そもそも、iPadで執筆する以前は何を使っていたのか?

 勢いよくスタートを宣言しましたが、まずは、私が元々どのような執筆環境で執筆していたのかをご説明したいと思います。いきなり出鼻をくじいてすみません。


 私はこの2年間、キングジム社が提供しているデジタルメモツール「pomera」(ポメラ)のDM200という機種を使用していました。このポメラ、小説界隈では愛用されている方が多いと思います。なんといっても日本語の文章を書くのに特化したツールとして、下記のような特長があるからです。



・余計な装飾、機能がない


 執筆画面がワープロやアウトラインプロセッサのように非常にシンプルで無駄がありません。

 またインターネットにも繋がらないので、YouTubeやTwitter、ブラウザなど執筆に邪魔になりそうなものは見れません。執筆だけに集中できる環境があります。



・辞書を参照できる


 ポメラにはもともと国語辞典、和英/英和辞典、類語辞典などが収録されており、文章作成中に手軽に参照できます。これがすごく便利です。執筆中、「この言い回し、他の言い方できないかな?」「この単語、使い方を間違っていないかな?」などと気になったときはすぐに辞書を参照するようにしていました。



・軽い、持ち運びしやすい


 外形サイズが約263×120×18mmと、おおよそA4サイズを縦半分に折ったくらいのサイズです。私は普段小さめのショルダーバッグを使っているのですが、それにも収まるサイズ感。重さも約580gと、一日中持ち歩いても問題ない重量で、「今日は隙間時間に執筆できるかわからないけど、とりあえず持っていく」ことに抵抗がなく、実際、外出時の隙間時間にもポメラで執筆していました。



 このような特長から、私はポメラを2年間ほど愛用していました。しかし、使い続けるにつれ、個人的に少々不便に感じることが出てきたのです。以下の3点です。



・調べ物ができない


 インターネットに繋がらないのは長所でもあり、短所でもありました。執筆しているときに「ちょっと調べたいな」ということが調べられず、スマートフォンを使う必要があります。そのちょっとしたデバイスの切り替えが面倒くさいな、と感じることがありました。



・プロットを作りにくい


 文章作成に特化しているポメラは、意地悪く言い換えると「文章作成しかできない」ともいえます。2021年にはじめての長編執筆を経験し、「長編小説を書くにはプロット作りは欠かせない」と学んだ私はプロット作りに力を入れはじめますが、文章だけではなかなかアイデアを練り切ることができませんでした。ですので、プロットだけはポメラだけではなく手書きノートやパソコンのソフトウェア、スマートフォンのアプリケーションなどを活用していましたが、アイデアやデータがいろんなデバイスに散らばってしまい、管理しきれないことが問題でした。



・パソコンと連携しづらい


 私の場合、執筆した小説を公開するルートは3つあります。①小説投稿サイト「カクヨム」に投稿する、②公募に出す、③本にする、です。

 言わずもがな、どのルートでも執筆したテキストデータをパソコンに移す必要があります。カクヨムに投稿するにはブラウザ上で作業する必要がありますし、公募に出す場合は主催者が指定するWordやPDFなどの形式に変換してウェブから応募しなければなりません。本にするにあたっては、レイアウトなどを検討して入稿データを作る必要があります。

 ポメラにもパソコンにデータを移す手段はいくつか準備されています。私はその中でもGmailにテキストデータを送信する手法をとっていたのですが、Gmail側のセキュリティが改訂され、それができなくなってしまったことがありました。それ以降はポメラとパソコンを有線で繋いでデータを転送しなければならず、少々手間を感じていました。



 さらにはポメラを酷使していたため、キーボードのキーが効きにくくなったり、電源が立ち上がる時間が遅くなったりする兆候が見られました。いきなり故障してデータが飛ばれては困るので、「そろそろ買い替え時かなあ……」と感じていたことも、今回執筆環境を変えようと決意したきっかけになったのです。


 ここで言及しておきたいのが、私が言いたいのはポメラが悪いということでは決してありません。ポメラは素晴らしいツールです。キングジムさんには生み出してくださってありがとうという気持ちでいっぱいです。2年間使い倒した私が言うのですから、間違いありません。しかしながら、私の執筆スタイルと合わなくなってきた、というだけなのです。ポメラがジャストフィットする小説書きさんも大勢いらっしゃいます。そう言う方は何も無理して変える必要はありません。


 ただ、「現状、なんかどこかやりにくいな……」と感じていらっしゃる方は、次の章からの話がちょっとでも参考になるかもしれません。


 話が少し逸れましたが。ポメラの寿命や不便な点を解消すべく、いよいよ「執筆環境を変えてこの状況を打破する!」と決意した私。


 次の章では、私がどのような考えで執筆環境を帰る準備を進め、ツールを揃えたのかをご紹介していきます。

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