第26話「残されたヒーロー」

直樹は大東の手を借り事務所を脱出。


「はぁ……それにしても……まさか探偵と怪盗が一緒に逃げる日が来るとはな……」

直樹はそうボヤキながら走る。

「全くだ……いっそのこと怪盗に転職でもするか?指導してやるぜ?」

「は?ふざけんな!」

「冗談だよ……もう少し先に車を止めてあるからそこまで頑張れ」

「ああ……」


それから少し走った先に車が止まっていた。

「あれだ!あれに乗ってくれ」

「分かった!」

直樹が車に乗るとその車の運転席には玲奈が座っていた。

「あなたが黒沢を探ってる探偵さんね?」

「ああ……そうだけど?誰?大東の仲間か?」

「まぁ、そんな所よ。藤井玲奈よ。宜しく」

「ああ……宜しく……」

挨拶を終えると玲奈は車を出発させた。


「ところで、何処に向かってるんだ?」

「まずは身を隠して体制を整えたい。良い場所がある」


その頃、黒沢は更にヴィランキーの購入者を増やそうと再びテレビを利用し、洗脳の準備を進めていた。

「会長さん、ヴィランキーの製造が追いつかなくなってるぜ?このまま洗脳しても意味が無いんじゃ?」

六ツ木がそう言うと……。

「大丈夫ですよ……確かにヴィランキーの製造には遅れが出てますが……洗脳さえしておけばいつでも集める事が出来ますから……」

Mはそう言って六ツ木に説明する。

「どちらにしろ全人類をヴィランにするにはヴィランキーは足りなさ過ぎる……今の内に製造を早めておく必要がある……」

「それはご安心下さい黒沢会長。製造の遅れは徐々に取り戻しつつあります」

「さすが三条君だ……次の秘書は君かな?」

「光栄です会長」

「さて、そろそろ行くか……」

そう言って黒沢はデスクから立ち上がる。


その頃、黒沢のビルの下には赤木が到着。

「黒沢め……これ以上貴様の好きにはさせん!」


赤木は1人で黒沢のビルへ突入。


「どうやら来客の様だ……」

そう言って黒沢は監視カメラの映像を流す。

「これは!あの刑事め……」

「六ツ木君、お客さんのお相手を頼むよ」

「了解!叩き潰してやるぜ……」

六ツ木は意気揚々と部屋を出ていく。


赤木がビルに突入すると早速、洗脳された人々が待ち構えていた。

そして、人々は一斉にトルーパーヴィランに変身した。

「悪いが……俺はヴィランキーに手を染めた者に容赦はしない……」

赤木も変身。

ダッシュライザーがトルーパーヴィラン達と戦う。


その頃、直樹達は大東の隠れ家に到着。

「ここだ……」

それは古びた喫茶店だった。

「え……?お前、こんな所隠れ家にしてたのかよ?」

「ああ……僕の祖父がやっていた店でね……祖父が亡くなってからも父が残しておいてくれたんだ……」

「大東の親父さんって確か……」

