第12話「ジョーカーの殺人ゲーム」

激しい雨の夜、警察は現場検証を行っていた。


三浦がパトカーで到着。

「いや~酷い雨だな……遅れてすまん……」

「三浦さん……娘さんの結婚式は?」

山本が心配そうに尋ねる。

「ああ、何とか終わったよ今頃旦那と新婚旅行行きの飛行機の中だな……」

「そうですか……」

「で、状況は?」

「被害者は免許証から、今村俊夫(いまむら としお)45歳……この近くの会社の社員で仕事終わりに帰宅していた所を何者かに襲われナイフの様な鋭利な刃物で体中をメッタ刺しにされ死亡……」

赤木が三浦達に近付いて来て説明する。

「ナイフでメッタ刺し?何処かで似たような手口が……」

三浦はその手口を思い出そうと考える。

「ピエロヴィラン……以前現れた殺人鬼と同じ手口です……」

赤木がそう報告。

「そうか!赤木が来る前の事件なのに良く知ってたな!」

「署の管内の事件は全て頭に入れてます」

「さっすが若手のエリート……」

そのまま現場検証は進んだ。


翌日、直樹はこの事件をニューステレビで見て知った。

「ジョーカー……奴がまた……」

そこに美紀が入って来た。

「おはようございま……あっ……この事件……」

テレビのニュースに美紀も気付く。

「よう……おはよ……」

「あっ……おはようございます……この事件ってまさかアイツが?」

「ああ……警察もそう見立ててるみたいだが、手口からして間違いないだろうな……」


その時、今日も誰かが事務所のドアを叩いた。

「はーい?どうぞ……」

美紀が返事をする。

入って来たのは若い女性だった。

早速話を聞く直樹……。


今回の依頼人は尾崎 遥(おざき はるか)さん24歳。

依頼内容は行方不明になった父親を探して欲しいと言う物だった。

父親の名前は尾崎 信也(おざき しんや)52歳。

都内に会社に勤める会社員で一昨日の夜会社の同僚達との飲み会の帰り帰って来ず、連絡も付かないと言う。

昨日の朝警察に捜索願いを出したが、不安になり今日この事務所に来たと言う。

(また人探しか……本当にこの事務所人探しの依頼多いな……)

