第13話「ジョーカーの最期」

直樹はジョーカーから美紀と山本を助ける為、体の痛みに耐え必死に走っていた。


日没までもう時間がない、直樹は間に合うのか……。


ジョーカーが指定したのは古びた廃工場……。

殺風景な所だが、決戦には相応しい場所なのかも知れない。


「さて……そろそろタイムリミットだ……おい!2人共起きろ!!」

ジョーカーは美紀と山本を宙吊りにしているロープを揺らし気を失っている2人を起こした。

「うおぉぉ!?何だ!?」

山本は目を覚まし今の状況に驚いた。

「何っ何っ何っ!?どうなってんの?」

美紀も目を覚ましパニック状態だ。

そんな2人にジョーカーが語り掛ける。

「お前達はこれから始まるショーの観客であり出演者でもある……これからエクスカイザーがやってきてお前達を救えるかどうかのなぁ……」


「何だって!?てか、誰なんだお前!こんな事してタダではすまないがぞ!」

山本は威勢良くジョーカーを威嚇する。

「フッフッフッ……あまり暴れない方が良いと思うがねぇ……」

「なんだと!?」

「下を見てみろ」

ジョーカーに言われ足元を見てみると……。


大きな鉄の容器の中で液体が泡をボコボコと立てていた。

「これは……」

「硫酸さ……その中に落ちればお前達の体は骨まで溶ける……」

ジョーカーはニヤニヤと不気味に笑いながら言った。

「硫酸だと!?ふざけんな!!下ろせ!!」

「ああ……いいよ……」

ジョーカーは近くにあるレバーに手を掛け操作すると……。

2人を吊るしていたクレーンが下がり硫酸に近付く。

「うわぁぁぁ!?や……やめろ!!」

山本はパニックになっていた。

「山本さん揺らさないで!!落ちる!!」

美紀もパニックになっていた。

「ハッハッハッハッ!……楽しいねぇ~……その悲鳴をもっと聞かせてくれよ……愉快愉快……」

ジョーカーはまた不気味に笑いながら言った。


「クソッ……ふざけんな……」

(誰か……助けて……)

美紀は心の中でそう願った。


日没まであと数分に迫っていた。

空は暗くなりもう時間が無い。

直樹は息を切らせながら、そして痛みに耐えながらジョーカーが指定した場所へ急いでいた。

(頼む……間に合ってくれ……)


