動き出した巨悪

第9話「巨悪の鼓動」

この日直樹と美紀は迷子の猫探しの依頼を受けていた。

「たまちゃ~ん?どこだ~?」

直樹が猫を探す。

「たまちゃ~ん?出ておいで~?」

美紀も必死に探す。

しかし、迷子の猫はなかなか見つからない。


一度事務所に戻った直樹と美紀。

「あ~あっちぃ~もう10月だってのに……」

そう言いながら直樹はYシャツの胸元を摘みパタパタと仰いでいた。

「ほんと……こう暑いと嫌になっちゃう……」

そう言いながら美紀はお茶を持ってくる。

「おっ!サンキュー」

直樹はお茶を一気飲みする。


その頃、警視庁では三浦と山本がある事件の捜査資料を見ていた。

それは過去の未解決事件の物だった。

「三浦さん……なんで今更こんな昔の事件を?」

山本が不思議そうに尋ねる。

「ん?ああ……ちょっと思い出した事があってな……気になって仕方ないんだ……」

8年前の10月26日、当時帰宅途中の会社員が何者かに襲われ殺害されると言う事件だった。

事件当時は証拠不十分で容疑者を特定出来ず未解決事件となってしまった。


当時この事件を担当していた三浦は毎年被害者の命日が近づくとお墓参りに行っていた。

しかし、今年は用事があり行けそうにない為、遺族に手紙を出そうと思い被害者遺族の住所を調べていた。

「あっ、あったあった!」

三浦は住所を見付け早速メモを取る。


「今年行けないのって娘さんの結婚式と重なっちゃうからなんですよね?」

と山本が尋ねる。

「ああ……」

とだけ三浦は答えた。

「おめでとうございます」

「ありがとう……だが、複雑だよ……父親としては嬉しいが、刑事としては遺族に申し訳なくてな……」

三浦と山本はそんな会話をしていた。


直樹と美紀は一休みしてから再び猫のたまちゃん探しを始めていた。

だが、その途中事件は起きた。


直樹達がたまちゃん探しをしている近くでヴィランが暴れ出していた。

「なっ、なんだ!?」


直樹が騒ぎに気付き目をやると鳥の姿をしたヴィランがアタッシュケースを抱えて空を飛んでいた。


そして、それを追う警察のパトカーが数台。


直樹は直ぐに後を追う。

「ちょっと!?直樹さん待ってよ!!」

美紀は直樹に置いて行かれる。


直樹は『エクスチェンジャー』をポケットから取り出して『Xキー』を出す。

「変身!!」

探偵ヒーロー エクスカイザー登場。

『エクスリボルバー』で攻撃する。

しかし、エクスカイザーの攻撃は届かない。

「くっ……ダメか……」


そのまま鳥の姿をしたヴィランは逃走して行った。

仕方なくエクスカイザーは変身を解除。

直樹が美紀の所へ戻る。


「わりぃわりぃ……」

「もう!こっちだって仕事なんですからね!」

「わ……悪かったよ……」

美紀は怒っていた。


その頃、鳥の姿のヴィラン、クロウヴィランはとあるビルの中に入って行った。

そして、変身を解除。

その正体は金髪のいかにも素行の悪そうな男だった。

「へへっ、この力があれば強盗なんてチョロいぜ!」

そう言いながら笑っていた。

金髪の男は他の2人の仲間と合流していた。

「へぇ~やるじゃねぇか」

そう言うのは黒髪で長髪を後ろで結んだ男。

「これで俺達大金持ちだぜ!」

そう言うのは坊主頭の男。

「さぁて……次は何処を襲うかな~?」

金髪の男は次に狙う場所を模索していた。


そこに1人の男が彼らの元にやって来た。

Mだった。

「失礼しますよ……」

「おっ!あんたか!あんたのお陰で簡単に金が手に入ったぜ!ありがとな!」

金髪の男がMに礼を言う。

「いえいえ……犯罪のお手伝いをするのが私、犯罪コーディネーターの仕事ですから……それと……一つ仕事を頼まれてくれませんか?」

「仕事?」

「ええ……私のある計画の為に資金を集めて欲しいのです……5億盗んで頂ければあなた方に報酬として2億お渡しします。どうです?悪い話ではないでしょ?」

とMは男に提案。

「2億!?すっ……すげぇ!それだけで大金が手に入るのか!?」

「ええ……私は3億あれば十分ですから……」

「やるぜやるぜ!!」

金髪の男はその仕事に乗った。


その話が終わりMは男達の元を去っていく。

そして、どこかへ電話をかけた。

「もしもし?黒沢会長……彼ら乗って来ましたよ……」

「そうか……なかなか使えそうな駒じゃないか……楽しみにしてるぞ……」


その後、直樹と美紀は迷子猫のたまちゃんを見付けて飼い主の元に送り届けていた。

美紀に抱っこされていたたまちゃんが飼い主に渡される。

「たまちゃ~ん、良かった帰って来て~……本当にありがとうございます!」

飼い主も喜んでいた。

「いえ、無事に見つかって良かったです!」

美紀は笑顔で返した。

しかし、直樹は……。

(クソッ……この猫……引っ掻きまくりやがって……)

