第11話「巨悪の真相」

赤木は新たなヒーローダッシュライザーに変身した。

ダッシュライザーは上半身は赤いアーマー下半身は黒いボディそして背中にはタイヤが付き足首にバイクのマフラーの様な物が2本ずつ計4本付いていた。

マスクはバイクのヘルメットの様な形だ。

そして、先程の赤い箱はベルトのバックルになり、中央には黒で『D』と書かれていた。


「アイツは……一体!?」

エクスカイザーも驚く。


キラービーヴィランはダッシュライザーに襲い掛かる。

ダッシュライザーはカウンターキックで反撃。

キラービーヴィランを蹴り飛ばした。

ダッシュライザーのキックは足首のマフラーからブースターを発動させ、勢いを増していた。

この一撃だけでもかなりのダメージを与えた様だ。

フラつくキラービーヴィラン。

「くっ……おのれ……」

キラービーヴィランは逃走した。

「チッ……逃げられたか……」

そう言ってダッシュライザーは変身を解除。

赤木が三浦達の元へ行く。

「三浦さん、直ぐに奴を追いましょう」

「あ……ああ……」

赤木はバイクに乗りキラービーヴィランを追う。

「あっ!ちょっと待って!」

エクスカイザーが引き留めるが赤木は行ってしまった。

「おい……アイツ……何者なんだ?」

仕方なくエクスカイザーも立ち去る。


その後、被害に遭った子ども達は救急車で病院に搬送された。

この日の授業は中止となり子ども達の安全を考え集団下校となった。

ただし、親が仕事で居ない子ども達は学校に残り教職員達が親に連絡し、迎えに来るのを待つ事になった。

依頼人の息子徹も学校に残るメンバーだった。


その間美紀は考えていた。

一体誰がキラービーヴィランとなり、子ども達を襲ったのか。

だが、教職員達は親への連絡で忙しく話を聞いて居られない。


岩橋は病院に運ばれた3人の子ども達に付き添い病院に行った為、不在だった。


何も出来ない自分に美紀は苛立ちを覚えていた。

すると、そこに校長がやって来る。

「岡本先生……今日は授業どころじゃないし、あなたも疲れたでしょ……今日はもう帰って良いですからゆっくり休んで下さい」


「あっ……はい……そうですよね……私が居てもしょうがないですもんね……失礼します」

美紀は事務所に帰る。


しかし、事務所には直樹も居なかった。

「直樹さん……どこ行ったんだろ?」


その頃、直樹は警視庁を訪ねていた。

赤木に話をしに来たのだ。

だが、また山本が絡んで来る。

「おい、探偵!こっちは今忙しいんだ!何しに来やがった!!」

「お前に用はねぇよ……あの赤木って刑事に用があんだよ!」


そこへ赤木が来る。

「待たせて悪かった」

「あっ、赤木君……」

「ちょっと話がある」

「何だ?こっちで話そう」

赤木は直樹を応接室に連れて行った。


「コーヒーでいいか?」

赤木は直樹にコーヒーを入れようとする。

「ああ、いいよ直ぐ行くから……」

「遠慮するな……じっくり話すつもりなんだろ?」

そう言って赤木は直樹にコーヒーを差し出す。

「悪い……」

直樹はコーヒーを受け取って一口飲む。

「で、話って?」

赤木の方から聞き出した。

「ああ……」

直樹はポケットから『エクスチェンジャー』を取り出した。

「あんた……俺と同じ力を持ってるだろ……」

「お前がエクスカイザーだという事は分かってる」

「知ってたのか……」

「警察の捜査力を舐めるな」

「だったら話は早い。その力、どうやって手に入れた?」

「ある人物から託された……組織を潰す為にな」

「ある人物?組織?まさか……組織って?」

「お前もエクスカイザーの力を持ってるなら少なからず知ってるだろう……全ての元凶の巨悪を……」

「じゃあ……あんたも奴らを追って……」

「そういう事だ……今話せるのはそれだけだ用が済んだら帰れ」


それで話は終わり直樹は帰らされた。


直樹が事務所に帰ると美紀が既に帰っていた。

「帰ってたのか」

「あっ……直樹さん……どこ行ってたんですか?」

「ちょっとな……襲われた生徒達はどうなった?」

「え?直樹さん何で知ってるんですか?」

「あっ……いや……その……」

直樹は慌てて口実を考える。

「もしかして気になって様子を見に来てたんですか?」

「え?あっ、ああ……」

「担任の岩橋先生が付き添って病院に行きました。私はこれ以上出来る事がないからって帰されました……」

「そうか……」

直樹も美紀もキラービーヴィランの正体が気になっていた。

襲われた生徒3人には何か共通点があるのかも知れないと……。

「よし……明日もう一度学校に潜入して調べてみてくれ」

「ええ……それはしますけど……直樹さんいつの間にかやる気取り戻したんですね」

「まぁ、落ち込んでる場合じゃなくなっちまったからな……」

そう言い残して直樹は奥の部屋に行く。

しばらくして直樹は着替えて出てきた。

「よし……飯行くぞ」

「またあそこですか?」

「ああ」


直樹と美紀は居酒屋源に向かう。


-居酒屋源-

