エレメントキー集結

第14話「赤木の過去」

ピエロヴィランの虐殺事件から一週間が経ったある日、警察の捜査も被疑者死亡により打ち切りとなった。


虐殺事件の翌日には直樹達は依頼人の尾崎さんに父親尾崎信也さんの死亡により調査終了の報告をした。

ピエロヴィランによってこれまで殺害された人々を含め、いくつかの事件に関わって来た直樹達にとっては後味の悪い事件となってしまった。


季節は11月に入り本格的に寒くなってきた頃、三浦、山本、赤木は捜査協力のお礼として直樹と美紀を食事に招待していた。


山本もピエロヴィランから助けて貰った借りがある為、今日は直樹とケンカはしていない。


「どうだ?たまにはオシャレなレストランで食事ってのも悪くないだろう」

三浦が得意気にドヤ顔で言う。

「ああ……そうだな……三浦さん達の奢りってなら尚更……」

直樹はステーキをナイフで切りながら言う。

「てゆーか……あんな事件があった後に良くお肉なんて食べられますね……」

美紀はあまり食が進んで無かった。

「刑事やってるとな……ああ言う事件に何度も遭遇する事もあるから……いつのまにか、慣れちまうもんだよ……」

三浦はそう言いながら赤ワインを口に運ぶ。

「ところで……工藤、あの事はちゃんと話してるのか?」

「ん?ああ、ちゃんと俺がエクスカイザーだって事を三浦さんにも話したよ……な?」

「ああ、聞いた時は驚いたがな……直樹君なら納得だ……」

「それは、ここに居るメンバーだけの秘密って事で……」

「わかってるよ……よし、じゃあその秘密を誓い合って仲間としてもう一度乾杯と行くか!」

三浦がそう言うと皆グラスを持ち構えた。

カンパーイ!!

彼らは久しぶりの楽しい時間を共に過ごした。


会計を終え、店から出た所で5人は解散した。


赤木は酒を飲んでいなかった為、バイクに乗って帰る。

赤木は警視庁からそう遠くないマンションに住んでいた。

部屋に入り明かりを点けるとリビングに飾ってある写真を手に取った。

「皆……ただいま」

それは赤木の家族の写真だった。

赤木は家族の写真に向かって挨拶をするのが日課だった。

「父さん……この前、炎のヴィランに遭遇したよ……必ず捕まえるから待ってて……」

そう言って赤木は写真を置いた。


その頃、黒沢会長とMが密会をしていた。

「ジョーカーの事は……残念だったね……」

「仕方ありません……あのまま警察に引き渡す訳には行きませんでしたから……」

そんな話をしながらポーカーをやっている。

「私はそろそろ例の計画を始動させようと思う。君にも協力して貰うよ?」

「ええ……もちろん……私は犯罪コーディネーターですから……」

「今回は大掛かりは計画だからね……億の金が動く……君には5000万の報酬でどうだろう?Aのフォーカード」

「そうですね……その額なら文句はありませんが……この勝負は私の勝ちです……ロイヤルストレートフラッシュ」

「なっ!?あちゃー……君強いな……」

ポーカーの勝負はMが勝った。

「ところで……神坂(かみさか)君……一つ仕事を頼まれてくれないか?」

黒沢は秘書の神坂に声を掛ける。

「ええ、もちろん……どんな仕事ですか?」

「エレメントキーを持つ人物を集めてここに連れて来て欲しい……」

「承知しました……しかし……風のエレメントキーはエクスカイザーの手に……」

「そうだな……エクスカイザーは消して構わん……キーだけ奪って来るんだ」

「では、その様に……」


翌日、神坂は早速行動に出た。


直樹が車で事務所に向かっている途中ファイヤーヴィランが強襲した。

「うわっ!?」

直樹の目の前にいきなり炎が現れ直樹はそれを避ける為にハンドルを切った。

直樹の車は電柱に激突。

「あー!!まだローン残ってるのにー!?このヤロー!!」

直樹は車を降りる。

だが、辺りを見回しても誰も居ない。

すると、後ろから殴られた。

「ぐあっ!?」

直樹が振り返るとそこにはファイヤーヴィランが居た。

「テメェ……直接俺が狙いか……」

直樹は『エクスチェンジャー』を取り出す。

「変身!!」

エクスカイザー登場。

「真実を見抜く正義の……」

だが、ファイヤーヴィランは問答無用で襲って来る。

「うわっ!?コノッ!お約束無視かー!!」

ファイヤーヴィランはエクスカイザーに容赦なく攻撃を続ける。

エクスカイザーも応戦する。

「クソッ……何なんだよ……コイツ……」

エクスカイザーが戦っていると、そこに赤木もバイクで到着。

「ファイヤーヴィランだと!?」

赤木はバイクを降り走り出す。

「変身!!」

ダッシュライザー登場。

ファイヤーヴィランに攻撃を仕掛ける。

ファイヤーヴィランをエクスカイザーから引き離すと怒涛の攻撃を仕掛けた。

パンチを何発も何発を入れファイヤーヴィランに襲い掛かる。


しかし、ファイヤーヴィランは火炎放射で反撃。

ダッシュライザーは退けられる。

「くっ……コノ!!」

今日のダッシュライザーは明らかに冷静さを失っていた。

ダッシュライザーは再びファイヤーヴィランに向かうがまた火炎放射攻撃にやられる。

「おい!赤木!落ち着け、どうしたんだよ!?」

「貴様と遊んでる暇はない……」

ファイヤーヴィランはそう言い残し去って行った。

「クソッ!ふざけやがって!!」

「どうしたんだよ?一体……」


その後、直樹と赤木は近くの公園に居た。

「ホラよ……」

直樹が赤木に缶コーヒーを持ってきた。

「すまん……車はどうした?」

赤木が缶コーヒーを受け取って言った。

「ああ、レッカーして貰って修理に出したよ……しっかし……保険があるけど、足が無いのは痛いな……」

「そうか……」

「お前こそ、どうしたんだよ?いつものお前らしくないぞ?」

「お前には関係ない……」

「あのな……そんな事言って距離取ってちゃわかんないだろ!」

「うるさい……」

赤木は不機嫌そうに行ってしまった。

「ったく……」

だが、気になった直樹は美紀を連れ警視庁に行ってみる事に……。

三浦達なら何か知ってるかも知れないと思ったのだ。


その頃、赤木は単独でファイヤーヴィランを追っていた。

(奴め……どこに行った?)