直樹の手は引っ掻き傷だらけになっていた。


依頼が完了し、直樹と美紀は帰って行く。


「直樹さん、帰り何か食べて行きません?」

と美紀が提案する。

「そうだなぁ、腹減ったしラーメンでも食って行くか!」

「賛成!」

直樹と美紀は車に乗り出発する。


途中でラーメン屋を見付け立ち寄る。

直樹と美紀が店に入ると……。

「らっしゃい!」

店主のオヤジが迎え入れた。


店内には他に客は無く、店主のオヤジはテレビでプロ野球中継を見ていた。

カウンター席に座る直樹と美紀。

メニューを見ているとごく普通のラーメンが数種類とチャーハンや白ご飯、餃子などが載っていた。

「え~っと……じゃあ俺は醤油ラーメンと……チャーハン……それと餃子5個」

「じゃあ、私は味噌ラーメンに白ご飯と……餃子5個で」

「はいよ!」

注文を聞くと店主は早速調理に掛かった。


ラーメンを待ってる間、何気なくテレビでプロ野球中継を見ているとニュース速報が流れて来た。

その内容は昼間銀行を襲った鳥のヴィランが再び別の銀行に現れ現在も襲撃していると言う物だった。


「アイツか……」

直樹は店を飛び出す。

「ちょっと!?また!?」

「はい、ラーメンお待ち……アレ?」

そのタイミングでラーメンを持ってくる店主。

「あははっ……すみません……」


直樹は車で現場に向かう。


その頃、現場の銀行では……。


「ったく……お前らがさっさとしねぇからサツが来ちまったじゃねぇかよ……ああ!!」

クロウヴィランが人質の行員を脅す。

「まぁまぁ、しゃあねぇよ……今回は5億だぞ?準備にも時間掛かるだろ」

黒の長髪の男がなだめる。

「チッ……」


現場の周りを囲む警察官や刑事達の中に三浦と山本も居た。

「クソッ……動きがねぇな……」

「三浦さん!SITの配置完了したそうです!」

「そうか……そろそろケリを着けないとな……」


直樹が現場に到着した。

直樹は『エクスチェンジャー』を取り出し、更に中から『エクスキー』を取り出す。

「変身!」

エクスカイザー登場。

エクスカイザーは銀行に突入。

突如現れたエクスカイザーに犯人達は動揺する。

「なっ……何だテメェは!?」

「真実を見抜く正義の眼、エクスカイザー!!」

「邪魔すんなら……ぶっ殺す!!」

クロウヴィランが襲い掛かって来る。

エクスカイザーはその攻撃を受け止め反撃のパンチを繰り出す。

クロウヴィランは殴り飛ばされ窓口カウンターに激突する。

「ぐっ……クソッ……」

「悪いな……速攻で終わらせるぜ!」

エクスカイザーは更にクロウヴィランに攻撃を仕掛ける。

クロウヴィランはエクスカイザーの攻撃をかわし、羽を飛ばして攻撃してくる。

エクスカイザーに数本の羽が刺さり爆発。

エクスカイザーはダメージを受け膝を付く。

「うわぁぁ!?ぐっ……」

クロウヴィランがエクスカイザーに迫る。

「ハッ!大した事ねぇな?このままぶ殺してやるよ!!」

エクスカイザーは風のキー『ウィンドキー』を『エクスチェンジャー』の左側の鍵穴に刺す。

エクスカイザーは風の力を宿したパンチで反撃。

クロウヴィランは吹き飛ばされる。

「ぐぁっ!?」

「トドメだ!!」

エクスカイザーは必殺技『サイクロンフィスト』でクロウヴィランに攻撃。


しかし、何者かがエクスカイザーに火炎攻撃。

「うわぁっ!?」