店内はいつもの通り仕事帰りのサラリーマン達で賑わっていた。

「天ぷらの盛り合わせお待ち!」

ゲンさんが直樹と美紀のテーブルに置く。

「わ~美味しそう!」

美紀は天ぷらを見てテンションが上がる。

「熱々だから気を付けてな」

ゲンさんが立ち去ろうとする。

「あっ、ゲンさん!」

「ん?何だ?」

「ゲンさん、この男の子の事知らないか?」

直樹は杉本徹の写真を見せた。

「ん?杉本さんとこの徹君じゃないか!たまにお母さんやお父さんとウチに来るぞ」

「ゲンさん小学生の子の事まで知ってんの?」

美紀は驚いていた。

「ゲンさんはこの町の情報通だからな」

「それで、徹君がどうかしたのか?」

「この子がいじめを受けてるとか言う情報はないか?」

「いや……特に聞いてないが……あっ、でもいじめと言えば……」

ゲンさんは何かを思い出したようだ。

「何か?」

「いや……徹君の学校でな……前にいじめが原因で自殺した子が出たのを思い出してな」

「自殺!?」

美紀は思わず大きな声を出してしまった。

「しーっ!」

直樹に注意される。


その後、直樹と美紀はしばらく飲んでから帰宅した。


その頃、黒沢会長とMも密会をしていた。

「どうだ?例の女性は?」

「中々上手くやってるみたいですよ……」

「母は強しって所か」

そう言って黒沢会長はワインを一杯飲んで席を立つ。

「それじゃあ、失礼するよ」

そう言って黒沢会長は帰っていく。


翌日、美紀は再び教育実習生として学校へ行った。

その頃、直樹も出掛けて行った。


学校では昨日の事件の事を生徒達に説明する為の全校集会が開かれた。


美紀も教師達に交じって参加していた。

壇上に校長が立ち昨日起きた事件について話をしている。

(校長先生の話って何処の学校でも長いのねぇ……)

美紀は心の中でそう思っていた。

ずっと立っている為、美紀は足が疲れて来た。


直樹は被害にあった3人の生徒の事を調べていた。

3人の生徒の家を訪ね親に話を聞いた。

すると、ある事実が判明した。

被害にあったのは輪島昇(わじま のぼる)、上野光(うえの ひかる)、鈴木正太(すずき しょうた)の3人。

実はこの3人はクラスの中でいじめっ子だった。

この3人に去年いじめを受けた生徒の1人は自殺していた。

しかし、この3人の親にも問題があり、昇は片親で父親が1人居るだけだった。

父親も重度のアルコール中毒で酒が切れると昇にまで暴力を振るう始末。

光は両親の夫婦仲が悪く離婚寸前だと言う。

正太は母親が1人の母子家庭。

しかもその母親は育児放棄状態だと言う。


そんな親達の元で育った子ども達が性格が曲がるのも無理はない。


直樹の訪問も快く思う親達は1人も居なかったが、自分の息子が襲われたとあり、話をしてくれた。

ただし、育児放棄状態の正太の母親を除いては……。


直樹は3人の親に会い最後にいじめを受けて自殺した生徒の家に向かった。

チャイムを押す……。

しかし、誰も出て来なかった。


その頃、学校では全校集会が終わり岩橋先生と美紀は襲われた生徒のお見舞いに行く事にした。

病院に着くと子ども達はまだ眠ったままだった。

誰も親は来て居なかった。

「子どもがこんな状態なのに……」

美紀は思わず呟いた。

「3人とも家庭に問題を抱えてる子ですから……」

そう岩橋先生は答えた。

「え?」

「あの子達は可愛そうな子達です……」

そう言って岩橋は3人の子ども達の事を美紀に話始めた。


しかし、岩橋先生が美紀に話をしている最中突然病室の窓ガラスを割ってキラービーヴィランが襲って来た。

「ヴィラン!?」

キラービーヴィランは子ども達にトドメを刺そうと狙っている。


直樹が病室に飛び込んで来てキラービーヴィランに飛び掛かる。

「直樹さん!?」

キラービーヴィランを必死に押さえ付ける直樹。

「早く逃げろ!!」

直樹の呼び掛けで美紀は岩橋先生を連れて逃げる。

「あの……子ども達をお願いします!」

岩橋先生は避難する間際に直樹にそう告げた。

「邪魔をするなー!!」

キラービーヴィランは直樹を引き離し壁に叩き付ける。

「ぐぁっ!?……くっ……」

直樹はダメージを受けながらも立ち上がる。

「あんた……自分の子どもがいじめられたからってそんな事で復讐しても何にもならないぞ!!」

「うるさい!お前に何が分かる……親って子どもの為なら何だって出来るのよ!!」

「だからって親が犯罪者になれば子どもは悲しむだけだ!!」

「くっ……」

直樹の言葉にキラービーヴィランの動きが止まった。

「俺は、あんたの正体が杉本さんだと思ってた……でも違うよな……」

「杉本?誰の事だ!?」

「あんたと同じ思いをしてるお母さんだよ……杉本さん!大丈夫だから入ってきて下さい」

直樹が呼ぶと病室に恐る恐ると幸子が入って来た。

「杉本さん……彼女はあなたと同じ思いをしたお母さん……以前彼らにいじめられて自殺した生徒、飯島 勉(いいじま つとむ)君のお母さんです……だから……あなたの声なら届くかも知れない」

