転生してもコスプレイヤーは、ただのコスプレイヤーでした
@nekomataninzaburou
第1話 生まれ変わったら
ここは、大都会東京。
正確には東京みたいなところ。
きっと本当の地名を言っても知らないだろうし、なんなら東京って言ったほうがみんな分かりやすいでしょ?
ん?
東京じゃないなら東京って名乗るなって?
まー……そりゃそうだ。
んー。じゃあ、ちょっと長いけどとりあえずは東京みたいな大都会って事で。
ところで、私たちはなにを読まされているのかって?
それはいい質問だね。じゃあ、僕からも質問!
三国志や織田信長などのエピソードや、僕らが生きてるより前の出来事はみんな何で知ってると思う?
ブッブー! 時間切れ!
正解は近くにいる誰かが書いたからだよ。
そんなことも分からないなんて、この先ついて行けないぜ!
じゃあ、これも誰か書いてる人がいるのかって?
もちろん、いるよ!
それが僕さ!
僕が、僕のことを僕のためだけに残してるんだよ。
なんだよ。それは、ただの日記じゃんって?
ノンノンノン! 違うよ。
ただの日記も何かを成し遂げて有名になれば自伝になるのさ。
だからこれは崇高なる英雄、僕の自伝さ。
これから君たちには僕の僕による僕のためだけのものがたりの世界を一緒に体験して行って欲しいと思う。
時にはゴブリンと戦い、時にはお姫様を救い、キノコを食べて大きくなったり、花を食べたら手から火が出たり……
それとも手から糸が出たり、困難なmissionを遂行したりさ。
そんなことは全然ないとは思うんだけど、楽しんで行って貰えたらと思う。
前置きばかり長くなっても、字数の関係でこの後の話しが短くなっていってしまうからここら辺で本編に行かせてもらうとするよ。
では、楽しんで!
僕の名前は、サキュバス少女リリアンデモール・ビンセント・スキャマンダー・ムライ。
ちなみに本名ではない。
僕の趣味はコスプレなんだけど、これはこのキャラクターの名前である。
もちろんアニメや漫画や映画などのキャラのコスプレをすることもあるけど、最近ハマってるのは架空のキャラのコスプレをすること。
といっても、僕の場合はただコスプレをするだけではない。
架空のキャラのイメージを作り、名前はもちろん、身長、体重、好きな食べ物など考えられる全ての設定を事細かに作り、それを演じるのが好きなんだ。
衣装に身を包んで、キャラクターの名前を思い浮かべるとまるでそのキャラクターが乗り写った様な錯覚まで覚えるよ。
喋り方から、性格、仕草まで変わっていくから、自分が自分じゃない感じがしてとても気持ちいい。
ただ、
ただ、残念なことに僕が演じたいキャラは殆どが女性のキャラクターだってことだ。
完璧に演じ切っても所詮は男。
仕草、形は演じられても声や骨格、体型は演じられない。
それに、世間では女性の洋服ばかり着て、公園で写真を撮ってる気持ち悪いやつなんて言われる始末。
それゃそうだよな。
僕だって、公園で女性の服を着てる男の人が変なポーズ付けたり、必殺技を叫んだりしてるところを見掛けたら、近づきたくないもんね。
ちなみにこのサキュバス少女少女リリアンデモール・ビンセント・スキャマンダー・ムライだが、
長いのでリリアンデモールと省略させてもらう。
リリアンデモールちゃんだが、自分で言うのも何だが、とてもかわいい。
設定としては、ツインテールでエロカワで痴女的な要素を秘めたキャラである。
もちろんツンデレで生意気な口調がいやらしい。
僕の性癖を全て詰め込んだようなお得感満載キャラである。
そうなんです。僕はコスプレをしてキャラになりきって、自分を愛でるのが好きなのである。
自分だけど自分じゃない何にでもなれるあの感じはたまらない。
でも、人前で見せるには恥ずかしいので夜な夜な公園で演じてました。
でも、そんな日々も今日まで。
一度だけSNSに載せたリリアンデモールちゃんがバズったのである。
それを見たコスプレサークルの人たちから今日のコスプレイベントにご招待されたってわけ。
僕は今まで恥ずかしくて人前に出ることは出来なかったし、コスプレイベントはもちろん、SNSなども見るだけで参加することはなかったけど、今日を機に変わりたい。
どんな人にだって生まれ変われるチャンスはあるんだってところを見せてやる。
そんな鬼気迫る意気込みで今日のイベントに参加することに決めたんだ。
って、ついさっきまでは思ってだんだよね。
僕も生まれ変われるって。
やっと新しい人生が始まるんだって。
でもさ、生まれ変われるの意味が違うと思うんだよね。
さっきまではコンクリートジャングルに囲まれていたのに。
スーツ姿のサラリーマンや、OL、お洒落な若者なんかが行き交う街にいたはずなのに。
今僕がいるのは、草原。草原なんて見たことないけどたぶんこれは草原。
それも大分広い大草原じゃないか。
サラリーマンなどが行き交う街にいたはずなのに、
今じゃ僕を取り囲むのは、盗賊みたいな人達。
アラ◯ンとかで見たような、まんまあんな感じの盗賊。
右手に持ってるのは、剣みたいな曲がったなんかよくわかんないやつ。
あんなに反り返ってたら、切れるものも切れないんじゃないかってくらい。
まだパン切り包丁の方が切れそう。
でも、すんごく光り輝いてる。
ありゃやっぱ痛そうだな。
それゃそうと、何がどうなったか全然分からない。
コスプレイベントに向かってた途中じゃなかった?
それともいつのまにかコスプレイベント始まってた??
もう何が何だか分からない僕に、
盗賊の中でも一際体の大きな大男が声を掛けてきた。
「いい女だな、お前。俺の嫁にしてやるからありがたく思いな!」
ホワッツ?
僕は辺りを見回した。
見えるのは盗賊さん何十人かと僕のみ。
その時、ギラリと輝く太陽に照らされて
盗賊さんの右手に持ってるサーベルみたいなものが反射して辺りを映す。
もちろん僕の姿も……
そこには、僕の姿はなく
僕の大好きなリリアンデモールの姿があった。
僕は考えるより先に思わず声が出た。
「あっ! かわいい」
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