そして、遂に直樹が到着。

「ジョーカー!2人を放せ!!」

「直樹さん!!」

「探偵!」

「ほぉ……ようやく来たな……探偵……」

だが、もう既に直樹はボロボロで限界だった。

「探偵……随分ボロボロだな」

「ああ……誰かさんのお陰でな……」

「探偵!早く助けてくれ!このままじゃ俺達硫酸に落とされちまう!!」

「何っ!?硫酸だと!?」

「そうだよ?君を招く為に最高のショーを用意した……君は彼らの命を救えるかな?」

「お前……とことん腐ってるな……許さねぇ!!」

直樹は『エクスキー』を取り出す。

「さぁ、決着と行こうか……」

ジョーカーも『ピエロキー』を取り出す。

ジョーカーは体に『ピエロキー』を差しピエロヴィランに変身。

「変身!!」

直樹も『エクスキー』を『エクスチャレンジャー』に差し変身。

エクスカイザー登場。


「探偵……」

「直樹さんが……エクスカイザー!?」

山本と美紀は初めて直樹の変身を目の当たりにした。


「真実を見抜く正義の眼……エクスカイザー!!」

「さぁ……楽しもう……戦いを!!」

ピエロヴィランが襲いかかって来る。

エクスカイザーがそれを迎え撃つ。


ピエロヴィランは両手にナイフを持ち接近戦に持ち込む。

エクスカイザーはピエロヴィランのナイフを避けながら反撃する。

エクスカイザーのパンチがピエロヴィランの顔面にクリーンヒットしピエロヴィランは吹っ飛ぶ。

「ぐっ……貴様……」

ピエロヴィランはフラフラしながらも立ち上がる。

そして、ナイフを投げた。


だが、そのナイフはエクスカイザーではなく美紀と山本に向かう。

「何っ!?」

エクスカイザーが振り返るがナイフは2人が吊られてる縄を切り裂く。


美紀と山本は硫酸の中へ落下……。


だが、寸前の所でダッシュライザーが到着し2人を救出した。


「あっぶねぇ……」

エクスカイザーも流石にヒヤッとした。


「赤木さん!?」

山本はダッシュライザーを見て安堵の表情を浮かべながら言った。

「あ……ありがとう……助かった……」

美紀もダッシュライザーを見てホッとした様子で微笑んだ。


「くっ……おのれ~……」

ピエロヴィランは思い通りに行かずイライラしながらダッシュライザーを睨み付けた。


「助かったぜ赤木……礼を言う」

そうエクスカイザーが言うとダッシュライザーは2人を床に寝かせ立ち上がった。

「探偵……ソイツは危険過ぎる……下がってろ」

ダッシュライザーはそう言ってピエロヴィランに歩み寄る。

「へっ……冗談だろ?俺がコイツと戦ってたんだぜ……」

そう言いながらエクスカイザーもダッシュライザーも並び立って構える。


「チッ……流石に2人がかりでは分が悪い……」

ピエロヴィランはそう言って逃走を図る。

「逃がすか!!」

2人が追う。

ピエロヴィランはボールを投げる。

するとボールが破裂し黒い煙が立ち込める。

「うわぁっ!?煙幕!?」

「チッ……古い手を……」


煙幕が晴れるとそこにはもうピエロヴィランの姿は無かった。

「クソッ……逃がしたか……」

エクスカイザーは悔しそうに地面を踏み締める。


その後一応山本と美紀は病院に搬送された。


2人が手当てを受けてる間、直樹と赤木が待合室で話していた。

「工藤……お前、あのヴィランをどこまで知ってる?」

「俺も正直知ってるって程じゃ……前に受けた依頼の調査の途中で偶然遭遇したって言うか……」

「そうか……奴は恐らくこれまで何度も残忍な犯行を繰り返してる……これ以上奴の好きにさせる訳にはいかん!」

そう言いながら赤木は壁を殴った。

赤木は警察官としてジョーカーの犯行を止められない自分に苛立っていた。


そして、その悔しい想いは直樹も同じだった。

「俺はこのまま奴の捜査に戻る……2人を頼めるか?」

赤木は直樹に尋ねた。

「ああ」

直樹も了承し、赤木は捜査に戻って行った。


それからしばらくして山本と美紀は手当てを終えて出てきた。

「あっ……大丈夫か?」

「直樹さん……うん……」

「探偵……」

2人はどうやら軽い怪我だけで済んだ様だ。

「大丈夫みたいだな……じゃあ帰ろうぜ」

「うん……」

「赤木さんは?」

「捜査に戻ったぜ?まだジョーカー……ピエロヴィランがうろついてるかも知れないからな……」

「そっか……よし、俺も本庁に戻って報告する」

「そうか……あっ!山本……俺の事は……」

「わかってる……命の恩人の事を悪く言うつもりはない」

そう言って山本は帰って行った。


直樹と美紀も事務所に戻った。

「クソッ……ジョーカーのお陰で依頼の調査が進まないぜ……」

「一応、尾崎信也さんの行き付けの居酒屋まではわかったんだけど……」

「まぁ、仕方ねぇ……明日から仕切り直しだ」

「そうですね……でも、直樹さんは怪我大丈夫何ですか?」

「ああ……まぁ、痛いなんて言ってられないしな」

そう言って直樹はリモコンを取りテレビを点けた。

テレビでは夜のニュースが流れていた。

女性キャスターが次のニュースを読むと2人は驚愕した。

尾崎信也さんが遺体で発見されたとニュースが流れた。

「ウソだろ!?」

しかもその現場は先程、ジョーカーと戦った廃工場のすぐ側だった。

「近くに居たんだ……」

尾崎信也さんの殺害の手口もジョーカーと同じでナイフで体中を複数回刺された物だった。

警察もピエロヴィランの犯行だと発表し、周囲に警戒を呼び掛けていた。

「クソッ!あのヤロー許せねぇ!!」

直樹は怒りを露にしてデスクを拳で叩いた。

直樹の拳からは血が出ていた。

「ちょっと直樹さん!?落ち着いて下さい!今救急箱持って来ますから!」

美紀は救急箱を取りに行った。


