全人類超人化計画
第20話「赤木の覚悟」
黒沢グループへの調査が決まり直樹と美紀、そして赤木達警察も準備に取り掛かっていた。
そして翌日、『水のキー』を持つ女、三条美奈保が動き出した。
と言っても犯罪を犯す訳では無かった。
彼女自身が経営する宝石店に顔を出していた。
「店長!お帰りなさいませ」
彼女を出迎えたのは吉川明里(よしかわ あかり)(26歳)。
吉川は三条がフランスに行っている間、店を任されていた店長代理を勤める従業員だった。
そして、他の数人の従業員も三条を出迎える。
「吉川さん、私が留守の間ご苦労様……何か変わった事は無かった?」
「大丈夫です!特に大きな問題もなく」
「そう、でも店長代理も大変だったでしょう?来月に入ったら少し休暇を取って良いわよ」
「あっ、ありがとうございます」
そして、三条は店の奥へ行き、パソコンで売り上げをチェックしていた。
「何これ?……ちょっと、吉川さん!」
三条に呼ばれ吉川がやって来る。
「店長、何か?」
「はぁ……何か?じゃ無いわよ!先月よりも売り上げが20%も落ちてるじゃない!どういう事?」
三条は今までとは全く違う厳しい口調で吉川を問い質した。
「それは……申し訳ありません……今月は思った程の売り上げが無くて……」
「そんな事見れば分かるのよ!私が聞きたいのは何でこんなに売り上げが下がってるのか?って事よ!」
「えっと……それは……仕入れ値よりも売り上げの方が低かったからかと……」
「だったら、何でもっと交渉を粘って仕入れ値を安くしなかったのよ?まったく……詰めが甘いんだから……」
「申し訳ありません……」
吉川は頭を下げた。
「まぁ、良いわ……今月はまだあるし……今から安く仕入れて高く売れば良いのよ……」
「えっ?でもどうやって?もう、今月は卸売り業者さんもこれ以上安くは売ってくれないかと……」
「大丈夫……コレを使えば仕入れ値はタダになるから……」
そう言って三条はバッグの中から1本の『ヴィランキー』を取り出した。
「店長……それって……」
「もちろんやってくれるわよね?」
「でも……」
「やってくれるわよね??」
三条は吉川に物凄い剣幕で迫る。
たまらず吉川は『ヴィランキー』に手を伸ばす。
「……はい……」
その頃、赤木は非番で家族のお墓参りに来ていた。
「父さん……皆の仇は必ず取るよ……必ずこの手でファイヤーヴィランを……そして黒沢を逮捕してみせる」
「それは楽しみですねぇ……」
赤木にそう声を掛けて来たのはファイヤーヴィランだった。
「お前は……」
「こちらとしても厄介なあなたをそろそろ消しておきたいと思いまして……」
「戦う気の様だな……丁度良い……今日こそお前と決着を着けてやる!」
「挑む所です……ですが……さすがにご家族のお墓の前で戦うのは気が引けるでしょう……場所を変えましょう」
そして、赤木とファイヤーヴィランは近くの雑木林へ場所を移した。
「行くぞ……」
赤木は『変身』。
ダッシュライザーとなり構える。
ダッシュライザーが攻撃を仕掛ける。
だが、ファイヤーヴィランは火球を投げ攻撃してくる。
ダッシュライザーは攻撃をかわし『ダッシュスナイパー』で攻撃。
しかし、その攻撃も火球に阻まれファイヤーヴィランには届かない。
そして、ダッシュライザーがかわした火球は周りの木々に燃え移り辺りは炎に包まれた。
「しまった!?」
「フンッ……掛かりましたね……これであなたの逃げ道は無くなる」
「クソッ……その為にこの場所を選んだのか……」
「そう言う事です!」
ファイヤーヴィランは更に火球を投げる。
「うわぁぁ!?」
ダッシュライザーは火球の攻撃を喰らいダメージを受ける。
ダッシュライザーは炎に包まれた。
「うわぁぁぁぁっ!?」
「ハッハッハッ!燃えろ燃えろ!燃え尽きてしまえ!」
ダッシュライザーは何とか炎の中から脱出し転がって自身に纏わり付く炎を消した。
「ハァ……ハァ……くっ……クソッ……何故だ……俺は……何故奴に勝てない!!」
変身は解除された。
赤木は全身大火傷の重傷だった。
そんな赤木に近付く1人の男……。
「力が……欲しいか?更なる力が……」
「あっ……あんたは……ああ……欲しい……俺は……奴に勝てる力が欲しい!!」
「分かった……ならば付いて来い……私が……お前に力をやる」
赤木は必死に力を入れ立ち上がる。
赤木は火傷により動く度に激痛が走る。
だが、それでも力を求め赤木はこの男に付いていく。
赤木と男が去ってからファイヤーヴィランは赤木を追って来た。
「おや?取り逃がしましたか……まぁ、良い……奴はいつでも倒せる」
ファイヤーヴィランは変身を解除し、神坂の姿に戻る。
そこへ、神坂のスマホに電話が掛かってきた。
「はい……会長、どうされました?」
黒沢からの電話だった。
「神坂君、そろそろ戻って来てくれ。こちらの準備が整ったから計画を始める」
「かしこまりました直ぐに戻ります」
神坂は黒沢の元へ帰って行く。
直樹と美紀が潜入の準備をしていると誰かが事務所の扉をノックした。
「あっ、お客さん?どうぞ!」
美紀が迎え入れる。
入って来たのは中年の女性だった。
「どうぞ、こちらに!」
美紀が席へ案内する。
「すみません直ぐに片付けますから!」