「わ……分かりました……あの……私の息子も学校でいじめを受けてるようなんです……毎日体の何処かにアザを作って帰って来たり……凄く落ち込んでる日があったり……あなたのお子さんもそうじゃありませんでした?」

キラービーヴィラン変身を解除。

その正体飯島紀子(いいじま のりこ)は幸子の言葉に耳を貸している。

「ええ……ウチの子も毎日毎日アザを作って……学校に行くのを嫌がった事も何度もありました……でも……私は仕事が忙しく勉に構ってやる事が出来ませんでした……あの子があんなに悩んでいたのに……息子が自殺したと聞いた時……私の中にどうしようもない感情が湧いて……息子をいじめた子達に復讐する事ばかり考える様になってあました……」

「一緒に戦いましょう……学校に2人で抗議するんです!こんな悲しい事が二度と起こらない様に……」

「そうね……でも……もう私の心には歯止めが効かなくなってるの!!もう手遅れなのよ!!」

紀子は再びキラービーヴィランに変身。

「まずい!」

直樹はキラービーヴィランと幸子の間に入る。

「幸子さん逃げて!!」

キラービーヴィランは幸子には手を出さず眠っている子ども達に迫る。

「変身!」

直樹はエクスカイザーに変身しキラービーヴィランに飛び掛かる。

キラービーヴィランは子ども達に毒針を刺そうとしている。


間一髪の所でエクスカイザーが止め割れた窓からキラービーヴィランと一緒に病室を抜け出した。

4階の病室からエクスカイザーとキラービーヴィランは落ちる。

だが、キラービーヴィランは羽がある為、飛行能力を使い空へ逃げた。


エクスカイザーが地面に落下する。

「ぐぁっ!?いってぇ……」

空高く飛んだキラービーヴィランは毒針をエクスカイザーに向ける。

「邪魔をするならお前から殺す!!」

キラービーヴィランはエクスカイザーに向け急降下。

「まっ……まずい……」


だが、その時一発の弾丸がキラービーヴィランの羽を撃ち抜いた。

「ぐぁっ!?」

バランスを崩したキラービーヴィランは地面に落下。


エクスカイザーが振り向くとそこにはライフルを構えたダッシュライザーが居た。

「あっ!お前!」

ダッシュライザーはゆっくりキラービーヴィランに近付く。

「くっ……」

キラービーヴィランは立ち上がろうともがく。

ダッシュライザーはキラービーヴィランを掴み立ち上がらさる。


そして、容赦なく攻撃を叩き込む。

顔面を殴り腹を殴り最後に蹴り飛ばした。

「おい!止めろ!!」

エクスカイザーが止める。

「甘い事を言うな!コイツは犯罪者なんだぞ!!」

ダッシュライザーはエクスカイザーを突飛ばしまたキラービーヴィランに迫る。

そして、武器『ダッシュブレード』を手にキラービーヴィランを斬り付ける。

キラービーヴィランはダメージを受け続け戦意を喪失していた。

エクスカイザーは立ち上がってダッシュライザーを止めに入った。

「おい!もう十分だろ!」

「チッ……そうだな……トドメと行くか……」

ダッシュライザーは自分のベルトに差してあるキーを抜いて『ダッシュブレード』の柄の底に差し回した。

必殺技『クリムゾンブレイク』が発動。

「さぁ、裁きの時間だ……」

『ダッシュブレード』の刀身が赤く光り赤い稲妻を放つ。

ダッシュライザーはダッシュブレードを降り下ろしキラービーヴィランを切り裂く。


キラービーヴィランは倒されヴィランキーは破壊。

紀子は元の姿に戻った。


ダッシュライザーとエクスカイザーは変身を解除した。

赤木は紀子の元へ近付く。

「飯島紀子……ヴィランキーの所持及び使用、並びに殺人未遂の現行犯で逮捕する」

赤木は紀子に手錠を掛ける。


「署に連行する前に聞かせろ……ヴィランキーを何処で手に入れた?」

「それは……確か……Mって人から購入しました……」

「M……」

直樹はその名を聞いて呟いた。

「そうか……詳しくは署で聞こう」

赤木は紀子を連行して行った。


直樹はそれを見送る。

「あの……探偵さん、ありがとうございました」

幸子が近付いて来て言った。

「幸子さん……いえ……今回俺は何も救えてません……報告書は、後日改めて送らせて頂きます」

そう言って直樹は立ち去る。

「でも!」

直樹は足を止める。

「探偵さんのお陰で私も……あのお母さんも……報われると思います」

直樹は去って行った。


帰り際、直樹は考えていた。

赤木が口にした組織……そしてMの繋がりを……。

(もし……赤木の言う組織がアイツらなら……この決着は俺が着けなきゃならない……おやっさんの為にも……)


続く……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る