第3話

 五丈原に着いた。魏の攻撃はなかったな~。


「魏延将軍と馬岱将軍。ご苦労だったのね~」


 二人共、泣いて手を取ってくれた。

 馬岱将軍には、密命のキャンセルをヒソヒソと伝える。

 最下位の雑将軍から昇格させると約束すると、首を縦に振ってくれた。


「そんじゃ、帰ろうか。漢中まで護衛をよろしくね~」


「「「はっ!」」」


 蜀漢も、この時はまだ人材がいたんだよね。魏と呉が多過ぎただけなのだ。

 諸葛丞相の人気がなかったとも言える。まあ、報酬が違うしね。こればかりは、しょうがいない。


 そして、何事もなく漢中へ帰って来れた。

 まあ、当然だな。指揮官の司馬懿の護衛軍は、全滅させた。

 今頃魏軍は、混乱していて動けないだろう。指揮官不在で、生死不明なんだし。


『祁山を取っても良かったけど、三倍の兵力差だし。俺の兵法も生兵法としか言いようがない。無理は禁物だよね~』


 一回の敗戦で、全てを失うのが戦争だ。

 何より、人材を失いたくない。


「そんじゃ、戦の疲れを癒してね~。魏軍が攻めて来たら迎撃よろしくね~。朕は、諸葛丞相の葬式の準備をするんで。定軍山はここから近いよね~」


「陛下! 出兵の許可を! 我が北伐を成し遂げてみせます!」


 魏延君からだった。

 三国志演義だと、"子午谷道"かな~。俺も反対なんだよな~。補給のない部隊なんて、全滅して当たり前なんだけど。

 潼関が落とせれば、確かに攻めやすくはなるんだけど、無謀としか言いようがない。

 馬岱君は、困惑の表情だ。君、一度潼関を落としているんだよね?


 さて、どうしよっかな~。

 正史三国志を思い返す。楊儀と魏延は、性格が悪いので処刑されてしまう。俺は、諸葛丞相の失敗だと思っている。理由はどうあれ、国の重臣二人を失うんだし。

 董允・蔣琬・費禕・馬岱は、短命だ。これは、変えられないと思う。


 う~ん。人材が乏しい。つうか、この時代だと、人気のある英雄って皆死亡してんじゃん。

 ここで、廖化りょうかが来た。元関羽の部下で、古参の人だ。


「廖化君。兵糧はまだある?」


「まあ、数年戦える分は……。ですが、農民一揆が起こりそうです」


 ああ、そうだった。諸葛亮は、戦争し過ぎて、農民に反乱を起こされていたんだった。

 でも~、司馬懿が亡くなった今は攻め時とも言える……。雍州刺史郭淮かくわいも怖いけど、軍が混乱している今ならば、動けないはず。


「陛下! 実は、上庸方面が手薄になっております。南陽方面の兵が動員され、呉がハラスメント攻撃を行っているのです」


 ほう?

 いいね、いいね。視野が広いね。祁山だけに固執しちゃいけないよね。

 それと情報戦は、未来でも重要だよ。

 俺は、地図を広げた。

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