美紀は広げていた調査資料を急いで片付ける。
「直樹さーん、お客さん!早く来て下さい!!」
「ほーい!」
直樹は奥の部屋から出てきた。
その姿は埃まみれになっていた。
「あちゃ~……もう直樹さん汚い!早く着替えて来て!」
「あ~……はいはい。ごめんなさい少々お待ち下さい」
「はぁ……」
直樹は着替えて来て仕切り直す。
「さて、お待たせしました。本日はどの様なご相談で?」
すると女性はバッグから1枚の写真を取り出した。
「夫の浮気調査をお願いしたいんです」
彼女が口を開きそう言い出した。
(浮気調査って……私がここに来て初めての依頼ね……)
美紀はそう思った。
直樹が詳しく話を聞くと……。
この女性の名前は井上 弘美(いのうえ ひろみ )(45歳)
調査対象の夫は井上 忠(いのうえ ただし)(47歳)
弘美は最近毎晩帰りが遅い忠の浮気を疑っていた。
「もうすぐ……結婚して20年なのに……どうしてこのタイミングで……」
弘美は泣き出してしまった。
「泣かないで下さい。まだそうと決まった訳じゃないですから」
美紀がハンカチを差し出す。
「すみません……ありがとうございます……」
「とにかくご主人の調査をさせて頂きます。ご主人のお勤め先をまずは教えて下さい」
「は……はい……」
弘美は説明を始めた。
夫の忠は宝石の卸売り業の会社で働いている。
その会社の住所を教えて貰い直樹は調査の為の契約書を書いて貰う。
弘美が帰って行ってから直樹はパソコンを確認する。
すると、事務所のホームページから依頼の相談が来ていた。
「あっ……一件依頼来てる……明日相談に来たいってさ」
「立て続けですか……珍しいですね」
「あのな……人を暇人みたいに言うな」
「えへへっ……ごめんなさい……」
「よし、今日はもう時間無いしこの2つの依頼は明日にするか」
「そうですね」
直樹達は明日から浮気調査と新たな相談を受ける事にした。
それから1時間後、神坂は黒沢の元へ戻りエレメントキーを持つ4人が集まっていた。
「やぁ、皆集まったね……では付いて来てくれ」
黒沢会長は4人とMを連れて会社の地下にある秘密の部屋へと案内する。
そこは薄暗く小さな灯りがあるだけの不気味な部屋だった。
「何ここ……このビルにこんな場所があったなんて……」
三条は少し寒気の様な感覚を感じていた。
「ここが君達の持つヴィランキーの始まりの場所だよ」
そう言って黒沢は謎の石盤を皆に見せた。
その石盤には謎の文字が刻まれ黒沢以外には読めなかった。
「これにはこう書いてある……」
黒沢は石盤の文字の意味を説明した。
《悪魔の力をここに封ず……その力を呼び覚ます者、悪魔との契約によりその力を受けとらん》
「私は長い間この石盤について研究した。そして、この石盤に封印されている悪魔の力を元にヴィランキーを開発した。この悪魔を復活させる為には人間の欲望の力が必要だったからね……」
「欲望?」
「そう……人間は誰しも欲望を持っているものさ……しかし、その欲望を満たすには力がいる。その為の力を授けるのがヴィランキーだ。お陰で犯罪者達の欲望を糧に悪魔を復活させるだけのエネルギーが集まった。後は、君達のエレメントキーの力を注ぎ悪魔を呼び出すだけだ」
「なるほど……私達の力はその為に必要だったと言う訳ですか……」
神坂は納得し『炎のキー』を差し出す。
「何が起こるか知らねぇが……会長さんには世話になったからな」
土門も『土のキー』を差し出す。
「面白そうじゃねぇか!やってやる!」
六ツ木も『風のキー』を差し出す。
「いいわ……力を貸してあげる」
三条も『水のキー』を差し出す。
黒沢は石盤に向かって祈る。
「さぁ、悪魔よ!ここに復活し私に力を与えろ!」
4つのキーからエネルギーが放出され石盤に注がれる。
すると、石盤に集まったエネルギーから悪魔の力を宿したキーが作り出される。
「完成した……これが私の追い求めていた力……デビルキー」
黒沢は『デビルキー』を手にする。
「やりましたね、会長」
「ああ……ではこれより全人類超人化計画に移る!ヴィランキーを大量生産するぞ!」
「かしこまりました」
黒沢の目論む計画……全人類超人化計画とは……?
同じ頃、赤木が謎の男によって連れて来られたのは……。
その男の研究室。
「ここは……?」
「私の研究室だよ……」
この男の正体は……。
芝原 京太郎(しばはら きょうたろう)(74歳)
※この人物については(ドライガー×エクスカイザーを参照して下さい)
「芝原さん……俺は奴に勝てる力を得られるのか?」
「ああ……ダッシュライザーの次の段階についても考えていた。そしてそれがようやく完成したんだ」
そう言って芝原は新たなキーを赤木に渡した。
ダッシュライザー、エクスカイザー、エクスライザーの3人のキーとチェンジャーを開発したのは芝原だった。
それは親友だった黒沢を止める為に作り上げた物だった。
「そのキーはブーストキー。ダッシュライザーのスピードとパワーを飛躍的に上げてくれる」
「本当ですか!?」
「ああ、ただし……その力を君自身が使いこなせるかどうかだ……」
「……必ず……使いこなして見せます」
続く……。
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