令和の大怪盗

第6話「現れた大怪盗」

ある日の夜

警察は美術館の警備をしていた。

警備の責任者は警視庁捜査三課の花森 光男(はなもり みつお)警部。

捜査三課は窃盗事件の捜査を行ういわゆる泥棒専門の刑事達だ。

何故彼らが美術館の警備をしているのか、それは今世間を騒がせている怪盗が今この美術館で展示されている宝石『女神の雫』を狙っているとの情報が……。

いや、怪盗本人からの予告状が届いたのだ。

「クソッ……何が令和のルパンだ!ふざけやがって!!」

花森警部はイラついていた。

何故なら、この怪盗が現れるようになってから何度も予告状を送りつけられてはことごとく盗まれているからだ。

「警部、まもなく予告の時間です」

「うん、よし、全員もう一度装備を確認しろ!今度こそ逃がす訳にはいかんぞ!!」

刑事や機動隊員達は装備を点検。

そこに1人の警察官がやって来た。

「花森警部、今美術館の館長からコレを花森警部に渡してくれと」

「ん?なんだ?」

それは梱包された白い箱だった。

花森警部が箱を開けると中に手紙が入っていた。

読んでみると《警備ご苦労様です。大したものではありませんが、皆さんで召し上がって下さい》

「差し入れか、ありがたいねぇ」

そして、更に開けると……。

それは食べ物ではなくアルミ製の缶だった。

「なんだ?」

すると、その缶からガスが噴射。

「うわっ!?こ……これは!?催眠ガスか……」

あっと、言う間に催眠ガスが美術館内に充満し警備をしていた警察官達は眠らされた。

「フッフッフッ……簡単だったな……」

そこに現れたのは令和のルパンことエクスライザー。

エクスカイザーと同じ力を持った大怪盗だ。

エクスライザーは目玉の展示品「女神の雫」を盗んで行った。

その翌日……。

この日岡本探偵事務所は定休日。

美紀は久しぶりの休みを友人と会って楽しんでいた。

美紀の友人の里中茜(さとなか あかね)は小学校時代からの大親友だった。

「へぇ~じゃあ、美紀お父さんの弟子だった探偵さんの助手って事で働き出したんだー」

「そうなの!最初は弟子を取る気は無いって言ってたけど、何だかんだ雇ってくれてるの」

「その人ってイケメン?」

「え?ん~イケメンとまでは行かないけど……ブサイクではない。上の中位?」

「へぇ~その位ならいいじゃない!今度紹介してよ!」

「何でよ!?」

そんな会話をしていながらカフェでお茶をしていた。

そこに美紀のスマホに直樹から電話が掛かって来た。

「ん?あっ、噂をすれば……」

美紀が電話に出る。

「もしもし?」

「美紀、休みの所すまないが直ぐ事務所に来てくれ!事件だ!!」

「え?え?ちょっと待って!?」

用件だけ伝えると直樹は電話を切ってしまった。

「あっ、ちょっと……もう、一方的なんだから……」

「どうしたの?」

「ごめん、事務所に呼び出されちゃった……行かなきゃ……これで払っておいて!」

そう言うと美紀は茜に1000円札を渡して店を出ていく。


美紀が急いで事務所に行くと、事務所の前で直樹が待っていた。

「直樹さ~ん!どうしたんですか?」

「悪いな、直ぐに出掛ける。車に乗れ」

