第8話 寂しさの中で
夕暮れ迫る公園に着くとそこに二人の女の子の霊が遊んでいた。都合よく二人の霊以外は誰も見当たらなかった。Sさんは
僕は琴音ちゃんに〝ママが探している、ママの元に帰らないかい?〟と優しく語りかけた。するとあかりちゃんの霊に異変が起きた。そのシルエットが膨らむと同時に辺りが暗くなる。突然暴風も吹き荒れ始めた。しかし公園の外にある木々がそよぎもしていない、公園内だけに暴風が吹いているようだ。あかりちゃんをみると暴風に髪をなびかせてこちらを見ていた。〝1人にしないで〟という叫びが直接頭に響いた。僕はすぐそばにあったブランコの支柱に掴まって飛ばされないよう体を支えた。風はさらに強くなり、命の危険を感じるまでになっていた。その時、風の音に混じってお経らしき声が聞こえてきた。みるとSさんが片方の手でそばの街灯にしがみつきながら、もう片方の手を額の前にかざし一心にお経を唱えていた。しばらくの間、あかりちゃんとSさんの
Sさんは肩で息をしながら〝ごめんね手荒なことして〟というと額の前にかざした手を静かに下ろした。僕は恐る恐る『あかりさん』に、琴音ちゃんの母親が琴音ちゃんは生きていると信じて探している事、そして琴音ちゃんの遺体が見つからない限り母親は気持ちの整理をつけられないと訴えた。
あかりさんは僕の説明を聞き終えると目線を私から外して遠くを見た。何を考えているのかその表情から読み取ることは出来なかった、がゆっくりと琴音ちゃんに向き直ると一言〝お母さんに会いたい?〟と聞いた。琴音ちゃんは少しの間あかりさん見ていた。あかりさんは慈愛に満ちたとても優しい笑顔を浮かべていた。その表情を見て琴音ちゃんは安心したのかポツリと〝ママに会いたい〟と答えた。あかりさんは琴音ちゃんに近づくとしゃがんで抱きしめた。そして抱きしめながら〝ごめんねお姉ちゃん寂しくて〟と繰り返した。
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