白羽姉妹の一つの夜
結局、事情聴取が終わったのは夕方に近い時間帯だった。
私たちは。まぁもちろん無罪ってことで家に返された。
ストーカー男の方はどうなったのだろうかってのは未だに不明瞭だった。
けど、でも。罪は軽くは無いと教えてくれた。
「なんだか。すっごく長い一日だったね」
唯が呟く。
今回一番の功労者だ。
本当に感謝しても仕切れない。
「うん。……長かったねぇ。でも、無事に終わって良かった、のかな」
ちなみに今は布団の中である。
お互いに疲れたので、ご飯を食べて風呂に入ったら、すぐにこうなった。
本当に疲れがどっときた気がして、でも。
「うん。良かった。あ、でも……私は今度、精神科に行けーって警察の人に言われちゃったから。……まだもう少しだけ続きそうかな。うぇー、めんどくさいなー」
「まぁまぁ。それも大事なことだから。もう少しの辛抱だよ、唯」
「はーい。にしても……明日から、どうしよっか」
「確かに。Vの方は、ちょっと目立ちすぎたもんね……」
本当に目立ちすぎたと思う。
公開告白の時とは比にならないかもな。
パトカーも出撃させちゃったし、周りの視線をいっぺんに集めちゃったし。
まぁだけど。今するべき話では無いよな、と。
「ま、そういうことは今度考えよう! はい、唯。何か話題ない?」
「えー。そんな他人任せな……」
と言いながらも唯は「うーん」と何かを考える声を出し。
やがて「あ、そうだ!」と元気な声を暗闇に飛ばした。
「前回の続き! まだしてないよね!」
そう言われ、なんのことだったかと過去を思い返し、思い出す。
前回の続き──とは、それは多分、漫画喫茶でやったことの続き。
本来はあの後に家に帰って、ディープなキスの続きをする予定だったのだ。
なのにストーカー男に絡まれてしまって、できる雰囲気じゃ無くなってしまって。
マジでストーカー男には狂わされたなぁ、と。これも解決したから少し楽観視できるのかなって思うと、今のこの時間は、とても幸せなものに感じてしまった。
それはさて置いて、私は唯の声に応える。
「確かに。……私は、全然したいんだけど。唯は疲れてない?」
「私も大丈夫だよ! ずっとしたかったから!」
前回の続きってことは。
ディープキスの続きだから──まぁ服を脱がすんだよね。確か。
というか前回の終了地点が、私が唯の服を脱がそうとしたところで終わったのか。
えっとそれならじゃあ。『はじめから』か『つづきから』かの二つの選択肢があるのだけど。
「……私、はじめから、もう一度やりたいな」
私の思考を読んだのか、唯がそんなことを言った。
私に否定する理由はなくただ「はーい」と答え、少し疑問を唯に投げる。
「電気は付けてする? 消してする?」
なんか。
こういうことをする時って、付けてする派閥と消してする派閥が存在すると聞く。
私の方は大してこだわりが無いけど、私はめっちゃ顔赤くなりやすいから、そんな顔を見て欲しくないって理由では、後者を選択するかなという感じではあった。
「……このままでいいよ。消した方が、なんかえっちじゃん」
らしい。
確かに、その言い分には納得できるものがあった。
「よし。じゃあしよっか」
とは言うが、寝たままの体勢だとキスもし辛いので身体を起こす。
唯も私に続くように身体を起こして、かと思えば私のことを抱き締めてくる。
「ぎゅーーーーー」
らしい。
らしいというのも変なのだけど。
今の唯は、私に甘えたいモードなのかも知れなかった。
可愛いなって思いながら、私も「ぎゅー」と唯を抱きしめてみる。
やがて唯の力は緩められ「ん!」と唇を私に差し出してくる。
「……ん」
唯の両頬を捕まえる。
こうでもしないと上手に狙いが付けられない。
私はゆっくりと、ゆっくりと唇を近付けて、唇を密着させる。
合わせた唇の隙間から、舌を出して、唯の口内に侵入させて絡めてみた。
唯がえっちな声をあげる。
口の端から、熱い息が漏れ出て、私の頬を撫でた。
ほっぺたを抑えるの力を更に込めて、もっと密着度を上げてみた。
唾液の分泌量が多くなっているような気がするのだけど、気のせいだろうか。
なんて、人間の身体の構造の神秘に、疑問符を浮かべながら、その唾液を利用してみる。
もっと唯の舌を攻めてみると今度は、唯は気持ちよさそうに身をよじらせた。
「脱がしていい?」
「……うん」
頷いたので。私はそのまま唯のパジャマを脱がしてみる。
脱がして。唯の下着姿に目を奪われつつも。
唯のおっぱいに手を添えてみると──。
「はい。お姉ちゃんはここで終わり!」
そんな風にストップがかけられてしまう。
「え! なんで!? むしろここからって感じじゃ無かった!?」
「いやこれはあくまで、あの百合漫画のシチュエーションを真似ているだけだから! この後の行為は、あの漫画、特に描かれていなかったよね!」
「んな屁理屈みたいな。ねぇ、続きやらせてよー。続きしたいよー」
「きょ、今日はこんな感じで終わろう! あ、でも待ってね。まだ、私が脱がせてないから」
私はハッとしたように「そっか」と漏らす。
唯はそのまま私の服を掴んで脱がした。一気に身体がすーすーする。
キスをしてきて、またぺちゃぺちゃと音を立ててくる。
私の下腹部も触って欲しかったのだけど、欲張りな気がしてやめておく。
なんて思っていると、唯は私の首筋に歯を立てて、ちゅーと吸ってきた。
「え、唯って吸血鬼か何か?」
「お姉ちゃん知らない? こうやってすると、キスマークができるんだよ」
「え!? キスマークって口紅じゃないの!?」
「違うよー」
私、もしや意外と性の知識が薄いのだろうか。いや。というか薄いのだろう。
もしこのまま『本番やってください』って言われたとして、何をすればいいのか分からない──というか、私だったらテキトーに唯のおっぱいを揉み揉みしていそうである。
それにしても唯はどこでそう言った知識を仕入れているのだろうか。
思いながらも。「ちょっと失礼して」と、唯と同じように、首筋に歯を立ててみる。
「もうちょっと下かな? そこだと制服に隠れないから」
「はー、あるほほー」
なるほどーと言ったつもりが、歯を立てっぱなしだったせいでスカスカな声になる。
唯はそんな私の声をおかしそうに笑って、私もニヤニヤと口角を上げながら。
言われた通りに歯の位置を下の方へと移動させてみる。
唯に確認を取ってみる。
「ここなら大丈夫……じゃないかな? 私も初めてでよく分かんないけど」
らしいので。ちゅーって吸ってみた。
暗闇で分かりにくかったけれど、確かにそこには赤いキスマークができていた。
おぉ。なんだかマーキングをしているみたいで、すごく良いものだった。
でもなんだか思っていたのと違うくて、また別の場所に付けてみる。
唯は「んっ」と官能的な声を上げたので、意外にも気持ちいのだろうか。
「なんか気持ちいかも」
らしい。
「なら良かった」
それからは暫く、お互いにキスマを付け合っていた。
翌朝に目が覚めた時、私の身体はヒリヒリと痛んでいた。
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