防人の話
@ajtgjm159
第1話 防人の話➀
私は不動明王様が大好きだ。それは偉大なる力で魔を払って下さるから。この話はまだお不動様の事を知る随分前のこと。ここで話をさせてもらうことで供養とさせて頂きたいと思う。
数年前のこと、その日、休日出勤の代休を取った息子が昼過ぎに起きてきた。そして寝癖のついた頭をポリポリと掻きながら、ダイニングの椅子に座った。
「おはよう。何食べる?」
「うーん、昨日のカレー残ってたら、カレー食べたい。」
息子のリクエストで私は昨夜のカレーを温め、彼の前に置いた。起きぬけでもカレーを食べられるなんて若さってスゴい。それは久しぶりの、息子と二人きりの昼下がりだった。
カレーを食べている息子ととりとめのない話をしていると、息子が小さい時に住んでいた関東の田舎の話になった。その頃住んでいた家は地元民が家を建てる地盤のしっかりした高台ではなく、田んぼを埋め立てた造成地に建てたものだった。まだまだ周囲に家が立っておらず、空き地の方が多かった。外灯も少なく、夜になると真っ暗。そんな場所のT字路のどん突きに我が家は建てられた。家は一階にリビングとキッチン、二階に親子が寝る主寝室と当時は空室ではあったが将来の子供部屋が2つあった。
流しで皿を洗いながら、あの頃、あの家のキッチンで夕食を作っていた時の事を思い出した。
「覚えてないだろうけど、まだ小さい時、関東のあの家のリビングでアンタは誰も居ない夜の庭に向かってよくバイバイって手を振ってたことがあったね。」
「ああ、あれ?誰も居ないって?いや、居たよ。」
え?皿を洗う手が止まった。
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