第16話「姉妹の危機」
『ウィンドキー』の所有者、六ツ木幸平とその悪仲間の俊雄と言う男が春香を誘拐した。
春香と夏海の住むアパートに警察がやって来る。
「三浦さん!」
三浦、山本、赤木が到着した。
「おう、直樹君……ヴィラン絡みの誘拐事件だって?」
「ああ、恐らくな……」
直樹は事情を説明した。
「……なるほどな……じゃあ犯人はヴィランの力を持ったストーカーって可能性が高いって訳か」
「ああ、じゃなけりゃタイミングが良すぎる」
「とにかく一刻も早く春香さんの居場所を突き止めないとな」
そう言って三浦は直樹の肩をポンと叩いた。
部屋の中に犯人に繋がる手掛かりが残ってないか鑑識が調べている。
「警部、コレを見て下さい!」
鑑識の一人が何かを見つけた。
「ん?なんだこりゃ?」
それは虫の羽の様な物だった。
しかし、普通の虫にしては大き過ぎた。
「ちょっと見せてくれ」
直樹がそう言って三浦に見せて貰う。
「……」
直樹はそれを見て確信した。
犯人はコカローチヴィランだと……。
「たった2人で力を合わせて生きてる姉妹を引き裂こうなんて……許せねぇ……」
直樹は強く拳を握った。
その後、直樹は外に出て考え事をしていた。
直樹は自分がファイヤーヴィランに苦戦せず、コカローチヴィランを倒せていればこんな事にはならなかっただろうと悔しい気持ちでいっぱいだった。
「はい」
美紀が直樹に缶コーヒーを差し出す。
「!……美紀……」
「冷えて来たから、温まりますよ」
「ああ……サンキュー」
缶コーヒーを受け取り一口飲む。
「あれ?そういや、俺がこの缶コーヒー好きだって良く知ってたな」
そう美紀が渡したのは直樹が好きな銘柄の缶コーヒーだった。
「フフッ……いつも見てましたから……私、探偵修行の為に観察眼を昔から鍛えてたんです」
「へぇ……さすが、おやっさんの娘だな」
「でも……私はまだまだです……お父さんどころか……直樹さんにも追い付けない」
「え?」
美紀は今朝の夏海からの依頼を断ろうとしていた事をずっと後悔していた。
父の総司は自分を頼って来た依頼人の頼みを決して断らなかった。
その意思は直樹にもしっかりと受け継がれていた。
そう美紀は痛感していた。
「確かに……おやっさんは自分が他の依頼で手一杯の時でも新たに舞い込んで来る依頼を断らなかったな……おやっさんはこの街を心から愛してたからな……」
その頃、春香を拐った2人は、とある廃倉庫で春香を監禁していた。
「へっへっへっ……ここならウチが買い取ったボロ倉庫だから誰も来ないぜ……」
「さっすが幸平さん!金持ちはやる事が違いますね~」
そう、六ツ木幸平は六ツ木財閥と呼ばれる大企業の息子。
素行の悪い所謂ドラ息子だ。
「後はおめぇの好きにしていいぜ……俺はちょっくら暴れて来るからよ」
そう言って幸平は出ていく。
「さぁ~て……幸平さんのお許しも出た事だし……楽しませて貰うとするかなぁ……」
そう不気味に、そして気色悪く俊雄は春香に近付く。
「い……いや~!?」
警察は周辺のパトロールを強化し、春香さんの居場所の特定を急いだ。
直樹も春香の居場所を模索する。
しかし、大した手掛かりは無い。
直樹はじっと考える。
しかし、いくら考えても答えなど出るはずはない。
直樹はまだコカローチヴィランの正体を知らなかったからだ。
ウィンドヴィランは取り戻したキーの力で好き放題に暴れ始めた。
しかも、ウィンドヴィランは春香の捜索に出動している警察も襲い始めた。
「ハッハッハッハッ!やっぱキーの力は最高だぜー!くだらねぇ奴らをぶっ殺してやる!!」
パトロール中の警官隊からヴィランが暴れていると連絡が入り、赤木は現場に急行する。
「ちょっと行って来る……」
「待て、赤木……俺も行く」
赤木は頷く。
直樹と赤木が2人で現場に向かう。
直樹も赤木と共にパトカーに乗り込む。
「行くぞ」
「ああ……」
パトカーのサイレンを鳴らし現場に急ぐ。
その道中、直樹は赤木に話し掛けた。
「なぁ、赤木……あれからファイヤーヴィランの捜索を続けてたんだろ?何か分かった?」
「いや……収穫無しだ……」
「そっか……昼間、奴に襲われた……恐らく、この事件奴が絡んでる」
「何っ!?それは本当か?」
