第25話「エクスカイザー追放」
テレビのニュースでエクスカイザーの正体が直樹だと言う事を晒され世間にバレてしまった。
「えぇっ!?ウソだろ!?」
気付くと周りの刑事達は直樹の方をじっと見ていた。
しかも、岡本探偵事務所を襲った犯人はエクスカイザーと言う事にされ直樹と関係が無い刑事達には犯人が目の前にいる状況となってしまった。
「直樹君……逃げろ……」
三浦は小声で直樹に伝えた。
「えっ……でも……」
「いいから早く!」
三浦はまた直樹に逃げる様に促した。
「は……はい……」
直樹は少しずつ後退りをする。
「捕まえろー!!」
一人の刑事の指示が飛ぶ。
すると一斉に三浦以外の刑事達が直樹に迫る。
「うっ……うわあぁぁぁぁっ!?」
直樹は急いで逃げ出す。
直樹が警視庁の外へ出ると道を行く人々が直樹に注目する。
そして、皆が直樹を捕まえようと追い掛けて来る。
「何でだー!?」
直樹はまた必死に逃げる。
だが、行く先々で人々に追い掛けられ直樹の体力は限界だった。
「クソッ……黒沢だな……あの野郎〜」
黒沢に対しての怒りが込み上げる。
直樹は何とか追い掛けて来る人々を撒いて細い路地に入り込む。
息が上がり足がガクガクと震える。
「ハァ……ハァ……美紀を……何とか助けねぇと……」
その頃大東は……。
川を流された先の岸にたどり着いていた。
そこを通り掛かった女性が大東を発見。
「人っ!?だ、大丈夫ですか?」
女性は声を掛けながら大東に近付いて行く。
それからしばらくして大東は目を覚ました。
「ん……?ここは……?」
「あっ!気が付いた?」
そこには1人の女性が居た。
「君が俺を助けてくれたのか?俺は何でここに?」
「うん……あなたは川を流されてたの。何があったの?」
そう言って女性はペットボトルの水を差し出した。
「あっ……ありがと……」
大東は水を一口飲んで落ち着くと話始めた。
「ちょっとしたトラブルでね……君は?」
「あっ!自己紹介がまだだったね!私は藤井玲奈(ふじい れな)」
「そうか……ありがとう……」
大東はベッドから出ようとする。
「あっ!まだ寝てなくちゃダメよ」
「悪いが……そんな暇は無いんだ……」
「ねぇ、あなた……黒沢を知ってるの?」
「えっ……?」
いきなりの質問に大東も驚く。
「い、いや?何言ってるのか分からないな」
「あなた……ヴィランキーを持ってたでしょ?あなたを助けた時に見たんだから隠しても無駄だよ?」
「だったら何故助けた?僕が凶悪なヴィランだったらどうする?」
「あなたからは……そんな嫌な感じしなかったから」
「……まったく……変わった娘だな……ヴィランキーを持ってる以上俺は犯罪者である事は変わりない……犯罪者を匿ったら君だって共犯者になるんだぞ?」
「それでも……黒沢の手掛かりになるなら……」
そう言って玲奈は大東の服を強く掴んだ。
「何か訳ありみたいだな……」
そして玲奈は話始めた。
玲奈の父親は黒沢の事を調べていた元刑事だった。
ところがある日自分の事を探っている刑事が居る事に気付いた黒沢は殺し屋を差し向け玲奈の父親を殺害したと言う。
その殺し屋は直ぐに捕まり警察署に連行されたが、連行先の警察署で殺し屋は何も話す事無く拘置所内で自殺。
この事件は迷宮入りとなってしまっていた。
だが、父親の残した資料から黒沢の事を調べあげ黒沢に復讐をする為の準備をしていたと言う。
「君は……刑事なのか?」
「ううん……私は刑事でも探偵でもないただの一般人よ……でも今の私には力がある」
そう言って玲奈は『トルーパーキー』を取り出した。
「それは!?」
「私はこの力で黒沢を倒す……」
「そんな物使っちゃダメだ!」
「え?あなただってヴィランでしょ?そんな事言わないで協力してよ!」
