第2話 おっぱいにはアレとかアレが詰まっている
僕はコスプレが大好きだ。
コスプレをすると違う自分になれたみたいで楽しい。 足の先から頭の先まで細かくイメージして役になりきる。
コスプレは趣味であって人生そのものだ。
この先もずっとコスプレを続けていきたいし、今でも頭の中で色々なイメージが湧いてくる。
次はこんなキャラクターを演じて、そしてSNSにもUPして、そんでそんでイベントとか参加して、そしたら有名になって、なんかサインとかお願いされちゃったりなんかして。
「こないだのイベントも素敵でした! さすがはリリアンデモール様」なんて、声かけられちゃったりして。
それゃそうだ。 だってリリアンデモールちゃんは可愛いからね。 全世界の男達の夢と希望が詰まってるキャラクターなんだもの。 それゃ、そうだよ。
そんな子が目の前に現れたら、もうビックリして心臓がお尻から飛び出るよ。
あ……
思い出してきた。
まさしく、そんな夢と希望と男たちの欲望とエロやカオスな何かとかダークなアレとか色々詰め込んだキャラクターが、鋭く光るサーベルに反射して僕の目の前に現れたのだった。
「あ……!かわいい」
口から咄嗟に出た言葉はそれだった。
だってそうだろ。 僕が創造したキャラクターが目の前に現れるなんて。
って、それはコスプレした自分なんだろうけど。
でも、待てよ。 何かが違う気がする。
いつもにも増して胸が重い気がする。 いつもコスプレをする際に胸に詰めている詰め物とは何かが違う。 なんか本物のおっぱいって感じ。
指先も何か違う。 僕は乾燥肌なので普段はハンドクリームなんて塗ったりしている。
だから、もちろん指先は綺麗なんだが、そうゆう綺麗さではない。 もっと女の人のような質感が。
自分の身体を舐め回すように見ながら、自分の中で整理していく。
太ももがむっちりしていて、でも弾力がありスベスベな感じや、サラッと靡く綺麗な髪の毛。
香水なんて付けてないはずなのに何故かいい匂いのする身体。
これは、まさしくそうなんだろう。
異世界転生ってやつだ!
だが僕はまだ死んではいなかったはずだ。
だとすると、異世界転移か?
どちらにせよ、今までいた世界とは違う世界に来たことは間違い無いだろう。
はっ……!
僕は僕の身体の中心部、股間の辺りを見回した。
な、ない!
僕のナスビがない!
僕のきゅうりがない!
普段僕に付いているはずの、ウインナーがない。
いや……。 どうせ誰も本当の僕の大きさを知らないんだろうから、ここは見栄を張ってもバレないんじゃないだろうか。
僕の下半身にあるはずの15センチくらいのフランクフルトがない。
普段コスプレする時は邪魔なので、後ろに回してテープなどで貼り付けて隠している。
もちろん小さいので気にならないと言えば気にならないのかもしれないが。
僕は完璧主義なので、女性のコスプレにもっこりは許せない。 もちろんそうゆう設定ならまた別だが。
ただ、今となっちゃ異世界転生? 転移してきた身としては、もっこりが懐かしくも寂しい。
もう、もっこりに2度と会えないかもしれない。
さようなら、もっこり。
もっこりよ、また会う日まで。
君のもっこりを食べたい。
もっこりクエスト2。
もっこりの空に。
となりのもっこり。
もっこりインポッシブル。
もっこりを思うだけでこんなに映画のタイトルみたいなのが無限に湧き出てくる。
やはり、もっこりは偉大だったのだ。
「おい。 女」
図太い大きな男の声で、我に返った。
そうだ。 僕は今ピンチだったのかもしれない。
僕を取り囲む男達を見ながら、状況を判断する。
どうやら、何らかの何かで、何かがどうにかなって異世界に飛ばされてきてしまったようだ。
その際に、何故かリリアンデモールちゃんの姿に変わったようだ。
それは、それで良かったのかもしれないが転移先が問題だ。 こんな盗賊達の真っ只中に転移させなくても。
神様がいるなら後で殴ってやりたい。
「おい!お前ら。 その女を捕まえて牢に入れておけ。 後でたっぷり可愛がってやるからよ……。
ぐへへへへ」
うーん。 キツい……。
こんな汚らしい大男は趣味じゃない。
こんな奴の嫁になるなら、その辺の小石と結婚した方がまだマシだ。
僕は何人かの男たちに連れられ牢に入れられた。
盗賊の首領ぽい大男の嫁になるだけあって、特に乱暴などもされず意外と丁寧な対応だった。
今騒いでもしょうがないと思った僕は大人しく牢に入ることにした。
牢に入ってる間に、色々と整理してみたがどうやらリリアンデモール本人になっているみたいだ。
なんなら僕が作った設定通りだ。
驚くことに背格好や骨格なども全て変わっている。
これはもうコスプレと呼べるものではない。
いわゆる、ドラ◯エやファ◯ナルファ◯ンタジーなどでいうジョブみたいなものだ。
少し違うのはあっちは転職して赤魔道士や戦士など色々な職業になるが、僕の場合は職業ではなくリリアンデモールという個人になっていることだ。
リリアンデモールは一応サキュバスなので、職業サキュバスに転職という場合もありえるが、その場合だと胸が大きくなったり、股間から息子がいなくなったりすることはないはずだ。
「おい。起きろ」
男の人の声で目が覚めた。
いけない。 いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
盗賊がこちらに近づいてくる。
「親方には内緒で少しいいことしようぜ。そんな格好してるんだ。一回くらい別にいいだろ」
ああ……。
これはアレだ。
よくあるアレのやつだ。
「やめろ! 触るな……」
そう言いかけたとき、何故か声にならなかった。
それは、怖くて声が出なかったのか、それとも僕が設定したリリアンデモールの口からそんな言葉が出るはずがないからなのか。
きっと現実世界の僕なら怖くて何もできなかったかもしれないけど、何故だか転移してきた僕は一味違う気がする。
掴もうとしてきた男の手を振り払いこう言い放った。
「わたしは、リリアンデモール。アナタごときが私に触るなんて100億年早いわ!地獄の豪火で焼き尽くしてあげましょうか」
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