「ああ……しかも、奴は俺からウィンドキーを奪って行った……何の目的か分からんがな……」
「そうか……」
そして、ウィンドヴィランの動向を探る者がもう一人……。
大東もウィンドヴィランを追っていた。
「やれやれ……ウィンドキーが奴の手に戻ったと言うのは本当だった様だな……そして……」
大東は廃倉庫の方に目をやる。
「こっちも……なかなかヤバい事になってそうだ……」
それは春香が監禁されてる倉庫。
そして、直樹と赤木が現場に到着。
「奴か……」
「風の力を持ったヴィラン……まさかアイツが!?」
直樹と赤木は揃って『変身』
エクスカイザーとダッシュライザーが登場。
ダッシュライザーはライフル型の武器『ダッシュスナイパー』を構える。
そして、ウィンドヴィランに向かって撃つ。
「ぐわぁ!?」
見事に命中し、ウィンドヴィランは落下。
「クソッ……何だテメェら!?」
ダッシュライザーはウィンドヴィランに近付き一気に接近戦に持ち込む。
「貴様……炎のヴィランを知ってるんじゃないか?居場所を言え!!」
「はぁ?知らねぇな……」
「とぼけるな!!」
ダッシュライザーはウィンドヴィランを殴り飛ばす。
「ぐぁっ!?」
「おいおい……一人で熱くなんなって」
エクスカイザーも参戦する。
「チッ……うぜぇんだよ!!」
ウィンドヴィランは突風を巻き起こす。
その突風で2人は身動きが取れなくなる。
ウィンドヴィランは更に突風で停めてあったパトカーを2人の方に飛ばす。
「何っ!?」
2人はパトカーを受け止めるが壁とパトカーに間に挟まれ身動きが取れなくなってしまう。
「ぐっ……このままじゃまずいぞ……」
「分かってる……もう一度奴を……撃つ……」
ダッシュライザーは再び『ダッシュスナイパー』を構える。
だが、突風で狙いが定まらない。
「くっ……ダメだ……」
「フッフッフッ……纏めてぶっ殺してやる……」
ウィンドヴィランが2人に迫る。
その時、誰かがウィンドヴィランを銃撃。
「ぐっ!?誰だ!?」
そのお陰で突風も止んだ。
振り向くとそこにはエクスライザーが立っていた。
「あっ!アイツ!」
「そんな突風じゃ、折角の美しい今宵の月も雲に隠れてしまうだろ……」
「アイツ……何をキザな事を……」
エクスカイザーは少々呆れながらもこの状況をチャンスと捉えていた。
「テメェ……こそ泥野郎じゃねぇか!何だ?俺に詫びでも入れに来たのか?」
エクスライザーは『ミラージュキー』を使って数体の分身を作った。
「さぁ?あなたの頭で本物の私を見つけられますかね?」
「クソッ……バカにしやがって……全部纏めてぶっ殺してやるよ!!」
ウィンドヴィランは再び突風をお越し分身を全て消し去った。
だが、そこには本物は居なかった。
「何っ!?」
エクスライザーはエクスカイザー、ダッシュライザーに近寄る。
「ここは私が引き受けよう……この先にある廃倉庫でお嬢さんが囚われてる……あなた達はそっちに急いだ方が良いでしょう?」
「貴様……怪盗が何故我々に協力する?」
ダッシュライザーは警戒している様だ。
「お宝は奪っても命は奪わない……それが私の流儀ですから……」
「フンッ……今回は見逃してやる……だが、次会った時は捕まえるからな」
そう言ってダッシュライザーは廃倉庫に向かう。
「お前……」
「さぁ、あなたも早く行きなよ……探偵さん」
「……ああ!」
ダッシュライザーとエクスカイザーは春香の救出に廃倉庫に向かう。
「なっ!?おい、待てテメェら!?」
ウィンドヴィランが2人を、追おうとする。
「おっと……あなたのお相手は私……ショーを楽しみましょう」
「チッ……ふざけんなキザ野郎ー!!」
ウィンドヴィランがエクスライザーに襲い掛かる。
直樹と赤木は一度変身を解除し、パトカーで廃倉庫に向かった。
エクスライザーとウィンドヴィランは激しい戦いを繰り広げる。
エクスライザーのトリッキーな技に惑わされるウィンドヴィラン。
「チッ……どこだ?」
エクスライザーは背後で拳銃タイプの武器『エクスショット』を構える。
「こっちだ」
その声にウィンドヴィランは振り向く。
すると、エクスライザーは『エクスショット』のトリガーを引いて弾丸を撃つ。
「ぐぁっ!?テメェ……」