美紀は心の中でそう思った。

「わかりました。ではお父様の事を詳しくお聞かせ下さい」

直樹は更に詳しく、父親の事を聞いた。


その後、直樹と美紀は早速行動を開始。

まずは信也さんの会社に向かった。

その会社は中島商事と言う中小企業だった。

会社に着くとそこには三浦や赤木が居た。

「あれ?三浦さん?赤木も……」

「俺も居るわ!!」

山本が出てきて絡んで来た。

「直樹君?何で君達がここに?」

三浦が尋ねる。

「まさかもう昨日の事件を嗅ぎ付けて来たのか!?」

山本がまた絡んで来る。

「昨日の事件?」

「ああ、ピエロヴィランが現れたかもって事件だ」

「ああ……ニュースでやってた……まさかこの会社?」

「被害者が勤めてた会社だ。被害者の話を聞こうと思ってな」

「俺達が依頼を受けた行方不明者の会社もここなんだ」


直樹と美紀は信也の居た営業部へ話を聞きに行く。

三浦達は今村の居た商品企画部へ話を聞きに行く。


直樹が話を聞いた営業部第二課の竹田課長によると、信也は仕事に真面目で遅刻や欠勤をしたことが無く、後輩達の面倒見が良い為誰からも慕われていたと言う。

だからこそ、2日も会社に来ない事を不思議に思っていた。

一昨日信也と一緒に飲んでいた若い社員達にも話を聞くと、特に変わった様子は無かったと言う。

そして、誰も信也の行き先を知らないと言う。

信也の失踪の謎は深まるばかりだ。


話を聞き終え直樹達は一昨日信也達が飲んでいたと言う居酒屋に向かう。


その頃、三浦達も話を聞いていた。

殺害された今村さんはあまり仕事も出来ず同僚達からも正直嫌われて居た為、いつも一人で帰っていてあまり情報を得られなかった。

「ん~……会社の同僚からの評価は良くは無かったが……だからと言って恨みを買う程ではないよなぁ……」

三浦達は頭を抱えていた。

三浦達は今度は今村さんの家族からの情報で今村さんが良く行っていたと言う居酒屋に向かう事にした。


直樹達が車で居酒屋に向かっている途中、目の前にピエロヴィランが現れた。

「うわっ!?」

直樹は、急ブレーキを踏む。

「危なっ!?も~……あっ……アイツ……」

美紀はピエロヴィランに気づいた。

「美紀、車を降りて逃げろ……」

「え?」

「いいから早く!!」

「はっ、はい……」

美紀は車を降りて走って逃げる。

直樹は車を降りてピエロヴィランの前に立つ。

「ジョーカー……」

「また、俺の事を嗅ぎ回ってる様だな……目障りだから殺しておくよ……」

「上等だ……お前を倒して警察に突き出してやる!」

直樹は『エクスチェンジャー』をポケットから取り出す。

そのまま『エクスキー』を取り出し腰に当てる。

「変身!」

直樹はエクスカイザーに変身した。

ピエロヴィランはナイフを2本構える。

「さぁ、折角だ……僕の殺人ゲームを盛り上げてくれ!!」

「ゲームだと!?ふざけんな!!」

エクスカイザーはピエロヴィランに殴り掛かる。

だが、ピエロヴィランはナイフを投げつけて攻撃してくる。

エクスカイザーはナイフを弾き飛ばす。

しかし、ピエロヴィランはジャンプし上から巨大な鎌で狙っていた。

「死ねっー!!」

エクスカイザーはその攻撃を喰らってしまう。

「ぐわぁぁぁ!?」

ダメージを受け倒れ込んだエクスカイザーにピエロヴィランが迫る……。

じわり……じわりと近付いて来る……。


その頃、美紀はパトカーを見つけ助けを求める。

パトカーに乗っていたのは三浦と山本だった。

「美紀ちゃん!?どうした!?」

「三浦さん!直樹さんがピエロヴィランに……」

「何だって!?山本、赤木は?」

「先に居酒屋に向かってるはずです」

「直ぐに連絡して来て貰え」

「はい!」

山本は赤木に連絡する。

その間に三浦が運転を代わり現場に急ぐ。

「美紀ちゃん後ろに乗りなさい。案内してくれ!」

「はい!」

美紀はパトカーの後部座席に乗り三浦達を現場に案内する。


サイレンの音が響き渡り街を疾走する。


三浦達が現場に到着すると、直樹が倒れていた。

「直樹君!?」

3人は直樹に駆け寄る。


美紀は直樹に呼び掛け、三浦と山本は拳銃を構え辺りを警戒。

直樹は血まみれだったが、多少意識はあった。

「もう……奴は……いな……い……」

そう言い残して直樹は意識を失った。

「直樹さん!直樹さん!!」


そこへ赤木が到着。

「大丈夫ですか?」

「あっ、赤木……直樹が重傷だ!」

「とにかく病院へ運びましょう」

赤木と三浦が直樹を抱えてパトカーに乗せる。

そして、山本と美紀が直樹を病院へ連れていく。

赤木と三浦は周辺でピエロヴィランの捜索を続けた。

しかし、近くには見つけられず、警察組織全体で大規模は捜索が行われる事となった。


その頃直樹は病院に到着し、担架で運ばれた。

直樹の側で山本と美紀が必死に呼び掛ける。

