第6話

 俺は、漢中でお留守番だ。

 総大将は、王平とした。張翼と廖化は上庸のお留守番だ。

 王平は、文字も読めない欠点もあるけど、土地勘がある。参謀に司馬昭だ。それと、蜀漢で登用した、他の雑将軍も同行させるけど、文字数的に割愛。


 糧道の確保に、諸葛瞻しょかつせんを起用。諸葛亮の息子だ。まだ、若いけど、実績を積んで貰う。


「う~ん。大丈夫かな~」


 少し、心配だ。


「我も行きましょうか?」


 魏延を見る。

 こいつ、命令違反すんだよな~。戦端を広げ過ぎると防衛が薄くなり過ぎる。

 それに、父の劉備は、魏延を守備の要にした。


「一応、援軍の準備をしておいてね~。臨機応変に出て貰うから」


「はっ!」


 嬉しそうだな。でも、漢中の安定には、魏延が最適なんだよね~。練兵も上手いし。





 一ヵ月後、長安と潼関が陥落したと連絡があった。


「マジ?」


 木簡を見て、驚いた。都を落としちゃったの? マジで?

 さて、どうしようかな~。

 魏延、張翼、廖化が、援軍として挙手して来た。

 兵力は、まだ十分にある。長安に援軍を一万人送れば、そうそう落とされることもないだろう。

 ここで、成都より趙統ちょうとうが来た。超雲の息子だ。援軍も一万人だ。

 蔣琬当たりの采配だな~。


「趙統君。長安と潼関に行ってくれる?」


「OKっす。任せてください」


 まあ、彼に任せてみるか。

 三人の将軍は、不満みたいだけど、多方面から攻められてもいる。不満を口には出さなかった。俺は、皇帝なんだしね。





 魏は、混乱の極みだとか。魏の都の鄴は、騒乱状態みたいだ。

 内乱なんかしてるから、長安を落とされちゃうんだよ。それと、幽州での反乱はどうなったのかな? 対応できてるんかね? 公孫淵君は、実は優秀だった?


「洛陽に攻め込むべきです! 今しかありません!」


 司馬師からの提案だった。

 う~ん。地図を見る。


『呉が裏切って来たら、楊儀では止められないよな~。それに天水には、郭淮がいる。背後が怖い。戦端を広げ過ぎだよな~』


 少し考えた。後顧の憂いを断つべきだ。


「司馬師君。悪いんだけど、天水城を攻略してくんない? 姜維と王平に合流して欲しいんだけど」


 戦略を否定して、別な場所を攻めさせる。魏の張郃将軍は、これで袁紹を裏切ったんだよな~。


「委細承知! 郭淮を捉えて来ます!」


 おう? 大丈夫そうだ。

 戦略に明るいんだね。





 一ヵ月後、天水が落ちたと連絡があった。

 マジに、司馬家は、麒麟児だな。


 王平と姜維は、涼州南部と長安までの都市の平定に尽力してくれた。異民族も多いので、時間をかけて交渉して貰おう。

 そうすると、魏が軍を起こした。

 総勢、五十万人だ。曹叡も本気を出して来たな。


 でもね~、時間をかけ過ぎ。こちらも、戦略を練ってんだよ。

 呉に援軍を要請する。今なら、合肥城も落とせるだろう。陸遜も優秀だし、理解していると期待しよう。


「魏延君、張翼君、廖化君。天下分け目の合戦になりそうだ。司馬兄弟が兵法に明るいんだけど、従ってくれないかな~」


「「「もちっす。実績十分だし、信頼できるっす!」」」


 いいね、いいね。味方が厚い信頼で結ばれている感じがするよ。これ、勝てんじゃない?


「朕も行くね。跡継ぎは長男の劉璿りゅうせんって決めてるし」


 劉璿は……、遊び人だったけど、蔣琬と費禕に命令して、内政を学ばせた。騎射を嗜みたいと言って来たら、上庸に派遣して、本物の戦争に参加させる。

 すると、人が変わったように真面目に内政を学んでくれた。


「「「ダメっす。漢中で吉報をお待ちください」」」


 え~。俺も兵法とか使ってみたかったのに……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る