エクスカイザーの攻撃は失敗に終わった。

更にこの火炎攻撃で銀行内に火災が発生。

スプリンクラーが作動し水が降ってくる。

人質になっていた人々はパニックを起こし逃げ出した。

「何だ?」

クロウヴィランは周りを見回す。

「おい、流石にやべぇんじゃねぇのか?」

クロウヴィランの仲間の長髪の男が言い出す。

「だな……逃げようぜ!」

坊主頭の男も近付いて来て言う。

「よし……逃げるぞ……」

クロウヴィランは仲間2人を抱えて飛んで逃げる。

「待て!」

エクスカイザーは追いかけようとするが、目の前に別のヴィランが現れる。

真っ赤な炎を模したボディにドクロの様な顔をしたファイヤーヴィランだった。

「お前は……!?」

エクスカイザーにはそのヴィランに見覚えがあった―


半年前、師匠である岡本総司と共に行った調査の際に遭遇したヴィランだった。

その時の記憶が蘇る。


燃え盛る炎の中から直樹と総司を追い詰めるファイヤーヴィラン……。


「お前が……お前がおやっさんを!!」

エクスカイザーはファイヤーヴィランに怒りを剥き出しにし、殴り掛かる。


ファイヤーヴィランは右手を前に突きだし火炎攻撃。

「うわぁぁぁっ!?」

エクスカイザーはスプリンクラーの水で濡れた床に転がるが、そんな物は役に立たない。

炎は勢いを増しエクスカイザーに襲い掛かる。


「貴様は邪魔だ……」

そう言い残しファイヤーヴィランは去って行く。


「クソッ……クソッー!!」

エクスカイザーは悔しさで床に拳を叩き付ける。

水が跳ねエクスカイザーの顔に掛かり再び流れ落ちる。

それはまるで涙の様に……。


数分後、消防が到着し、消火活動が行われた。


直樹は何とか脱出し、現場を離れる。

車に乗り込むが、喪失感で何もやる気が出ない。

スマホに電話が掛かって来る。

美紀からだ……。

しかし、電話に出る気にもなれなかった。


-ラーメン屋-

「もう~直樹さん何やってるのよ~……」

美紀はラーメン屋で取り残されたまま怒っていた。

直樹が注文したラーメンはすっかり伸びていた。


逃走したクロウヴィランがアジトに到着。

「ハァ……ハァ……クソッ……結局5億は集められなかったな……」

クロウヴィランは変身を解除し、金髪の男の姿に戻る。

「いくら集まった?数えてみようぜ」

長髪の男が言い出す。


だが、そこにMがやって来る。

「失敗した様ですね……」

「あぁ……?あんたか……ああ……邪魔が入ってな……だが、残りも必ず集めて来てやるよ」

「いいえ……その必要はありません……あなた達とはここで契約打ち切りです」

「何っ!?」

そして、Mの後ろからファイヤーヴィランが現れる。

「お願いしますよ……」

Mがそう言うとファイヤーヴィランは右手を突きだし火炎放射。

「や……やめろー!?」


男達はファイヤーヴィランに焼き殺された。


そして、Mが電話を掛ける。

「もしもし?彼らの始末完了しました」

「そうか……ご苦労だったなM……」

「それで……これからどうするおつもりで?」

「ああ……そろそろ計画を再始動しようと思ってね……資金集めの方は頼んだよ」

「かしこまりました……黒沢会長……」


遂に、巨悪が動き出した。


続く……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る