第10話「巨悪の追跡者」
エクスカイザーはファイヤーヴィランを前に何も出来ず喪失感に見舞われていた。
この事件の翌日、美紀が事務所にやって来た。
いつもなら開いてるはずの鍵が開いていない。
美紀は鍵を取り出した。
鍵を開けて中に入ると……。
直樹はデスクに座り無気力感を漂わせていた。
「ちょっと!直樹さん!昨日なんでどっか行ったまんま戻って来なかったんですか!!電話にも出ないし!いつまで経っても店に戻って来ないし!ラーメンは伸びるしチャーハンや餃子は冷めるしでお店に人に申し訳なくて物凄く居づらかったんですからね!!」
美紀は物凄い勢いで文句を言った。
直樹は……。
「あ~……ごめん……」
とだけ返した。
「なんて素っ気ない返事……」
美紀は肩を落とした。
見ると直樹はYシャツは昨日のままでヨレヨレ、髭も伸び髪はボサボサだった。
「直樹さん、昨日あんだけ汗かいたのにシャワーも浴びてないの?」
「ん~?あ~……」
「も~……ホラホラ今日も仕事なんだから早くシャワー浴びて着替えて来て下さいよ!」
「いーよ……今日はやる気出ないし休む……」
「も~そんな事言って~昨日何があったんですか?」
「いや……別に……」
美紀ははっきりしない直樹にイライラしてきた。
美紀は思いっきりデスクを叩く。
「もー!!」
だが、その時誰かが事務所のドアをノックする。
「ん?はーい」
美紀が返事をすると入ってきたのは三浦と山本だった。
「うーっす」
「探偵来てやったぞ!」
だが、直樹は反応しない。
「ん?あれ?どうした探偵……いつもなら突っかかって来るのに……」
(いつも突っかかってるのはあんたでしょ……)
と美紀は心の中で思った。
「あー……なんか、調子悪いみたいで……」
と美紀はフォローする。
「そうなのか?じゃあ悪かったな……」
「三浦さん……今日は何で?」
美紀が代わりに聞き返す。
「ああ、今日は紹介したい奴が居てな。入れ」
三浦はある人物を招き入れた。
それは赤いライダースジャケットに青いジーパンを履いた茶髪の若い男だった。
(え?誰このイケメン……?)
そして、三浦が紹介を始める。
男の名は赤木 竜一(あかぎ りゅういち)(26歳)
本日付けで警視庁捜査一課に配属された若手エリート刑事だ。
元は大阪府警の警備局警備課に居た。
自ら志願してヴィラン犯罪が横行する東京へ出向してきた。
すると、赤木が初めて口を開く。
「三浦さん……何でこんな所に?」
(こんな所って……)
美紀はイラッとした。
「ここはな、俺の友人がやってた探偵事務所なんだ。ここは何故かヴィラン絡みの依頼が多くてな……知っておいた方がいいと思ってな」
三浦がそう説明すると、赤木は周りを見渡した。
「なるほど……そこに座ってる男がこの事務所の責任者って訳ですか……その割には身なりが整ってない……この事務所のレベルも大した事無さそうだ。ヴィラン絡みの依頼と言うよりせいぜい近所からの迷子になったペット探し程度の簡単な依頼がお似合いだ」
(いきなり来てメチャクチャ失礼だな……)
美紀は更にイラッとした。
「おい、赤木……そう言うな……先代の所長が居た頃はもっと良かったんだぞ」
三浦がフォローのつもりで言うが……。
「はぁ?」
三浦の一言に美紀は思わず声に出して言ってしまった。
「あっ、いや……失礼……」
三浦も慌てる。
「これ以上居ても時間の無駄でしょう……本庁に帰りましょう」
そう言って赤木は帰っていく。
「あっ、ちょっと……赤木!……じゃあ……俺達も行くわ……美紀ちゃん……機嫌直してくれな……」
三浦と山本は恐る恐る帰っていく。
「さっさと帰れー!!」
美紀のイライラが遂に爆発。
三浦と山本は慌てて帰る。
直樹は相変わらず無気力なままだ。
「あ~もう……直樹さんもいい加減にして下さい!!」
こちらにも美紀の怒りが爆発。
その頃、黒沢会長とMはとあるカフェで会っていた。
「やぁ、待たせてしまってすまなかったね……会議が長引いてしまって」
そう言いながら黒沢会長は椅子に座る。
「いえいえ……私も今来た所ですから……」
そこへカフェの店員がやって来る。
「いらっしゃいませ……ご注文はお決まりでしょうか?」
「ブラックコーヒーをホッとで」
「かしこまりました……」
黒沢会長が注文をし、店員が去っていく行くと……。
「では会長……早速ですが……仕事の話を……」
「ああ……大田」