ファイヤーヴィランを追ってバイクを走らせる赤木。


直樹達は警視庁に到着し、三浦を待っていた。

「直樹君、どうしたんだ?今日は……」

三浦と山本がやって来た。

「探偵、また何か調査か?」

「いや……そうじゃなくて……赤木の事を聞きたくてな……」


赤木はファイヤーヴィランを探し続けるがどこにも居ない。

(クソッ……どこにも居ない……)


その頃、神坂はある人物と会っていた。

「探しましたよ……土門さん」

「君が神坂君か……黒沢会長の秘書だと言う……」

この男の名は土門恭介(どもん きょうすけ)(37歳)

「ええ……一緒に来て貰いたいのですが……」

「俺の持つ土のキーが必要なんだろ?あの会長が何を考えてるか知らんが……俺も借りがあるからな……協力するとしよう」

そう言って土門は神坂と共に黒沢の元へ向かう事に。


直樹はその頃、先程の戦いでの事を三浦に説明していた。

「そうか……まぁ、無理も無いかもな……」

そう言って三浦は直樹達に赤木の過去を話始めた―

今から15年前、当時小学生だった赤木竜一は両親と妹の4人で大阪の一軒家で暮らしていた。

竜一の父親も刑事で、この頃から竜一は父親の仕事に憧れていた。

刑事である父親は家に帰って来ない日も度々あったが、家に居る時は竜一や妹の千春と良く遊んでくれる良き父親だった。


だが、そんな幸せな家族に悲劇が起こるのは突然だった。

父親がある事件で追っていたある組織……。

その手先であるとされる何者かが、突然竜一達家族に襲い掛かり家に放火した。

その犯人は「炎の怪物」だと父親が言い残し竜一を脱出させてから命を落とした。

この火災で他に母親と妹も亡くなった。

だから竜一は警察官になってからずっと父親が残した炎の怪物と言うヒントを元に犯人の情報収集を行っていた。


そして、現在……。

「と言う訳だ……」

三浦が直樹達に話終えた。

「赤木の過去にそんな事が……」

「家族を皆殺されちゃうなんて辛かったよね……」

直樹も美紀も赤木に同情していた。


赤木は相変わらずファイヤーヴィランの行方を追っていた。

だが、手掛かりの無いまま探すのは困難だった。

赤木がバイクを止め自販機に立ち寄った。

「え~っと……」

一休みしようと赤木はコーヒーを選ぶ。


だが、そこへ火球が飛んで来た。

「うわっ!?」

火球は爆発し、赤木を巻き込んだ。

「変身!!」

咄嗟に赤木はダッシュライザーに変身し窮地を脱した。


爆炎の中からダッシュライザーが出てくる。

「クソッ……どこだ?」

ダッシュライザーは辺りを見回す。


「フッフッフッ……テメェ、サツか?だったら死んで貰うぜ?」

ダッシュライザーの前に現れたのはファイヤーヴィランともう1体の別のヴィランだった。

「何だ……お前は……?」


もう1体のヴィランは黒と茶色の体色をしたグランドヴィラン。

グランドヴィランはダッシュライザーに襲い掛かる。

グランドヴィランは強引な力技でダッシュライザーを捩じ伏せる。

グランドヴィランはダッシュライザーを投げ飛ばす。

ダッシュライザーは近くに停めてあった車に激突し、ダメージを受ける。

「ぐぁっ!?……くっ……コイツ……何なんだ……」

「今日はその辺にしておけ……我々の目的は別にある」

そうファイヤーヴィランがグランドヴィランに声を掛ける。

「チッ……まぁいいか……」

グランドヴィランは物足りない様子だったが、ファイヤーヴィランと共に去って行く。


「待て……くっ……」

ダッシュライザーは気を失った。


その後、通報を受けた警察が駆け付けた。

「赤木!?」

三浦と山本が赤木に駆け寄る。

「おい!しっかりしろ!赤木!」

三浦は必死に声を掛ける。

その呼び掛けに赤木は目を覚ました。

「あっ……三浦さん……」

「大丈夫か?何があった?」

「……ファイヤーヴィランに……襲われて……それと、もう1体……」

赤木は何とか自力で立ち上がりバイクの方に歩きだす。

「おい……赤木……」

「奴を……探さなくちゃ……」

そう言って赤木は再びバイクを走らせる。


その頃、ファイヤーヴィランはグランドヴィランを黒沢会長の元へ連れて来て居た。

2人は変身を解除。

神坂と土門の姿に戻った。

「やぁ、良く来てくれたね、土門君……」

「ええ、あなたには借りがありますからね……」

「それじゃあ、神坂君、引き続き頼むよ」

「かしこまりました」

神坂は再び残りのエレメントキーを持つ人物の元へ出発。


「で、俺達はどうしたらいいんすか?」

土門が尋ねる。

「そろそろ始めても良い頃だと思ってね……全人類超人化計画を……」

黒沢の狙う全人類超人化計画とは一体……。


続く……。

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