「ああ……黒沢に殺された……だから決めたんだ。黒沢を倒す為にエクスライザーになって必ず父の仇を取るって……」

「私も……黒沢に父を殺されたわ……」

「え?君も?」

「ええ……」

「そっか……皆それぞれの想いがあって黒沢と戦おうとしてるんだな……」

「それより、早く作戦を立てるぞ」

「え?ああ……」

何で大東が指示をするのか、直樹は不思議な感覚に疑問を持ちながらも大東の元へ行く。


その頃、ダッシュライザーは必死に戦っていた。

次々に現れるトルーパーヴィランとの戦いでかなり体力が消耗していた。

「ハァ……ハァ……クソッ……コイツら……どんだけ居るんだ」


そして、体力の消耗したダッシュライザーの前にウィンドヴィランが現れる。

「随分疲れている様だな……」

「貴様は!?」

「俺が今すぐ楽にしてやるぞ……」

ウィンドヴィランは突風を巻き起こしダッシュライザーをビルの外へ追い出した。


「うわあぁぁぁぁっ!?」

「さぁ……始めようか……俺達の戦いを……」

ウィンドヴィランはダッシュライザーに容赦なく攻撃をしてくる。

「クソッ……こうなったら……」

ダッシュライザーは『ブーストキー』を取り出し『ブーストフォーム』にチェンジ。

「10秒だけ相手してやる……」

ダッシュライザーは10秒間の超高速攻撃を開始した。

ウィンドヴィランもスピードを活かして戦闘を繰り広げる。

激しく戦うを両者……。

しかし、体力の消耗しているダッシュライザーには10秒間の超高速攻撃も辛かった。


「くっ……限界か……」

10秒間の攻撃が終わりダッシュライザーは元の姿に戻る。

「これで……終わりだ」

ウィンドヴィランは突風を起こしかまいたちの様な攻撃を仕掛けた。

「ぐわぁぁぁぁぁっ!?」

ダッシュライザーは大ダメージを受けて倒れ込む。

「さて、面倒だし、そろそろ息の根を止めておくか」

ウィンドヴィランが倒れたダッシュライザーに近付く。


「撃て!!」

突然声が響きそれと同時に一斉にウィンドヴィランを攻撃。

「ぐわっ!?」

それは警察の機動隊による一斉射撃だった。

指揮を取るのは三浦……。


「赤木!しっかりしろ!!」

三浦は赤木に必死に呼び掛ける。


「クソッ……超人になりきれないただの人間が……調子に乗るなよ!!」

ウィンドヴィランは機動隊に襲いかかる。

次々に機動隊員を殺害していくウィンドヴィラン……。

「クソッ!」

三浦もライフルを構える。

だが、ウィンドヴィランは三浦の首を掴み締め上げる。

「このまま苦しみながらじわじわと殺されるのと、一気に首をへし折って殺されるのどっちがいい?」

ふざけるな……そう叫びたかったが三浦は首を締められ声を出せない……。


このままでは殺される……そう三浦が死を覚悟したその時!