「はい」
秘書の男、大田がアタッシュケースを開けてMに見せる。
「これが我が社が新たに開発したヴィランキーだ」
アタッシュケースの中には6本のキーが納められていた。
様々な色のキーがあるが、その中に1本だけ金色のキーがあった。
「会長……コレが?」
Mは金色のキーを持って尋ねる。
「そう……それが今回最も強力な力を持つキーだ……使用者は慎重に選んでくれ」
「わかりました……では……」
Mは分厚い封筒を黒沢に渡す。
中には帯で束ねられた1万円札が3つ。
「300万……確かに」
黒沢会長はその金を懐に入れる。
「次のターゲットはもう決めて居るのか?」
「ええ…この女です…」
そう言ってMは写真を見せた。
「良い結果を期待してるよ……」
そこに店員がやって来た。
「ホットコーヒーお待たせしました」
テーブルに置かれたコーヒーを飲む黒沢。
「では……私はこれで……」
Mは伝票を持って去ろうとする。
「あっ、いいからいいから……伝票は置いて行きなさい」
「いつもすみません……ご馳走さまです」
Mは一礼して去って行く。
その後、1時間掛けて直樹は身なりを整えていた。
美紀に半強制的にシャワーと着替えをさせられていた。
「はい、後は髭剃りさっさとして!」
「あ~……分かったってば~……」
直樹は渋々髭を剃り始める。
そこに事務所のドアをノックする音。
「はーい!どうぞー」
美紀が返事をする。
ドアを開けて入って来たのは30代半ば程の女性だった。
「あの……調べて欲しいんですけど……」
「あ~すみません……今日は休みなんですよ~」
直樹が断ろうとする。
美紀は直樹の足を踏んで黙らせる。
「痛って!?」
「気にしないで下さい。さ~どうぞ座って下さ~い」
美紀に促され女性はソファーに座る。
直樹は相変わらずやる気を失ってる為、美紀が話を聞く。
女性は依頼内容を話出した。
この女性の名前は杉本幸子(すぎもと ゆきこ)(36歳)ごく普通の主婦で小学生の息子が居る。
依頼はその息子に関する事だった。
どうやら息子が学校でいじめを受けているらしく、その犯人を見つけて欲しいと言う物だった。
「いや~それはまず学校の先生に……」
美紀はそう言うが……。
「学校の先生なんてダメです!何にもしてくれなくて……」
「そうですか……」
幸子は勿論学校にまず相談した。
しかし、担任の岩橋先生曰くクラスでいじめは無いと言う。
ちゃんと調べないままそう答えを出す岩橋先生や学校には期待出来ず、探偵に依頼する事を決めたと言う。
「わかりました……こちらでも調べてみます」
話を聞き美紀は依頼を受ける事に決めた。
「宜しくお願いします」
幸子は頭を下げお願いをした。
幸子が帰ってから早速美紀は直樹に相談。
「で、どうしましょうか?」
「何も考えてなかったのかよ!!」
「だって~放って置けないじゃないですか~……あっ!そうだ!」
美紀は何かを閃いた。
そして、早速準備に掛かる。
美紀はリクルートスーツに着替えて来た。
「何だそのカッコ?」
「リクルートスーツですよ!教育実習生として学校に潜入するんです!」
「なるほどねぇ……まぁまだ20歳(はたち)だし、無理はねぇか……」
「でしょ!それに私就活しなかったから結構憧れてたんです!」
「ふ~ん……まっ、上手くやれよ」
「ちょっと~まだやる気出ないんですか?」
直樹はデスクに座り後ろを向いてしまった。
仕方なく今回は美紀が1人で学校に潜入する。
美紀は教育実習生として学校に向かう手続きを進めた。
そして数日後、美紀は教育実習生として依頼人の息子が通う学校に潜入した。
「岡本美紀です。宜しくお願いします」
美紀は校長に挨拶。
「やぁ、良く来てくれたね。私が校長の長谷川です。君は3年3組に教育実習生として入って下さい。担任の岩橋先生です」
校長は岩橋先生を紹介。
岩橋先生はジャージに身を包んだ30代前半の若い教師だった。
「岩橋です、宜しく」
「はい!宜しくお願いします!」
早速、3年3組の教室へ向かう。
教室に入ると子ども達が席に付き先生を待っていた。
6列あり、5人ずつ並んでいた。
このクラスは丁度30人。
そして、右から3列目の4人目の席に座っているのが、杉本 徹(すぎもと とおる)依頼人の息子だ。
早速授業が始まる。
美紀は岩橋に指示され授業を進める。
(皆真面目に授業を聞いてる……いじめなんて本当にあるのかしら?)