そう言って直樹はそのまま車庫に美紀を連れて行った。

「ちょっと!こっちは友達との予定をキャンセルして来てるんだから説明位して下さいよ!」

そう言いながらも車に乗る。

「行きながらな……とりあえずこれを読め」

そう言って直樹は新聞を渡す。

日付は今日……。

「これ……今日の朝刊じゃない……」

そう言って美紀が見ると見出しには大きく《令和のルパンまたも警察を欺く!?》と見出しが出ていた。

そして、エクスライザーの写真も載っていた。

「え?エクスカイザー?何したんですか!?」

「バカ!俺じゃ……」

「え?」

「あっ、いや……エクスカイザーじゃねぇよ……奴はエクスライザー……どうやらエクスカイザーと似たような力を持ってるらしい」

「え?そんな奴がどうして?」

「さぁな……だが、ここ最近動きが活発になって来てる……昨日も東京国際美術館から女神の雫って宝石が盗まれたらしい……」

「女神の雫?」

「なんでも中世ヨーロッパの貴族、アルシェール·ゲドラ伯爵が妻のメリーに送った物で時価数百億はする大きな宝石らしい」

「すすすっ!?数百億!?」

「ああ……日本には期間限定で特別に展示させる予定だったんだが……昨日盗まれたらしい……コイツを取り戻せないと国際問題にもなりかねないってよ……」

「大変じゃない!?」

「ああ……だから急ぐぞ」

直樹は更にアクセルを強く踏んでスピードを上げた。


そして、直樹と美紀は東京国際美術館に到着。

美術館の入り口にはまだKEEP OUTの黄色い線が張られ警察が現場検証を行っていた。

三浦と山本も現場に居た。

「三浦さん!」

「おう、来たか」

「あっ!探偵!また出しゃばって来たのか!?」

「わざわざ来てやったのに何だその言い草は?ああ!?」

相変わらず顔を合わせたら喧嘩する直樹と山本。

「まぁまぁ、毎度の事だが喧嘩は止めろ!私が呼んだんだ」

「三浦さん……」

山本は腑に落ちない表情で言う。

「あの……ところで何で三浦さん達が?三浦さん達は捜査一課で殺人事件とかが担当ですよね?窃盗事件なら捜査三課が担当なんじゃ?」

美紀が尋ねると……。

「そうだ!こそ泥相手なら俺達捜査三課の仕事だ!一課は黙ってろ!」

奥から出てきたのは花森警部。

「花森警部……だが、君達は眠らされてさっき目覚めたんだろ?手伝いがあった方が良いんじゃないか?」

「ぐっ……」

花森警部もどうやら気難しい性格の様だ。

「紹介するよ、こちらは私の友人だった探偵の弟子の直樹君とその探偵の娘で今彼の助手をやってる美紀ちゃんだ」

「どうも」

直樹は軽く挨拶。

「初めまして」

美紀はちゃんと挨拶。

「フンッ、探偵ねぇ……邪魔すんじゃねぇぞ!」

花森警部は不機嫌そうに現場に戻る。

「昨日まんまとやられたから機嫌が悪いんだ。気にしないでくれ」

三浦がこっそり言う。

三浦達に案内され、直樹と美紀も現場に入らせて貰う。

現場となった展示室ではまだ鑑識作業が続いていた。

しかし相手はやはりプロの怪盗……。

手掛かりになりそうな物は一切残っていない。

(エクスライザー……どんな奴なんだ?)