至近距離からの攻撃でウィンドヴィランにもかなりのダメージがあった。
「くっ……今日はこの位にしといてやる……だがな!テメェはいつか必ず殺す……覚悟しとけよ!!」
そう捨て台詞を吐きウィンドヴィランは去って行った。
「フンッ……」
エクスライザーも去って行く。
その頃、直樹と赤木は廃倉庫に到着。
「ここか……」
赤木はそう呟きパトカーから降りようとする。
そこで直樹のスマホに電話が入る。
見ると、美紀からの着信だった。
「もしもし?どうした?」
「あっ!直樹さん大変なの!夏海ちゃんが熱を出しちゃって!」
「何っ!?」
「ず~っと、お姉さんを呼んでうなされてるの……」
「そっか……こっちもこれから春香さんを助ける所だ。夏海ちゃんをもう少し頼む」
「はい……」
電話を切ると美紀は夏海の手を強く握った。
「夏海ちゃん……お姉ちゃん、もう直ぐ帰って来るからね……もう少し頑張ってね」
赤木と直樹はパトカーを降りた。
「一刻も早く春香さんを救出するぞ」
「ああ!夏海ちゃんの為にも負けらんねぇ……」
赤木と直樹は廃倉庫に突入。
「おい!そこまでだ!」
そこには俊雄が襲い掛かるのに必死に抵抗していた春香の姿があった。
「ああ?誰だお前?邪魔するな!」
「お前がやってる事は犯罪だ……罪を償って貰うぞ!」
「ふざけるな!お前らこそ、人の恋路を邪魔するな!!」
そう言って俊雄は『コカローチキー』を体に差した。
コカローチヴィランに変身。
「恋路だ?ふざけんな!お前がやってるのは人として最低の行為だぞ!!」
赤木と直樹は再び揃って『変身』
エクスカイザーとダッシュライザーが登場。
「真実を見抜く、正義の眼……エクスカイザー!!」
エクスカイザーとダッシュライザーがコカローチヴィランに挑む。
その頃、美紀は夏海のおでこに冷やしたタオルを置き、看病を続けていた。
「お姉ちゃん……」
「夏海ちゃん……頑張って……」
エクスカイザーとダッシュライザーが連携してコカローチヴィランを追い詰める。
「ちょ…ちょ…お前ら2人掛かりで卑怯だぞ!?」
「性格のひん曲がったお前に言われたくないぜ、このゴキブリ野郎!!」
エクスカイザーの拳がコカローチヴィランの顔面に叩き込まれる。
「ぐっ!?」
エクスカイザーは『EXキー』を取り出し、『エクストラフォーム』にチェンジ。
『エクストラブレード』を手にコカローチヴィランを切り裂く。
必殺技『エクストラブレイク』が発動。
コカローチヴィランは倒された。
変身が解除され俊雄はその場で倒れ込む。
「ハァ……ハァ……クソッ……やっぱこの剣重いわ……」
その後、赤木が俊雄に手錠を掛け無事に逮捕。
そのまま警察に連行されて行った。
「春香さん……事情聴取の為、署までご同行お願いします」
赤木がそう言うが……。
「ちょっと待ってくれ……それは……日を改めてくれないか?」
「何?」
「春香さん、夏海ちゃんが熱を出してるんだ。夏海ちゃんにはお姉さんである君が必要なんだ」
「え?夏海が!?わかりました……あの刑事さん……事情聴取……今度で良いですか?」
「そう言う事なら……ご自宅までお送りします……パトカーに乗って下さい」
そうして、赤木、直樹、春香の3人はパトカーでアパートまで帰る。
アパートでは夏海と美紀が待っていた。
「春香さん!良かった……」
「あの……夏海の事、ありがとうございました」
「夏海ちゃん、ずっとお姉さんの事呼んでましたよ……今お薬が効いて来て寝ちゃってるけど……」
「良かった……あっ、あの……探偵さん……」
「はい?」
「依頼料は必ずお支払いします……でも、少し待って頂けないでしょうか?しばらくバイトもしてなかったので収入が……」
「大丈夫ですよ……依頼料はあなた達姉妹の笑顔で十分です……夏海ちゃんが元気になったら一度事務所の方に遊びに来て下さい」
そう言って直樹は帽子を深く被り直した。
「美紀……行くぞ」
「はい!」
直樹と美紀は帰って行った。
「直樹さん……カッコつけすぎです!」
「そうか?」
そんな会話をしながら直樹と美紀は帰って行く……。
続く……。
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