎに帰ってきたと息子が言うので一緒に玄関に迎えに行ったことがあったっけ。ドアを開けたが誰も居なかった。

「ほらあ、こんな早い時間にパパが帰ってくるわけないよ。◯◯ちゃんの勘違い。」

そう息子に言ってドアを閉めた事を思い出した。息子は「なんで?」って顔をして首をひねってたっけ。

あの時、息子はパパの姿をモニター越しに見たんだ。もしかして私も見たの?なんだか背中がゾワゾワしてきた。気持ちを逸らそうと息子に話しかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る