第2話
陳倉道から、渭水へ出る。この道が一番近い。
ここからは、敵の領地だ。命も危ない。
だけど五丈原は、まだまだ先だ。
「斥候を放ってね~。伏兵に気を付けて進んでね~」
「はっ!」
ついて来てくれたのは、王都守備隊だ。一応、エリート集団。数は……一万人。
少ないけど、五丈原には、六万人位いるはずだ。敵は、二十万人らしいけど。
数日が経過した。
注意深く進むと、味方の旗が見えた。こちらも旗を振って、援軍であることを理解させる。
「おお、王平将軍に姜維将軍!」
「え? 陛下? 何故ここに?」
慌てて下馬して、礼を尽くしてくれる。
俺も下馬して、彼等の手を取った。
「今までよく頑張ってくれたね。感謝しかないのよ~」
「「……陛下?」」
「そんで、魏軍の動きは?」
「え……。あ……、そこまで迫っています。しかし、大丈夫です。諸葛丞相は、策を授けてくれていますので」
「それだけじゃ、ダメなんだよ!」
「「えええ? 何で、秘策を知られているのですか?」」
それと、張翼将軍は、頭を抱えていた。
◇
姜維の軍を崖の上で布陣させる。
王平と張翼の軍は、山の中で待機だ。伏兵だな。
待っていると、魏軍が来た。
「あの~、陛下……。兵が少ないんですけど」
「大丈夫よ、王都守備隊もいるんだし。追手の魏軍も少ないからね~。奥の手は、まだ見せないでね~」
姜維は、不満なようだ。丞相は、戦いを避ける様に指示してんだもんね~。
でも、今が千載一遇のチャンスなのよ。
魏軍が、俺たちを見て攻撃して来た。崖を登って来る。
姜維が、弓矢で迎撃するけど、進軍は止まらないな~。
「弓兵を下がらせて、盾兵を前に!」
「はっ!」
皇帝自らの指揮だけあって、士気が高い。諸葛丞相もいい兵を残してくれた。
ここで、とっておきを出す。
諸葛丞相に似せた人形だ。これは、【死せる孔明生ける仲達を走らす】の応用だ。
違うのは、出すタイミングだけだけど、崖で魏軍が止まった。
魏軍に動揺が見られる。よっぽど、怖い思いをさせられたみたいだ。
そして、退却の銅鑼が鳴った。
「今よ~!」
旗を振って貰う。
魏軍の背後より、王平軍と張翼軍が突撃した。
「姜維将軍。君も突撃して! 敵将を討ち取ってね! 諸葛丞相の意志を継ぐ時よ~」
「はっ! お任せを!」
嬉しそうに、姜維軍が突撃して行く。
三方向から攻撃されて、魏軍は大混乱だ。いいね、いいね。兵法って感じだ。
その日……、司馬懿が討ち取られた。
◇
『司馬懿が、死んじゃったよ。歴史が変わってんじゃん。この後どうなんだ?』
俺は、三人の将軍を連れて五丈原へ向かった。
「あの……、陛下。どちらまで行かれるのですか?」
「うん? 魏延将軍と馬岱将軍の陣よ」
「……諸葛丞相の密命まで、ご存じでしたか」
「あ、その命令はキャンセルね。味方で殺し合うのなしね」
「「「えええ?」」」
三国志演義の被害者の一人。魏延を生き延びらせるのが、俺の本当の目的だった。
だけど、司馬懿を討ち取るという、もっと大きな歴史の変化を起こしてしまったんだよね。
どっちが副次的なのか、分からないよ。
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