「くっ……確かに俺もキーの力を使って来たよ……だけど、誰もがそんな力を持っちゃイケない……それにそのヴィランの力程度では黒沢は倒せない」
「じゃあどうしたらいいのよ!!」
「君が罪を背負う必要はない……君の気持ちは分かるよ……俺も同じ様な境遇だから……でもだからこそ君にそんな事をさせたくない……俺が必ず黒沢を倒すから!」
「同じ様な境遇?」
「うん……僕も父親を黒沢に殺されてるんだ…」
「そう……だったんだ……」
「黒沢を倒すって約束してくれるならこのキーは捨てる……その代わり私にも手伝わせて!」
「……分かった……」
こうして大東は玲奈と手を組む事になった。
一方、逃げ回っていた直樹は疲れ果て物陰で休んでいた。
だが、いつの間にか直樹を追い掛けていた人々は何処かへ姿を消していた。
「あれ?そういえば随分静かになったな……さっきまであんなに騒がしかったのに……」
直樹がそっと外の様子を見てみるとそこには誰の姿も無かった。
その人達は一体何処へ行ったのか……
それは黒沢グループの本社ビル。
黒沢に洗脳され直樹を追い掛けていた人達は黒沢に集められていた。
そこへ黒沢が三条、六ツ木、土門を引き連れてやって来た。
「皆さん良くお集まり下さいました。私達の街の平和を脅かすエクスカイザーを私達の手でこの街から追放しようではありませんか!」
黒沢の演説に洗脳された多くの人達が賛同。
「では皆さんにその為の力を与えます。今から渡すヴィランキーを受け取って下さい。また既にヴィランキーを持っている人が居たら周りの方々に配って頂き1人でも多くの仲間を増やしましょう」
そしてまた多くの人達が賛同。
三条、六ツ木、土門は手分けをして民衆にヴィランキーを配り始める。
そして受け取った人々は次々にトルーパーヴィランに変身した。
だが、この騒動を警察は見逃さなかった。
パトロール中の警察官が多くのヴィランが集まっているのを発見し警視庁に連絡。
三浦を始めとする刑事達が現場に向かう。
だが、三浦だけは他の刑事達と別れ別行動を取る。
三浦は1人になった所で直樹に連絡する。
スマホが鳴り驚く直樹。
「うをっ!?……なんだ三浦さんか……びっくりさせるなよ……」
ボヤきながら電話に出る。
「もしもし?三浦さん?」
「直樹君、黒沢の本社ビルに多くのヴィランが集まってる!今来るのは危険かも知れないが黒沢を倒して疑いを晴らすチャンスかも知れん!」
「分かった、直ぐに行くよ」
「今何処だ?」
三浦は直樹に居場所を聞き迎えに行く。
その頃、赤木も病室を抜け出していた。
「黒沢め……許さん……」
数分後、直樹は三浦と合流した。
直樹をパトカーに乗せ黒沢の本社ビルに急ぐ三浦。
「大変だったな……」
「ああ……クソッ、黒沢の奴……」
「だが、黒沢を倒すチャンスなのは間違いない。疑いを早く晴らす為にもな……」
「ああ……」
だが、直樹は考えていた。
今のままで本当に黒沢に勝てるのかと……。
昨日の戦いでの黒沢の強さは本物だった。
それに対しエクスカイザーの力は黒沢に触れる事も出来ずに敗北した。
それに恐らくもっと多くのヴィランが待ち構え多勢に無勢だろう。
エクスカイザーにとってはまさにアウェイの戦いになるだろう。
そんな事を考えながらも黒沢の本社ビルに到着する。
直樹がパトカーから降りると民衆が直樹の方を見る。
「黒沢……許さねぇ……」
直樹はゆっくりと黒沢のビルに近付いて行く。
だが、直樹の前に民衆達が立ち塞がった。
「皆……通してくれ!黒沢に用がある!」
だが、誰もその場をどこうとはしない。
そして人々は『トルーパーキー』を構える。
そして次々に変身。
「くっ……やるしか無いのか……」
直樹も『エクスチェンジャー』を取り出す。
直樹はエクスカイザーに変身してトルーパーヴィラン達に立ち向かって行く。
「皆、ごめん!」
エクスカイザーはトルーパーヴィランなぎ倒して行き、黒沢の元を目指す。