「悔しかったらその怒りを力に変えろ」

その声を聞き、直樹が振り返った先には……。


扉の前に謎の男が立っていた。

その男は帽子、サングラス、マスクで顔を隠しスーツを着たいかにも怪しげな男だった。

「あんたは?」


「名乗る程の者ではないが……岡本総司の旧友とでも言っておこう」

そう男は答えた。

「おやっさんの?」


そこに美紀が救急箱を持って戻って来た。

「あったあった!直樹さんおまたせ……あっ、お客さん?」


「総司の娘か……随分大きくなったな……」

「え?お父さんを知ってる……人?」

「あんた、一体何者なんだ?」

「俺は総司の弟子に総司から頼まれていた物を届けに来ただけだ」

「おやっさんから頼まれていた物?」


そう言って男は銀色のアッシュケースをデスクの上に置いた。

男がアタッシュケースを開けるとそこに入っていたのは……。


「こ……これは?」

「総司が君の……エクスカイザーの為に用意していた強化アイテムだ」

そこに入っていた物は柄の部分に《EX》と型どられた金色のキーと同じく金色の謎の機械だった。

その名は『エクストラキー』と『エクストラチェンジャー』エクスカイザーをパワーアップさせる為のアイテム。


その時、テレビにニュース速報が流れた。

ピエロヴィランが再び現れ堂々と人々を襲い虐殺を行っていると言うニュースだった。


「タイムリーだ……早速この力を使って見るといい」

そう言って男は帰って行った。

「あっ、ちょっと!あんた結局何者!?」

だが、男はそのまま黙って帰って行った。


美紀が直樹に近付いて言う。

「直樹さん……」

「今は……奴を止めるのが先だな……」


直樹は出発。

車に乗り込み現場に向かう。


ピエロヴィランは通り魔的な犯行で人々を襲い続けていた。

「ハーハッハッハッ!いや~楽しいねぇ~ストレス発散には持ってこいだ!!」


現場に赤木が到着。

「奴め……まさかこんな行動に出るとは……」

赤木はダッシュライザーに変身し、ピエロヴィランに挑む。


「ダッシュライザーか……まずはお前を殺す!!」

ダッシュライザーとピエロヴィランが激しい戦闘を繰り広げる。


その様子を離れた場所からMが見ている。

「やれやれ……奴のリミッターが外れてしまったようですね……黒沢会長に報告を……」

Mは黒沢に電話を掛ける。


ダッシュライザーは『ダッシュブレード』を手にピエロヴィランに対抗。

ピエロヴィランのナイフ攻撃を避けつつ反撃のチャンスを狙っていた。

しかし、ピエロヴィランは隠し持っていた煙幕玉を破裂させダッシュライザーの視界を奪う。

「うわっ!?」

その隙にナイフがダッシュライザーを襲う。

「ぐあっ!?」

ダッシュライザーはダメージを受けその場に倒れた。

「くっ……」

そして、煙幕の中から数本のナイフが飛んで来る。

それは対応に当たっていた警察官達に向かう。

「まずい!」

ダッシュライザーは咄嗟に身を挺して警察官達の盾になりナイフの集中攻撃を受けた。

「ぐあっ!?」

そして、ダッシュライザーは倒れた。


現場に直樹が到着。

車から降り早速『エクスチェンジャー』を取り出す。

「変身!!」

エクスカイザー登場。

ピエロヴィランの前に立つ。

「ハハッ……ようやく来たか……エクスカイザー」

「うっ……くっ……工藤……」

エクスカイザーは『エクストラチェンジャー』を左腕に装着しそこに『エクストラキー』を差して回した。

するとエクスカイザーは黄金のアーマーを装備し、そのアーマーの背中からは黄金のマントが伸びる。

更に右手には銀の刀身に金の刃が施された大剣『エクストラブレード』が現れた。

エクスカイザーEX(エクストラ)フォームが誕生した。

「真実を見抜く正義の眼、エクスカイザー!!」

「なっ……何だ……?その姿は……」

ピエロヴィランも驚きを隠せない。

「ジョーカー……覚悟しろ……」

エクスカイザーはゆっくりとピエロヴィランに歩み寄る。

「フッ……面白い……殺しを楽しませろー!!」

ピエロヴィランは両手にナイフを持ち攻撃を仕掛けて来る。

エクスカイザーは『エクストラブレード』を横に振り横一文字にピエロヴィランを切り裂く。

「重っ!?」

ピエロヴィランを切り裂いた『エクストラブレード』は地面に突き刺さり地面にヒビを入れた。

エクスカイザーが扱いに苦労する程の重さのある大剣。しかし、その一撃はピエロヴィランを倒すには十分だった。

「くっ……クソッ……」

ピエロヴィランは倒れ変身が解除された。

ピエロヴィランキーは折れるどころか大破していた。

「何て威力だ……」

ダッシュライザーもその威力に驚いていた。


その後、ジョーカーは赤木に手錠をかけられ警察に連行される。

だが、何処からともなく現れた炎がジョーカーに命中。

現場は騒然となった。

「うわぁぁぁぁ!?」

ジョーカーはその場で炎に焼き尽くされ絶命した。

「こっ……これは!?」

赤木と直樹は辺りを見回した。

すると赤木がファイヤーヴィランを発見した。

「くっ……アイツか……」

「口封じか……」

赤木と直樹が急いでファイヤーヴィランを追ったがそこにはもうファイヤーヴィランの姿は無かった。

「やはり奴は……組織の幹部クラスの様だな……」

赤木はそう推測する。


そして、ファイヤーヴィランとMが合流していた。

「ご苦労様でした……これで警察に我々の情報が漏れる事はないでしょう」

「フンッ……大した事じゃない」

ファイヤーヴィランは変身を解除した。

その正体は何者なのか?


続く……。

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