第5話
内政は、三人に任せる。
俺は、漢中に移った。
斥候を、魏と呉に放ち、情報を集める。
まず、魏皇帝の曹叡は、史実通り贅沢を始めたようだ。本来であれば、司馬懿が呆れて見捨てる。もういないけどね。それと、公孫淵の遼隧の戦いは、誰が行くのかな~。小さいけど、魏国内の内乱もあるんだよね~。
まあ、国力を消費して貰おう。
呉は、陸遜が健在だ。それも長期間続く。二十年くらいは、呉は安定することが決まっている。
まあ俺が、三国志知識無双を使えば、崩せなくもないけど。柴桑周辺を固められると、【破竹の勢い】もできないんだよね~。
「今後数年は、内政に力を入れるかな~」
張翼は、絶句していた。
そうだよね~。劉禅って内政には関わらずに、祭事しかしてなかったんだし。
でも、諸葛丞相亡き今、俺が蜀漢を立て直すのだ!
◇
数年が過ぎた。
平穏な日々が流れた。治水を行い、農作物の収穫量を倍にした。
これは、民衆も喜んでいる。
「陛下! 兵士の調練も順調です!」
「魏延君。君頼もしいのね~」
魏延を褒めちぎっていると、彼の性格も変わった。もう忠誠心MAXだ。
楊儀のフォローも怠らない。対呉国の指揮官に任命したら、いい働きをしてくれた。
内政も問題ない。優秀な三人がいるんだし。今は閑職の費禕も、極秘に丞相の地位を約束したら、董允に協力してくれる。
姜維は、郭淮と小競り合いをしているみたいだ。戦争バカなので、防衛戦でも行わせていれば、不満はなさそうだな。
上庸は、案の定攻められていた。だけど、金をかけた防衛陣地が、魏軍の攻撃を防いでいる。四人の将軍も優秀だ。
兵士と兵糧の補充も出し惜しみしない。武器防具、矢も毎月補充し続けている。
防衛状態だけど、蜀漢は安定して来た。
そして……、問題が起きる。
「うん? 魏からの降将?」
「いえ、官職は持っていなかったみたいです。もしくは、下級役人かと」
う~ん。珍しいな。"埋伏の毒"の可能性……。諸葛誕と夏侯覇なら信じられるけど、早過ぎるし~。
まあ、会ってみるか。
高い位置の、玉座に座る。毎日めんどい。
三人が、入室して来た。
礼儀作法は、問題がない。上流階級の人物みたいだ。
「面を上げていいよ~」
う~ん。若そうだな~。誰だろう?
「名前を教えて」
「司馬師、司馬昭、
ごふ?
司馬懿の息子たちと、呉を滅ぼす人ですか?
話を聞く。
魏は、軍権を争って、内乱状態なんだとか。司馬懿の支配力が伺える。
曹叡は、浪費を続けているらしい。
彼等は、魏皇帝を諫めて、罷免されたのだとか。
呉は人材が豊富なので、蜀漢に仕官を求めて来たと言ってんだけど。
一族を連れて来たので、一応は信頼はできる。
だけど……。
「君たちの父親を殺害したのは、朕だよ? 忠誠を誓えるの?」
「戦場での出来事です。恨みがないと言えば嘘になりますが、父上以上の才ある方の傍で学んでみたいと思っております」
この時代の、この感覚は慣れないな。
だけど……、これ以上の人材もいないことは確かだ。
三人には、下級役人から始めて貰った。
◇
「この時代の優秀な人材って、目立つのね~」
司馬師と司馬昭に内政を任せれば、治水を半分の時間で完成させた。
魏軍が攻めて来れば、見事な用兵で撃退した。杜預は、百人で出陣して、敵将の首を取って来たくらいだ。
廖化も疑っていたけど、今は親友だ。
そんな時に、魏延が来る。
「陛下! 兵士も兵糧も十分です。密偵によると長安は、資金不足で兵士が少なくなっているそうです。今が攻め時です!」
ふむ……。
そういえば、数十万規模の魏軍を、この上庸で撃退してんだよな……。
曹叡の悪評も聞いている。
司馬師を見る。
「長安と潼関に攻め込むなら賛成です」
次に廖化を見る。
「本音を言えば、呉に攻め込みたいですが、魏攻略に賛同します」
他の将軍も同意してくれた。
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