「会長、下がっていて下さい。ここは俺が」
そう言って土門はグランドヴィランに変身。
「喰らえ!!」
グランドヴィランは地面を叩き割った。
すると、地面にヒビが入りそれがどんどん広がって行く。
「うわっ!?やべっ!?皆、逃げろー!!」
エクスカイザーは避難を呼び掛けるが誰も言う事を聞かず数体のトルーパーヴィランは地割れの中に落下して行った。
「ああ!?」
仕方なくエクスカイザーはジャンプして地割れを避ける。
「クソッ……あいつ……他のヴィランを巻き込みやがった……」
そして、エクスカイザーが着地した所をウォーターヴィランが水流を浴びせる。
「うわあぁぁぁぁっ!?」
エクスカイザーはそのまま流され黒沢から離れて行く。
「会長、片付きましたよ」
「チッ……手柄を横取りしやがって……」
「まぁ、良いじゃないか。二人共良くやってくれた」
この様子を離れたビルの屋上から見ていた大東と玲奈。
「黒沢め……また派手な事を始めるみたいだな……」
「で、どうするの?」
「正面から行っても勝てない……作戦を練ろう」
エクスカイザーは変身が解除されていた。
「クソッ……黒沢め……」
ウォーターヴィランの水流で直樹はびしょ濡れになっていた。
仕方なく直樹は事務所に戻る事に。
三浦に連絡をして迎えに来て貰う。
パトカーの中で三浦と話している。
「しっかし……派手にやられたな……」
「ああ……」
「さっきな、赤木から連絡があった。」
「赤木から?」
「ああ……アイツ……事態を重く見て病院から抜け出して来たらしい」
「そんな……アイツ、絶対安静なんじゃ?」
「本当はな……だが、黒沢と戦うにはお前達が力を合わせるしかないだろ」
「そう……だな……」
事務所の前で直樹を降ろす。
「じゃあ、今日はしっかり休めよ。じゃあな」
三浦はそう言って走り去って行った。
直樹は事務所に戻ると酷い疲労感に襲われそのままソファで眠ってしまった。
翌日、事務所の窓ガラスが割られその音で目を覚ました。
「うおっ!?」
直樹は飛び起きて見てみると、紙に包まれた石が投げ込まれていた。
「ひでぇな……誰だこんな事するのは……」
そう言いながら石を拾い紙を広げると……。
そこにはエクスカイザーや直樹に対する誹謗中傷の言葉が書かれていた。
「何だ……コレは……?」
直樹が窓の外を見てみるとそこには直樹を追い出そうと集まった人達が抗議運動を行っていた。
「あっ!出てきたぞー!!この街から出ていけ!この偽善者がー!!」
1人の男性を筆頭に抗議隊は直樹を追い出そうと罵声を浴びせる。
「クソッ……黒沢め……」
そこへ赤木がバイクで到着。
警察が抗議隊を抑え、その隙に赤木は事務所に入る。
「工藤、俺や、赤木や!開けてくれ!」
「赤木?ああ、ちょっと待ってろ」
直樹が扉を開けるとそこには赤木が居た。
「大丈夫か?」
「ああ……ここはまずい早く逃げろ!」
「でも何処に?」
「なーに、逃げたり隠れたりは怪盗に任せろ」
そう言って赤木の顔を剥がすと……。
その正体は大東だった。
「大東?何でわざわざ赤木に……?」
「こうでもしないと怪しまれるだろ……さっ、とりあえずここから脱出するぞ」
「ああ……待って、必要な物は持っていく」
「早くしろよ?」
「ああ……」
直樹は荷物をまとめ、大東と一緒にコッソリと事務所を脱出する事に……。
直樹は大東と事務所を離れ何処かへ姿を消して行った……。
これまでヴィランから人々を守って来たエクスカイザーは今度はまるで犯罪者の様に扱われヒーローとしての役割をこのまま終えてしまうのだろうか……?
それは直樹にも分からない……。
ただ今はひたすら走り続ける。
続く……。
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