鑑賞
あれからもう三年の月日が流れた。彼女と私は今では友達で、仲良くやっている。
定期的に連絡をくれる彼女は、変わらず優しい。『元気?』『元気だよ』なんて、短い文のやり取りだが。
彼女は画家になった。手の絵だけを描く画家に。
人気がとてもあると、ネットニュースで知った。完成度が高い、と色々なところから注目をされているらしい。記事に載っていた彼女は、変わらず可愛らしくて美しかった。
だが、私が気になったのは彼女の今の絵ではなかった。
私が気になるのは、あの時私の手を描いた絵である。あの放課後、彼女は絵をどうしたのだろう。持ち帰ったのだろうか。捨てたのだろうか。美術室に置いていったのかもしれない。
その真相が、私は知りたかった。彼女の絵を、もう一度見たかった。
それで、私は彼女の個展に訪れた。個展の名前は『手』。彼女らしい、と笑ってしまった。
彼女の個展は人気だった。どの絵も綺麗で、生き生きとしていた。学生時代とは比べ物にならないほど、彼女の腕には磨きがかかっていた。
『綺麗……』
いつ見ても、彼女の絵は綺麗だった。これは子供の手、これは女の人の手、これは老人の手……。説明文を読まずとも、その手を持つ人の暮らし方が分かるようだった。
順路に沿って歩けば、あっという間だった。十枚以上ある作品は、どれも魅力的で圧倒された。
最後の絵で、私は足を止めた。
息を飲んだ。
私の手だ。私の手が、そこにあった。
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