美紀はクラスの授業態度から疑問に思っていた。
1時間目が終わり美紀は岩橋と共に職員室へ戻る。
(はぁ~……疲れた……これをあと5時間もやるの?キツ~……)
美紀は1時間ですっかり参っていた。
そして、美紀は休み時間の内に色々話を聞く事にした。
「あの~岩橋先生……」
「はい?」
「皆……授業をちゃんと聞いてくれて良い子達ですね。クラスの仲も良いんですか?」
「そうですねぇ……クラスの仲は良い方だと思います……ただ……」
「ただ?」
「あっ、いえ……何でもありません。気にしないで下さい…」
岩橋先生は何かを言い掛けて話を終わらせた。
(いや、気になるでしょ……)
そこで、美紀は揺さぶりを掛けに出た。
「いじめとか無いんですか?」
すると……。
「ありませんよ!!そんな物!!」
岩橋先生は物凄い剣幕で否定した。
「す……すみません……」
「あっ、いえ……こちらこそ……すみません……」
そんな話をしてる間に休み時間の終わりが迫る。
「あっ!そろそろ行かないと授業始まりますよ」
「あっ!はい!」
だが、その時クラスに突然ヴィランが襲撃。
窓ガラスが割られ子ども達はパニック。
騒ぎに気付き岩橋と美紀が急いで教室に向かう。
教室で子ども達を襲っていたのはハチの姿をしたキラービーヴィラン。
子ども達を次々に毒針で刺して行く。
子ども達はその場で倒れる。
「安心しなさい……直ぐには死なないから……ゆっくり……苦しみながら死ぬといいわ……」
「ヴィラン!?せ……先生!子ども達を早く……」
「え?あっ……そ……そうですね……皆!こっちに来なさい!!」
子ども達は岩橋先生の方に逃げる。
割れた窓ガラスからエクスカイザーが入って来てキラービーヴィランに飛び掛かる。
「エクスカイザー!?」
美紀は突然現れたエクスカイザーに驚いた。
「早く……子ども達を……」
「わっ……わかりました!」
エクスカイザーがキラービーヴィランを抑えている内に岩橋と美紀で子ども達を避難させる。
子ども達の避難を確認すると、エクスカイザーとキラービーヴィランは教室内で戦闘を繰り広げる。
しかし、机や椅子が邪魔で思う様に戦えない。
そこで、エクスカイザーはキラービーヴィランを窓から外に連れ出し校庭に戦いの場を移す。
校庭には警察も駆け付けた。
警察官達が子ども達を保護し、エクスカイザーとキラービーヴィランの戦いを見守る。
そこへ一台のバイクが入って来た。
エクスカイザーはそのバイクに気付く。
「ん?アイツは?」
赤のフルフェイスヘルメットに赤いライダースジャケット、そしてジーパン。
赤木 竜一だ。
赤木はヘルメットを脱ぎキラービーヴィランの前に立つ。
「おい……危ないぞ……」
エクスカイザーが声を掛けるが……。
「心配は不要だ……」
そう言うと赤木は赤い箱を取り出し更にその中からキーを1本取り出した。
「変身……」
赤木はその箱を腰に当てキーを箱の鍵穴に差して回した。
赤木は新たなヒーロー ダッシュライザーに変身した。
続く……。
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