直樹は現場を見ながら考えていた。


その頃、昨夜まんまと《女神の雫》を奪ったエクスライザーは《女神の雫》をコンピューターで分析にかけていた。

「どうだ?斉木(さいき)?」

斉木と呼ばれる老人がコンピューターで分析をしていた。

「お坊っちゃま……残念ですが、これはお目当ての宝石ではございません……」

「チッ……またか……」

「確かに時価数百億になる宝石である事は間違いないでしょうが……」

「目的の宝石でなければ意味はない。警察と取引をするぞ」

「はい……」


それから数十分後……。

警視庁にエクスライザーから予告状が届いた。

その連絡は直ぐに花森警部に入った。

「何ぃっ!?エクスライザーから予告状が届いただと!?」

1人の警察官が花森警部に伝えた。

「はい!先ほど本庁に届いた様で……内容はメールで送るとの事です」

「そうか……」

そして花森警部はメールを確認。

メールにはエクスライザーからの予告状の写真が添付され、文章で内容が送られて来た。

《昨夜頂戴した女神の雫ですが、私の求める代物ではなかった為、今夜9時に東京国際美術館へお返しに参上します。令和のルパン エクスライザー》と記載されていた。

「返しに来るだと!?ふざけやがって!!」

エクスライザーの挑発的な内容の予告状に花森警部は怒り心頭。

「時価数百億の宝石返すだって!?何で!?」

美紀は驚いていた。

「『私の求める代物ではなかった』って言ってるから奴にはお金じゃない別の目的があるのか……」

直樹は考える。

エクスライザーの真の狙いを……。


その夜……。

再び東京国際美術館には厳重な警備体勢が敷かれた。

「返しに来るって言ってるのにこんなに大袈裟にする必要あるの?」

美紀は疑問に思っていた。

「まぁ、あくまで怪盗……信用は出来ないからな……」

そこに花森警部がやって来た。

「おい!お前達!まだ居たのか!?邪魔だからさっさと帰れ!!」

花森警部は直樹と美紀を追い出そうとする。

「ちょ、ちょっと……」


結局直樹と美紀は追い出された。


「あーあ……どうするの?」

「しゃーねぇよ……ちょっと遠いが様子見だ」

直樹と美紀は美術館から少し離れた所から様子を見る。


そして9時まであと少し……。

「そろそろだな……全員今回はしくじるなよ?アリ一匹通すんじゃねぇぞ!」

花森警部の指示が飛ぶ。

警察官達は厳重な警戒体勢を取る。


そして9時。

「フッフッフッ……さぁ、ショータイムだ!!」

エクスライザーが美術館の屋根に降り立つ。

「貴様!!」

花盛警部がエクスライザーに向けて拳銃を構える。

そして、他の警察官達も一斉に拳銃を構える。

「まぁまぁ、落ち着いて。あなた達と戦う気はありませんよ……予告通りこの《女神の雫》を返しに来ただけですから」

エクスライザーはそう言って《女神の雫》を見せる。

「うるせー!貴様がこそ泥って事に変わりはない!!逮捕する!!」

花森警部は拳銃を構えたままだ。

「やれやれ……話の通じない人ですね……」

そう言うとエクスライザーは一本のヴィランキーを取り出した。

「それは!ヴィランキー!?」

エクスライザーはベルトの左側の鍵穴にそのヴィランキーを刺して回す。

そのキーは『スリープキー』そのキーを使う事で催眠ガスが発生し周囲の人間を眠らせる。

「同じ手に乗るか!」

花森警部と警察官達はガスマスクを装着。


「ほぉー……やりますね……なら仕方ない」

エクスライザーは地上に飛び降り警官達の前に。

「貴様ー!撃て!!」

花森警部はエクスライザーに一斉射撃。

しかし、エクスライザーには普通の拳銃は全く通用しない。

「クソッ……」

エクスライザーはそのまま美術館の中に入る。


その頃、直樹は裏から美術館に近付いていた。

「よし……ここなら誰も居ないな……」

そう言うと直樹は『変身』

エクスカイザー登場。


美術館の展示室にも警察官は大勢居たがエクスライザーに軽くあしらわれる。

「やれやれ……返すと言ってるのに……わからない人達だなぁ」

そして、エクスライザーは展示台の上に《女神の雫》を置く。

「はい、返却完了」

「お前が例の怪盗か」

エクスライザーが声に気付き振り向くと……。

そこにはエクスカイザーの姿が。

エクスカイザーとエクスライザー初対面。

そしてこの2人色は全く違うがそっくりな見た目をしていた。

エクスカイザーは大きくXと型どったマスクにシルバーのボディが特徴だが、対してエクスライザーは同じくXを型どったマスクにゴールドのボディが特徴で、背中には同じくゴールドのマントを羽織っていた。


「お前は……何者なんだ……?」

エクスカイザーもエクスライザーの姿を見て驚いていた。

「やれやれ…返しに来ただけなのに……こんな事になるとわ……。悪いが、まだ捕まる訳には行かなくてね……」


エクスカイザーとエクスライザーの2人の対決が今始まる。


続く…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る