「おい探偵!死ぬなよ!喧嘩相手が居なくなっちまうからな!」

「直樹さん!しっかり!絶対戻って来てね!」

直樹は救急救命室へ入って行った。


それを見送る美紀と山本。

「さて……俺は三浦さん達と合流するけど……美紀さんはどうする?」

「私は……直樹さんが受けた依頼があるのでその調査を続けます」

「わかった……あっ、まだ近くにヴィランが居るかも知れないから気を付けて」

そう言って山本は帰って行った。

「よし……直樹さんの分も私が頑張らないと!」

美紀も直樹の依頼を引き継ぎ居酒屋に向かう。


美紀が居酒屋に着くが、昼間のこの時間はまだ開店して居なかった。


「16時からか~……それまでどうしよう……」

美紀が時間潰しに困っていると誰かが後ろから声を掛けてきた。

「美紀さん?」

美紀が振り向くとそこにはさっき別れたはずの山本が居た。

「山本さん!?」

「何でここに?」

山本も驚いていた。

「あっ……行方不明になった依頼人のお父さんの行き付けの居酒屋がここだって言うから何か知らないか聞きに……」

「え?そうなの!?昨日殺害された被害者もここが行き付けらしいんだ……三浦さんと赤木君はピエロヴィランの方の捜査に向かったから僕がこっちを任されて」

「そうなんですか……」

「この居酒屋……何か匂うな……」

2人は開店の時間まで近くで時間を潰す事にした。


それから約2時間が経過した。


直樹は処置が終わり病室のベッドで目を覚ました。

「ん……?こ……ここは?」

直樹の目には病室と天井と蛍光灯が見えるだけだった。

直樹が起き上がると……。

「痛っ!?」

直樹の体に激痛が走った。

ピエロヴィランとの戦いでかなりのダメージを受けていた。

「不味いな……このダメージは……」

直樹は考えていた。

次、ジョーカーが現れた時、今のままでは勝てないかも知れないと。


その頃、居酒屋の近くで待っていた美紀と山本は居酒屋に近付く中年の男性を見掛ける。

「あっ……あの人店長ですかね?」

美紀が尋ねた。

「そうかも……行ってみよう」

山本と美紀はその男性の所へ向かう。

しかし……。


2人の目の前にピエロヴィランが現れた。

「うわぁぁぁ!?」

ピエロヴィランは2人に襲い掛かる。


山本の叫び声を聞いて居酒屋の男は気付いて振り向いたが、そこには誰も居なかった。


山本と美紀は一瞬の内に姿を消してしまっていた。


病室では直樹がジョーカーに対抗する術を考え続けていた。

しかしそこにジョーカーが窓ガラスを割って現れた。

「なっ!?テメェ!!」

「フッフッフッ……工藤直樹……いや……エクスカイザー……この2人を預かってる……助けたければここまで来い……」

ジョーカーは直樹に1枚のカードを渡した。

それは美紀と山本が縄で拘束され、宙吊りにされてる写真だった。

そしてその裏には場所を指定された地図……。

地図の1ヵ所に赤い印が付けられていた。

「これは……」

「日没までに来い……でなければ2人は死ぬ……」

そう言い残してジョーカーは去って行った。

「日没?」

直樹が時計を見ると16時を回っていた。

「くっ……この時期じゃあと1時間もねぇぞ……」

季節は10月の後半。

既に日の入りが早くなり、日没まで時間が無かった。


直樹は急いで着替えジョーカーが指定した場所に向かった。

「タクシー!」

病院の前でタクシーを拾う直樹。

「どちらまで?」

「すまないが急いでこの場所に向かってくれ!」

直樹は先ほどジョーカーから渡された地図を見せる……。

「ここは……?わかりました直ぐに向かいます」

タクシーの運転手は場所を直ぐに理解してくれた様で車を走らせる。

直樹は時計を見ている。

(よし……この分なら何とか間に合いそうだな……)


しかし、タクシーを走らせてから10分程で渋滞に巻き込まれた。

直樹にも焦りの表情が浮かぶ。

「あと、どの位かな?」

「ん~?どうでしょうねぇ?いつもは混む様な所では無いんですけど……」

直樹が窓から顔を出し前方を見ると赤いサイレンがいくつも回っているのが見えた。

「警察か……?……そうだ!検問だ!」

そう直樹の読み通りピエロヴィランが出現した事により警察の警戒態勢が強くなり、車を一台一台検問していた。

(くっ……ジョーカーめ……さてはこの検問までも利用してゲームを楽しんでやがるな……)

日没までもう時間が無い……西の空は大分暗くなって来ていた。

「ここで降ろしてくれ!」

直樹は仕方なくタクシーを降り自分の足で向かう事にした。


直樹は走る、美紀と山本を助ける為に……まっ。

しかし、走る度に直樹の体には痛みが走る。

果たして直樹は日没までに到着し、2人を助ける事が出来るのか?


続く……。

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