「ぐわっ!?」

ウィンドヴィランは攻撃を喰らった。

振り向くとダッシュライザーが起き上がり『ダッシュスナイパー』を構えていた。


「ハァ……ハァ……喰らえ……」

そしてもう一発。

「ぐわぁぁぁっ!?」

ダッシュスナイパーによる攻撃でダメージを受けたウィンドヴィランは三浦を離した。


三浦はその場で座り込み咽る。

「ハァ……ハァ……ハァ……あ……赤木……助かったぞ……」


ダッシュライザーはウィンドヴィランの方へゆっくりと歩みを進める。

その歩みはふらついてはいたが、しっかりと歩みを進めていた。

そして、ウィンドヴィランを殴り飛ばした。

その一撃は武器を使った訳でもないが強烈な一撃だった。

「ぐわっ!?き……貴様!?どこにまだそんな力が!?」

焦るウィンドヴィラン。


「六ツ木!!俺達がお前達の様な犯罪者に屈する事はない!!覚悟しておけ!!お前達は……必ず潰す!!」

それはまさに最後に残ったヒーローの姿であった。


「ぐっ……」

「今回は見逃してやる……その代わり黒沢に伝えろ!お前を……必ず逮捕するってな!」


ウィンドヴィランは逃げ出した。

「おい、赤木!何で逃した?」

「奴らと決着を着けるにはアイツの力が必要です……こちらも数名の機動隊員が犠牲になりましたし……体勢を立て直した方がいいでしょう……」


赤木と三浦は警視庁に戻る。


その頃、黒沢の元に戻った六ツ木は……。


「ほぉ……それでのこのこと逃げて来た訳ですか……」

「も……申し訳ありません……」

「まぁいい……いよいよ奴らとの決着の時が来ましたね……六ツ木君、三条君、土門君、準備を頼むよ……それと……M、君には彼らのサポートを頼む」

「はい、お任せ下さい……」

そう言ってMは部屋を出ていく。


Mが廊下に出るとスカーとブラウが待っていた。

「よう、犯罪コーディネーターさんよ……」

「おやおや、あなた達ですか……まだこの世界にいらしたんですね……」

「ああ……この世界の行く末を見物して行こうと思ってな……」

「そうですか……ではご自由に……」

Mは立ち去ろうとする。

「待ちな」

ブラウがMを引き止める。

「何です?」

「お前……俺達と一緒に来ないか?」

「スカウト……と言う訳ですか……」

「ああ……直ぐに答えろとは言わねぇ……少し考えてな。まぁ、もっとも……断った時はその命を代わりに貰うけどな……」

そう言い残しスカーとブラウは帰って行く。


警視庁に戻った三浦と赤木は作戦を立てる。

「奴らは一般市民まで洗脳し勢力を拡大している。出来るだけ一般市民を傷付けずに奴らを逮捕したい……」

「ですが、一般人と言えどヴィランキーに手を出した以上は犯罪者……法的にはそうなってしまいます」

「確かにな……俺達に攻撃してくるだろうな……でもな赤木、俺達刑事は真の悪って奴を見逃しちゃいけねぇ……」

「真の悪?」

「ああ……本当に悪いのは人の心の隙間に漬け込み悪事を促す連中だ……そんな奴らがいる限りこの世から犯罪は消えねぇ……だが、1つの悪を捕まえる事で減らせる犯罪もある……俺達刑事にはそれを見極める目が必要だ」

「はぁ……」


赤木は三浦のベテラン刑事としての姿を見せ付けられた様な気がした。


「フッ……説教くさい事言っちまったか?今の若い奴はそう言うの嫌いだよな」

「いえ、そんな……」

「さてと……」

三浦はスマホを取り出し電話を掛ける。

「どこに掛けてるんですか?」

「アイツが必要だろ」

「ああ!」


三浦が電話を掛けた相手は直樹。

「はい……三浦さん?」

「直樹君、無事か?」

「はい……大丈夫です」

「警察では明日、黒沢グループの本社ビルに突入する事になる。君も協力してくれるか?」

「あの……その作戦は大勢の警察官が加わるんですか?」

「ん?ああ、その予定だが……今日の戦いで機動隊員が数名犠牲になってしまったから再編成が必要だがな」

「それちょっと待って貰えませんか?」

「え?」

直樹の突然の申し出に三浦は驚いた。

「今、俺達の作戦を立ててます。でも出来るだけ少人数がいい……」

「何?一体誰と?」

「エクスライザーです……」

「何っ!?」

赤木が三浦のスマホを取り上げて話に加わるん

「工藤、お前今何て言うた?エクスライザーと一緒におるんか?」

「赤木か!ああ、エクスライザーに助けられたんだ……黒沢を倒すのは俺も、警察もエクスライザーも目的は同じはずだ……」

「怪盗と警察が協力するなんて前代未聞だぞ?」

「だから必要最低限の人数にしたいんです。信用出来る三浦さんや赤木が居るから……」

「直樹君……分かった。我々は我々だけで作戦を立てよう。ただし、警察上層部は機動隊を使って一気に制圧するつもりだ。もしかしたらSATも出てくるかも知れん……それは我々の権限では止められない」


話に大東も加わる。

「つまりあんた達は警察とは別行動を取り僕達に協力すると言う事かい?」

「ん?誰だ君は?」

「……俺はエクスライザー……」

「エクスライザー!?そうか……君も協力してくれるんだな」

「ああ……黒沢を倒す為なら警察とでも探偵とでも協力してやるよ」

「分かった……これは我々だけの極秘の作戦だ。秘密裏に行うぞ」


探偵、警察、怪盗、立場の違うそれぞれが協力すると言う前代未聞の作戦が今、始まろうとしていた。


続く……。

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